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第2話 友達

隆二に殴られた次の日。


幸男の顔を見たくないのか、学校を休んでしまったようだ。


「昨日さ、椿くん殴ったから停学って聞いたよ」


「うわー。不良ってよくわからないわ」


「椿くん大丈夫?」


隆二の噂をしながら、クラスの女子達は幸男の席へ集まってくる。


あんな強気で殴られれば、普通の人なら失神してしまうが、幸男は中学生の時鍛えていて打撲程度ですんだ。


(僕が昔、不良だったって言ったらみんなどんな顔するかな)


「椿くん?どうしたの?」


「え、ううん!なんでもないよ!」


そう言って鞄を手にとり、教室を後にした。


クラスの女子達は幸男に


「じゃあ夏休みの仕事がんばってね!」


「怪我しないようにね!」


と黄色い声援が送られるが、幸男はあえて聞こえなかったふりをし、廊下に出た。


「あ、そうか。明日から夏休みだった」


思い出したように呟き、階段を登る。


幸男は毎日、学校が終わると日が沈むまで屋上に行って本を読んでいる。


家は1人だが、家だと何故か落ち着かず、屋上だと青空が見えて風にも当たれて最高なのだ。


「今日は最後まで読むか」


そう呟きながら、屋上のドアを開ける。


太陽の光が眩しくて一瞬目を閉じるが、屋上に人の影が見えたのが分かり、目を開けてみる。


屋上の中央で、誰かが大の字になって空を見上げていた。


「佐々木くん?」


「あ?…ってお前!何でここにいるんだよ!」


学校に居ないはずの隆二が屋上で日向ぼっこをしていたのだ。


「えっと…僕。毎日、放課後になったらここで本を読むんだ」


「へー」


「佐々木くんは何してるんだ?」


「別に。授業がめんどくさいからさぼって寝てた」


幸男はびっくりしながらも、少しずつ隆二に近づき、少し離れた所で腰を下ろす。


「…昨日悪かったな」


突然、隆二が幸男に向かって謝った。


幸男はちらっと隆二を見ると、照れ臭そうに下を向きながら頭を下げていた。


「いや、いいんだ。僕もちょっと出来すぎた事をしすぎた。ごめん」


「…別に」


「昨日話したことは本当なんだ。大好きな親友と離れ離れになっちゃってさ」


「………」


「でもな、そいつってば、また会えるようにお守り作ってくれたんだ」


「お守り?なんだそれ」


幸男は鞄の中から読みかけの本を出し、挟んであるお守りを取り出して隆二に見せた。


「…彼岸花」


隆二は幸男の刺青を見た時のような顔を一瞬したが、隠すように顔を横に向けた。


「可愛いだろ?彼岸花の花言葉は再会なんだけど全然会いに来てくれなくてさ。僕の事忘れちゃったんだろうな」


「忘れてねえよ!」


隆二がいきなり立ち上がり叫んだ。


「え?」


「…いや、…忘れてないと思うぜ!いつか迎えに来てくれると思うぞ」


そう言って隆二は屋上を後にしてしまった。


「あいつ、昨日からおかしい」


幸男は首を傾げながら、読みかけの本を読み始めた。



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