私達の選択
甥っ子達へのお土産を買って急いで私は家へと戻った。祐輔は私を待っていてくれるだろうか?
部屋はいつものように綺麗に片付けられていたが、祐輔はまだここにいてくれているようだ。夕食は姉から作ってもらった分を分けてもらい、祐輔を待つことにした。
「ただい……」
帰ってきた彼に私は抱きついた。
「祐輔さん ごめんなさい。私……自分のことばっかり考えて祐輔さんのことまで考えてあげられなくて……」
思えば祐輔も子供を亡くしたのだ。悲しいのは私だけじゃない。祐輔は今度は私におかえりといってくれて抱きしめ帰してくれた。
私達は久しぶりに長い時間話をした。今まで言わなくてもわかってくれているだろうと思っていたこともすべて……。
「お前は俺のこと好きなのは知ってるから 俺さえ手放さなければお前は俺のところに戻ってくるだろ?」
「――本当のことだけど何だかその自信がムカつく」
「俺が自信を持たないとお前はすぐ変な方向に行くからな。何度も言うけど 俺はお前を絶対手放さない」
「うん」
「――ところでドイツ行きの話だけど……」
「もしかして断ったの?」
「いやまだだ」
「断ったらダメだよ!」
「それじゃあお前はどうするんだ?たぶん1年に2回くらいしか帰って来れないぞ?」
「…………」
久しぶりの祐輔の腕の中で私は返事を返すことが出来なかった。私達が何度話し合っても結局はそこで止まってしまう。
「はうろんぐ だずいっと ていくつーげっとつー ざすていしょんおんふっと?」
「ひなた姉ちゃん 何て言ってるのか全然わかんねぇ」
「う、うるさいわ!」
「ねえ、ひーちゃん それ英語話してるの?」
「うっ……」
地味に拓馬の発言が一番傷ついた気がする。やっぱり無理だ、私に英語なんて無理。聞けばヨーロッパ圏内の転勤は子供がいない場合大抵は奥さんがついて行ってるらしい。だから会社としては私もきっとついていくだろうという前提のようだ。
大体海外勤務になるような人の奥様はきっとみんな英語は堪能なのかもしれない。
「ひなた姉ちゃん 父さんや母さんは日本に住んでるけど英語ペラペラだよ?」
「数馬……私からそんなにいじめられたいの?数学の勉強見てあげようか?」
矛先が自分に向いたのを危険と感じたのか数馬は逃げるように去っていく。そんな数馬を見て拓馬は不思議そうに「勉強見てもらえばいいのに」と呟いた。
「やっぱり祐輔の転勤にはついていけない」
「じゃあ……」
「ちょっと待って!あのね、祐輔に今の仕事を辞めてほしくもないの。だから……単身赴任で行ってくれる?」
「お前は1人で日本にいるのか?寂しくないのか?」
「そりゃ寂しいよ、寂しいけど……ドイツにいても結局誰とも話も出来ないし、祐輔の迷惑かけるし……」
「そんなの迷惑でもなんでもないだろ?」
「それに……祐輔がいない間、結局は私1人なんだよね」
それに今はスカイプとかオンラインで話が出来るツールもある。会いたくなったり声が聞きたくなったても大丈夫だ。
「それにね、どうしても会いたくなったら…私がドイツに行くからさ。たぶん音声付辞書とか持っていけば何とかなると思う…うん、たぶん……」
「ひなた……」
「だから仕事辞めるとか言わないでよ。好きでしょ?今の仕事」
真面目で趣味が仕事って人だけど 信じてるから……だから私のところに帰ってきてくれるよね?私の最終的な選択だった。
あれ?もしかしたら次でラストかもしれません。




