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第1話 昔の記憶

幸男(ゆきお)(さわ)るな!」


幸男らしき男の子の前に彼より少し小さい背の男の子が立っている。


泣いているのだろう、幸男の涙を拭いてあげ、幸男を苛めている男女3人を(にら)みつけた。


早乙女(さおとめ)椿(つばき)なんかと話してると(ころ)されちゃうぞ!」


「うっさい!お前らが殺されろ!」


早乙女という男の子は椿(つばき) 幸男(ゆきお)を自分の後ろに隠し、男女3人を威嚇(いかく)するように(さけ)んだ。


男女3人は(こわ)がるように幸男と早乙女から逃げ去って行った。


隆二(りゅうじ)………ありがとう………」


幸男は再び泣き出し、早乙女(さおとめ) 隆二(りゅうじ)に抱きついた。


こうした事が毎日続いている。


幸男は生まれつきか分からないが、鎖骨(さこつ)に青い薔薇(ばら)刺青(いれずみ)が彫ってある。


それが原因で苛められるようになってしまったのだ。


刺青があるせいで嫌な噂も流れている。


そんな中、早乙女だけは怖がらずに幸男と仲良くしてくれるのだ。


「そんなの怖くない。優しい幸男が人殺しなんてするわけないだろ。俺がずっとそばにいるからさ!幸男の事守ってやるよ!」


「約束だよ?」


「ああ」


そう約束したはずなのに。


それから6年後の小学校の卒業式前。


早乙女は何も言わず何処(どこ)かに行ってしまった。


担任の先生がいうには、早乙女の両親が離婚してしまい海外に行ってしまったのだろうと言っていた。


早乙女は幸男を一人にして消えた。


「椿。放課後、職員室に来なさい」


卒業式の前日の朝、早乙女が居なくなった事実を聞かされた後、担任に呼ばれた。


「椿君また何かやったんじゃない?」


「噂では1年生殴ったらしいよ」


クラスメイト達はありもない事を噂している。


いつもこうだ。


幸男は何もしていないのに罪を被って先生に怒られる。


だけど………。


いつも早乙女が助けてくれた。


そんな早乙女はもう居ない。


そう分かると幸男の心の中で何かが変わった。


そして放課後。


幸男はまた叱られるんだと確信し、腹を(くく)って職員室に入った。


「椿。早乙女がお前に渡すものがあったらしい。急に海外に行くことになって渡せないからと、頼まれたんだ」


担任は自分の机の引き出しから小さな水色の袋を取出し、幸男に渡した。


幸男は袋を開け、中身を確認してみる。


中には不器用に作られたお守りが一つ、入っていた。


表にはガタガタで大きさが整っていないが『つばき ゆきお』と刺繍(ししゅう)がしてあった。


幸男は「ぷっ」と少し吹き出し、好奇心で裏側も見てみた。


裏側には表とは違って、可愛い市販で売っているヒガンバナの刺繍がしてあった。


「あら可愛い。それってヒガンバナっていう花じゃない?花言葉知ってる?」


担任の先生の隣に座っている綺麗で可憐な人気のある橋本先生が話しかけてきた。


「花言葉?」


「そうよ。確か………再会だった気がするわ」


幸男の瞳の裏が熱くなっていくのが分かった。


担任の先生と橋本先生に会釈し、走って職員室を出て、教室に戻った。


教室には幸男以外誰も居らず、静かでどこか寂しい雰囲気だった。


「隆二………」


幸男の瞳から一筋の涙がこぼれた。


早乙女から貰ったヒガンバナのお守りを握り締め、覚悟を決めた。


「僕は、隆二が居なくても頑張る」


こうして幸男の小学校生活は幕を閉じた。


それから1年。


苛められっ子だった幸男は中学生になり、不良にもなってしまった。


平気で先輩にカツアゲし、煙草を吸ったり、お酒を飲んだりしていたのだ。


こうして中学時代もまともに勉強せず、高校生になった。


高校生になって、幸男もそろそろ不良のままだと将来が危ないと分かったのか、まじめに生活するようになった。


不良だった時期を忘れるため、あえて誰も知らない街へと引っ越し、高校もみんなと全然違う所に進学したのだ。


そんなある日、幸男も想像してなかった事が現実となった。






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