新しい未来に向かって(樋口side)
「僕は君との結婚はもろ手をあげて賛成はできない。理由はわかるよね?」
ひなたの義理の兄であるこの人、近藤邦夫は彼の妻であるひなたの姉の入れたお茶に手を伸ばしながらそう切り出した。
「聞いているかもしれないが、僕とひなちゃんは年が22歳離れている。だから妻の妹と言うより自分の娘のような感じでもある。その子が不幸になるとわかっている結婚を歓迎するわけにはいかない。だけど…ひなちゃんは君と結婚したいと言っている。君も同じ意見だということでいいのだろうか?」
「はい、僕もひなたさんと結婚したいと思っています。義兄さんが心配されるのは重々わかっています。僕はバツ1でひなたは初婚、年も14歳も離れています。ですが僕は…」
近藤は手を軽く上げて俺の言葉を遮り、隣にいるひなたの姉、美鈴の方を見て溜息をついた。
「僕からの条件は2つ、絶対ひなちゃんを泣かせたりしないこと。それと…家はここに住むこと」
「ここに…ですか?」
「ああ、正確には隣だね。今ひなちゃんは会社の2階の2LDKの部屋に住んでいる。だから君はそこに住んでそこから会社に通うこと。ひなちゃんをここから出す気はないよ」
「でも樋口さんの会社がここから遠かったら…」
「もし何かあった時、僕たちと離れていたら彼女は遠慮して相談なんてしないよ?いつ帰ってきてもいいって言っても結局彼と上手くいかなくなったらもうここには帰ってこない。ひなちゃんが人一倍気を使う子だってのは美鈴だってわかってるだろ?それくらいなら彼が何時間かけてでもここから通ってもらう方がいい。僕は別に彼が苦労しようが関係ないからね」
そう僕に向かって言い放つ近藤はさすがに会社の社長というだけあって一筋ではいかないようだ。
「わかりました。今 ひなたがいるところから通って行っていいんですね」
「ああ、車はひなちゃんのがあるから通勤に使うといい」
「それでは僕はひなたとの結婚を了承してもらったということでいいんですね」
そういうと彼は返事をしなかったが、ある意味それが肯定なのだろう。僕は立ち上がり頭を下げると家を後にした。さて…ひなたの住んでいるところを見に行くか そう思った頃、前の裏口から子供が飛び出してきた。
「お兄さんはひーちゃんと結婚するんだよね?」
「そうだよ。ひなた姉ちゃんはどこにいるか知ってる?」
「うん、ここの2階にいるよ?あ、僕は近藤拓馬といいます。小学1年生です。」
「お兄さんは樋口祐輔です」
珍しくお兄さんと呼ばれたのでついつい自分もそう言ってしまった。だが少し恥ずかしい気がする。
「じゃあゆうちゃんって呼んでもいい?」
「うん、いいよ。君は…たっくん?」
「拓馬でいい。たっくんとか子供みたいだから嫌だ」
確実に子供だろうにと突っ込みたかったが、そこはあえて言わないようにした。そして拓馬は家に入ると
「パパー ゆうちゃんとひーちゃん 結婚するんだね」
と大声で叫んでいた。拓馬が出てきた所から階段を登るとすぐ玄関のような扉があってそこがひなたの住まいのようだ。一緒にいた拓馬の兄、数馬は挨拶をすると家へと戻っていった。
俺は心配そうな顔をしているひなたを抱き寄せた。




