初夏の悪夢2
「もしもし?どうしたのこんな時間…もしもし?」
携帯から声がした。私はどうやらボタンを押して誰かに電話をしたようだ。何か話さないといけない、それはわかっているが声が出ない。いつの間にか電話は切れていた。私は今頃になってさっき起こった恐怖を1人感じていた。怖い…怖い… そしてどれくらいの時間が経ったかわからないが一台の車がうちの前で止まった。車から降りた人は全開の裏口から中の様子を見て
「ひなたちゃん、ひなたちゃんいる?」
と声をかけている。声の主は樋口だった。街灯の下にいた私に気がつくと走ってきて肩や背中を触って確かめていた。無事だと気がつくとホッとした様に私を家の中に連れて行こうとした。だが私は家の中に入ることが出来なかった。さっきは携帯を取る為に家に入ったはずなのに…湧いてきた恐怖を拭うことはできなかった。
樋口は私を車に乗せると何があったのか尋ねた。私は話をしたくても声がでない。困った顔をしていた樋川は私を見てハッとすると車から降りてどこかに電話をかけ始めた。
「大丈夫、もう大丈夫だから。俺が一緒にいるから…」
そう言って背中をポンポンと叩いてくれる樋口に私は安心したのか声を出して泣き始めた。
それから先のことはあまり覚えていないのが正直な話だ。たぶん私の知っている知識は樋口から聞いた話だと思う。樋口は私の首にあざのようなものがあるのに気がついてもしかして強盗に襲われたのでは…と思ったらしい。携帯で電話をかけた先は警察でそれからすぐにパトカーが到着した。私はよくわからにうちに病院に連れて行かれた。
目が覚めたら私はベッドに寝ていた。喉が苦しくて摩りながら体を起こすと横の椅子で樋口が眠っている。声をかけようとしたが上手く声が出ないので手を伸ばして樋口の手を握った。
「ん…ひな…たちゃん 大丈夫か?痛くないか?苦しくないか?」
私は頷くとほっとしたように笑ってくれた。そしてナースコールをして看護士を呼んだ。意外かもしれないが私は事件があった割には落ち着いていた。声こそ上手く出なかったが警察の対応も普通に出来た。
「念のために今日は入院してもらいます。明日の検査の結果を診て何事もなければ退院できます」
私はずっと付き添ってくれていた樋口にお礼を言って夕方帰ってもらった。
すみません。切りどころが悪くて追記しました。