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第2話 友達

私立三日月第1学園へ入学して3か月。


死に物狂いで勉強して、もうすぐ夏休みという楽な時間に入れる。


「さあ夏休みが始まるが、早めに2学期の学級委員を決めたいと思う」


幸男は担任の先生の話しも聞かず、数学の予習を進めていた。


1学期は先生方に褒められ、成績も良くなってきた。


いままで先生に怒られてばっかりで、褒められた事も無かった。


中学も悪い事ばかりして成績もやばかった。


だけど、中学3年生の時からまじめに勉強するようになり、私立の学校へ入れるようになった。


「おい椿。お前が2学期から学級委員長でいいな」


「え?ん?なんですか?」


幸男は数学をしながら昔の記憶をたどっていた。


そんな中、急に名前を呼ばれ、幸男は立ち上がった。


「おい椿、聞いてなかったのか?お前は成績も良くなってる。いや、このクラスでは1番だ。だからこのクラスを任せる。いいよな、みんな」


「いいと思います」


1学期学級委員長だった南さんが手を上げ、立ち上がる。


南さんは物静かでいつも休憩時間に1人で読書をしていた。


みんなに信頼されていて、いつも頼られている。


「僕が学級委員?」


「ああ。知ってると思うが学級委員は生徒会の仕事もしなければならない。まあつまり雑用。朝にあいさつ運動、後は生徒会の会議に参加。あ、夏休みは毎日学校に来るように」


「………分かりました」


せっかく夏休みは楽になれると思ったのに大事な役を任されてしまった。


断るのも悪いと思い、承諾(しょうだく)した。


「椿くんすごーい!」


「私、学級委員したかったなぁ………」


「私もー」


クラスの女子達は幸男の席に集まってきて、話をし始めた。


最近、女子達が幸男に勉強を教えてほしい、一緒に帰ろうなどと言われるようになった。


「あ、ありがとう………頑張るよ」


女子に褒められた事が無かった幸男は顔を赤くして(うつむ)いた。


「椿くん可愛いー」


「照れてるー」


「うっせぇんだよ!」


からかわれている中、クラスの問題児の佐々(ささき) 隆二(りゅうじ) が怒鳴りあげた。


佐々木は1学期の時から気になっていたが、仲良しだった早乙女 隆二と名前が一緒だった。


ただの偶然だと思って今は気にしていないが、でも何かあるような気がしてきた。


「ご、ごめん………」


幸男は隆二を直視していたが、目が合い、机に視線を戻した。


隆二は「ちっ」と舌打ちをして教室から出て行ってしまった。


「佐々木くんって怖いよね………」


「小さい時に両親に捨てられたらしいよ」


「そうなの?噂では小学生の時に外国に旅行に行ったって聞いたけど?」


「え!?じゃあ帰国子女!?」


幸男は女子の話を聞いて、隆二を追いかけるために教室を飛び出た。


両親と外国に行った……。


この言葉が気になってしょうがなかった。


考えながら廊下を走っていると、目の前に金髪姿の隆二が見えた。


「佐々木くん!佐々木くん!」


幸男はだんだんと近づいてくる隆二の背中に向かって叫び続けた。


「あ?なんだよ、優等生くん」


隆二はイライラしながら振り向いた。


幸男は隆二の前で立ち止まり、息を整えた。


「佐々木くんに聞きたいことがあるんだ………」


「聞きたいこと?」


「ああ。さっき女子から聞いたんだけど、小さい時に外国に行ったってほんとか?」


「………その話は聞きたくない」


「僕の仲良しだった友達も小学生の時に外国に行って、それから行方が分からないんだ」


「………」


「その子は早乙女 隆二っていうんだ。君と一緒の名前で気になって聞いてみたんだけど………」


他にも聞こうと隆二に身を乗り出すと、隆二は怒ったような顔で幸男の胸倉を掴んだ。


「その話はききたくねぇ!」


隆二は胸倉を掴んだ後、廊下の壁へ幸男を追い込んだ。


「ちょ………何すんだよ」


幸男は思わず、不良だった時の口癖を発してしまった。


隆二は怒りくるった顔で幸男の顔を殴ってしまったのだ。


「………っ」


幸男は強く殴られ、廊下に飛ばされる。


不良の時の感情を出さないように自分の手を強く握った。


「おまえ………やっぱり………」


隆二は幸男を見て、驚いていた。


視線をたどると、隆二は幸男の乱れた服から見える、鎖骨の刺青を凝視していたのだ。


幸男はやばいと思い、服を直して立ち上がった。


「これは………」


「うっせぇ!お前の顔なんかもう見たくないんだ!話しかけてくんな!」


隆二は驚きを隠せない表情で廊下を走り去っていった。


見られた………。


どうしよう………。


「椿くん大丈夫!?」


「大変!唇から血が!」


「手も血出てるよ!」


「保健室行こ!」


幸男は無意識に不良に逆戻りしないように感情を押しつぶして、手が血だらけになるまで握っていた。


「大丈夫だよ。ありがとう」


口から血の味が伝わってきて、口を押えながらトイレに駆け込んだ。


「ぺっ」


血を吐き出し、口を(ぬぐ)う。


「なんなんだよあいつ………」


鏡に映った自分の顔を見つめながら、血だらけの手を洗った。


「危なかった。もう少しで殴るところだった。だけどあいつ、僕の刺青みて驚いたけど………」


今までみた不良の中で1番興味を持った。


幸男の刺青を見た不良は、泣き出して逃げるか、恐怖で足が動かなかったりするやつしか居なかった。


だけど隆二だけは驚いたような、また見たことのあるような懐かしい顔をしていた。


「もしかして中学の時にかつあげされてたやつとか?」


幸男は隆二の顔が忘れられないまま、トイレを出た。

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