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私の秘密  作者: 響子
第2章
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新しい苦しみ2


「妊娠検査薬で陽性?出血してる?なら流産しとるやないか」


私はその言葉に抑えていた感情があふれ出した。そう思ったからよく調べもせずに近いと言う理由だけでこの産婦人科に来たのだ。とにかく早くしないと思ったから…

医師はたぶん私を責めたりしたつもりはなかったのだろうと思う。本当のことを言ったまで…だが私にはその言葉は何よりも辛い言葉だった。結局診察を終えた結果は…やはり流産していた。


「赤ちゃんの入っとる袋が見られないんだが、それが血と一緒に出てきたってことは?」


頭を横に振った。もともと整理中は血餅といわれる塊が頻繁に出てくるし、それをいちいち眺めたりもしない。だから…わからないのだ。結局早いうちに子宮内を剥離することを勧められた。血液が出てしまうまでこのまま…という手もあるらしいが、子宮内にいつまでも残っていると感染したりする可能性があるらしい。だから綺麗にしてしまうのがいいと言う。


私は家に戻ると何もする気がしなくて頭からすっぽり布団を被り丸くなった。どうしてすぐ気がついてやらなかったのだろう…もっと早く気がつけばどうにかなったかもしれない。せっかく…せっかく妊娠したのに…




暗くなった部屋に祐輔は帰ってきた。寝室で丸くなっている私を見つけて「具合が悪いのか?」と聞いてきた。話さなければいけない、言いたくないけど秘密には出来ない。


「…病院行ってきた」

「やっぱ具合悪いのか、熱あるのか?」


布団の中で頭を振った。私はまだ彼の顔を見ることが出来なくて布団の中に入ったままだ。


「じゃあ頭痛いのか?お前腹痛は我慢できるけど頭痛は我慢できないやつだからな。痛み止めとかもらったか?」


どこまでも優しい祐輔に涙が止まらなくなった。


「ゴメン…なさい…ゴメンナサイ ごめんなさい ごめんなさい…」

「何でお前が謝るんだ?何かあったのか?」


布団を剥がそうとする祐輔と必死に布団を取られないようにする私、だが力の差は歴然であっという間に布団は剥ぎ取られた。ただただ号泣してしまった私を抱きしめると彼は何も言わず抱きしめてくれた。ぽん、ぽん…背中を叩きながら まるで小さな子供を寝かしつけるような彼のしぐさは私を安心させた。私は今日あったことを少しづつ話しはじめた。生理があまりに長いから産婦人科に行ってきたこと、そこで流産していると言われたこと、早いうちに子宮を綺麗にした方がいいと言われたこと…


「明日にでもって…言われて…」

「うん…」

「ゴメンね。私全然気がつかなくて…」

「うん」

「せっかく祐輔の…赤ちゃん…出来たのに…」

「うん」

「ごめんなさい…」


泣いているし しゃっくりしてるし はっきり何を言ってるのかよくわからなかったであろう祐輔は私を抱き上げるとそのまま自分の書斎に連れて行った。PCを立ち上げ 私を膝に乗せたまま何かを検索し始めて私に見せた。そこは妊娠初期の流産について書いてあるものだった。初期流産のほとんどは胎児の染色体異常が原因であって 『私のせい』ではありませんと…


「お前のせいじゃない。だから…泣くな」

「………」

「お姉さんたちに話したのか?」


PC画面を見つめたまま私は頭を横に振った。そんなこと言えるわけがないし、言ったら姉にまた心配をかけるだけだ。私は祐輔にこの事は絶対姉達に言わないでほしいと言った。祐輔もわかってくれて その夜私はいつものように祐輔の隣で眠った。






翌朝、どうしても抜けられない会議があるという祐輔に私は大丈夫だといって送り出した。


「帰りは必ずタクシーで帰りなさい。近いからって歩いて帰るんじゃないよ」


そう言って彼は出かけていった。私は家のことを済ませると病院に行くために家を出た。空はどんよりしていて雨が降りそうだ。





病院で処置を済ませて医師から帰宅許可が出たので 私は病院を出た。はやり朝からの予想どうり雨が降り出していた。祐輔からタクシーで帰るように言われていたが あまりの近さに私はそれも出来ず 雨の中を歩いた。途中女性から傘を貸すと声をかけられたが、私は近いから…と断った。もしかしたらよほど顔色が悪かったのかもしれない。家に戻っても何もする気は起きなかった。祐輔には帰宅した旨のメールを送った。すぐ返事が返ってきて必ず寝て置くようにと書かれていた。


布団に入って目をつぶった。もうお腹の中には赤ちゃんはいない。ゴメンね、気がついて上げられなくてゴメンね。ダメなお母さんでゴメンね。私は何度も心の中で謝った。結婚して約1年が経ち梅雨に入ろうかという季節の出来事だった。


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