第二話
事前に報告を受けていた通り、転校生の零弥は今日からこの学校に通学することになっているのだが、早朝は先生方のミーティングもあり忙しなくデスクとデスクを行きかう姿が目に入った。
零弥はそんな中、ノックをし職員室内へ入って目当ての先生に声を掛けた
「田端先生、おはようございます。今日から先生のお世話になります、早坂零弥です。よろしくお願いします」
零弥は一礼をし、田端に向いた。田端は温和そうな顔つきをし、優しく微笑み返し「よろしく」とだけ簡潔にそう言った。
零弥も少し微笑み、朝のHRが始まるとのことで、自己紹介等々を前で話してもらうとの事を、教室に続く廊下でそのことを話した。
(…自己紹介かあ、あまり好きじゃないんだよな)
零弥は内心舌打ちをした、教壇の上に立つのは好きじゃない、視線が僕の”瞳”に向くからだ
僕の赤い瞳は人には受け入れられなかった、時に震え怖がり、人々は僕を嫌い迫害した、そのせいなのか人の目線が怖い。まるでレーザービームのようにも思えてくるくらいには。
僕が悶々と考えていると、いつのまにか教室のドアまで来ていた
―まずい。
その時にはもう、持病といっても差し支えない過呼吸が起き始めていた。
(あああ、おちつけ…落ち着けよ、名前と趣味とか言っておしまいだろ…?頼むから収まれよ…!)
「さ、零弥くん中に入って。―今日は前々からみんな知っているだろうけど、転校生がこの教室にくることになった、早坂零弥くんだ。みんな仲良くやってくれよ、さっそく早坂くん自己紹介お願いできるかな?」
「はい…」
汗が噴き出して止まらない、零弥は震える手でチョークを持ち名前を書いて前に向いた、瞬間教室内の”視線”が僕に一点集中した。
暗転、視界がぐらりと揺れる。まるでマグマのように頭が煮えくり、心臓は今にも口からこんにちは、と挨拶をしそうな位早く鼓動を打っている。
「あ…と、今日からこの学校に来る早坂零弥です。低体温なんで…こんな暑苦しい恰好ですが、仲良くしてくれたら嬉しいです」
自己紹介のテンプレを言い切った零弥は内心でガッツポーズ、完璧だ。
(でも、ちょっともう、無理)
零弥は、そのまま教壇から降りようとしたところで意識を落とした
ざわつく教室、田端はすぐに保健室に連れていくように保健委員に、言った。
その時だった。
「―じゃあ、俺が行きますよ」
「「あ…かみ、いや、神宮寺くん」」
保健委員を押しのいて、瞳の蒼い少年は口元に笑みを湛え
一人で負ぶって、保健室へ消えて行った。




