信じると言うこと
「ひさしぶり~ 元気にしてた?」
私は地元に戻っていた。ちょうど借家にしていた実家をリフォームしてその出来上がりを見るために姉がこちらに来る予定だった。家は姉の高校の同級生の経営する建築会社で管理されていて、家を立てる人のための借家にしたりしているらしい。中には立地条件が気に入って譲ってほしいといわれることもあるらしいが、姉は手放すつもりはないようだ。
「どうなの?樋口さんとは仲良くやってる?まあ樋口さんは大変かもしれないけどね」
「どういう意味?」
「だって相手があんただもの。あんたって結構いじっぱりで思い込んだらどんどん落ち込んでいくからね。追いかけて引っ張りあげるのは大変だよ」
悦子は知ってるのか知らないのかわからない口ぶり。以前一緒に行っていた焼き鳥屋はなくなっていて、今日は悦子の新規開拓した店 あいかわらずこういうのは得意だ。
「私 祐輔と離婚するかもしれない」
「――何があったの?」
私は悦子にすべて話した。2度流産してしまったこと、たぶん子供は絶望的だということ、私が妊娠するのだから祐輔にはたぶん何も問題ないと思うので 違う人と結婚して子供を作ってほしいと言ったこと……
「あんたバカなんじゃない?」
「……うん……」
「そうじゃなくて!樋口さんのこと、何にもわかってないじゃない!あんた樋口さんのどこが好きなの?見かけじゃないよね?年でもないよね?収入?違うよね、じゃあ何なの?」
私が樋口のどこを好きなのか……それはたぶん私を絶対裏切らないところだ。ウソを言わないところだ。彼の言葉は信じられるし、信じさせてくれる。彼といると安心できるところだ。
「まあ普通そんな男を選ぶってのがファザコンって言うんだろうけど あんたはそういう樋口さんが好きなんでしょ?だったら樋口さんが離婚する何ていうわけないじゃない。よく考えてみなよ」
私は宿泊しているビジネスホテルに戻るとベッドに寝転んで天上を見つめた。
以前から悦子は私をファザコンだと言っていた。年上しか相手をしないからかと思ったけどそうじゃないよと笑われたことがある。
祐輔と私の関係は父娘っていうより――お釈迦様と孫悟空って感じがする。私がどんなにがんばって努力しても祐輔には適わない。それは仕事でも何でもそうだ。祐輔はいつも私の前を歩いている。それを私は追いかけて追いかけて……辛くなってへこたれそうになると手を差し伸べてくれて一緒に歩いてくれた。どんなに辛い時も傍にいてくれた。
確かにいつも甘い言葉を囁いてくれるわけじゃないし、イチャイチャするわけでもない。私がゴミ出しを忘れているとしっかり怒られるし、布団に入って寝ている彼を湯たんぽ変わりにして冷たい足をくっつけて起こしてしまった時は罰として朝まで私が腕枕したこともある。
「次の日 手は痺れてるし 上がらないし 大変だったんだよね」
誰もいない部屋に私の言葉だけが響く。離婚したいと言ったのは私なのに今会いたいのは祐輔だ。本当に矛盾している話だが会いたくてたまらない。もう彼は私に愛想つかしてしまってるのかもしれない。もしかしたら離婚届は出されたかもしれない。
『ウソを言わない祐輔が好き』
今まで一度も私にウソは言わなかった。その彼が「子供が出来なくても私と一緒にいたい」と言ってくれていたのではないか?私はどうしてそれを信じなかったのだろう。他の女と結婚して子供を作れとか いくら気が動転していたとは言え酷いことを言ってしまった。謝りたい、謝らなきゃいけない。
お気に入りとかよくわからないのですが、入れてくださってありがとうございます。本当に稚拙な文章で申し訳ないです(o*。_。)o
そろそろ終わりに近づきそうです。




