新しい未来に向かって 2
飛行機の到着を知らせるランプが点滅を始めた。そろそろ彼がやってくる。彼から送られたものはすべてカバンの中にある。そして私の決心も心の中に持ってきた。
だがいざとなると何故だか足が震える。やっぱりここに来なかった方がよかったかもしれない…カバンを胸にギュッと抱きしめたまま私はうつむいた。
会って最初に何ていうべきだろう?『久しぶり』?1ヶ月前に会ったけど… それとも普通に『こんにちは』?何か間が抜けてない??
「いつになったらこっちを向いてくれるの?」
嬉しそうな声に私は顔を上げた。
樋口は前にも何度か名古屋には出張で来た事があるらしくて意外と街中のことは詳しく、彼と入った喫茶店はもう夕方ということもあってか人はまばらだった。
「これ…」
私は持ってきた紙袋を机の上に置いた。この中には彼が宅配で送ってきたものがすべて入っている。
「これ、お返しします」
「ひなた…」
「それより欲しいものがあります」
「………何?」
膝の上に置いた手をぐっと握りしめた。たぶん今までで一番緊張していると思う。そしてこんなに緊張することはこれからもないだろう。
「樋口さんのこれからの人生を全部私に下さい!」
「前に言わなかったけど…」
樋口が話を始めるまで たぶん数分、いや数十秒だったかもしれない。だがその時間は果てしなく長く感じた。
「俺は君より14歳も年上だ。確率から行けば僕は君より早く死ぬことになるだろう。それに君の友人の旦那さんは元気でも僕はすっかり年をとって介護が必要になるかもしれない。そうなれば君は僕の介護をするために結婚したようになる。それでも君は…」
「その代わり死ぬまで私の傍にいてください」
もう裏切られて傷つきたくない。だけどこの人を信じられなくなったら 世の中にもう信じられる人はいない。だからこれは私の最後の賭けだ。私の一生の賭け…
その夜私は久しぶりに樋口と一緒に過ごした。一緒に風呂に入るのもセックスするのも3年ぶりで恥ずかしくてたまらなかったが、彼はとても嬉しそうに抱きしめてくれた。
翌朝、私は樋口を兄夫婦に会わせるために自宅へと案内した。私は樋口からの荷物が届いた後、決心して兄達に今までのことをすべて話した。私が樋口と付き合っていたこと、母が亡くなって姉に名古屋に来いと言われて行く事になった時 彼にプロポーズされたが私はそれを断ったこと、だけど諦めず彼は3年待ってくれていたこと…そして私がプロポーズを断った理由を話しても彼は気持ちを変えなかったこと…
姉は私が子供が望めないことを知ると号泣して謝りだした。そして何故自分に教えてくれなかったのかと責めた。だが私は姉の性格をよく知っている。姉は私のことを知っていたらたぶん拓馬は産まなかっただろう。そんなことをされても私はちっとも嬉しくない。反対に産んでくれたからこそ 私は自分の子供のように拓馬達に接することが出来るのだ。
そして樋口を姉夫婦のところに連れて行くと 3人で話があるからと私と子供達を追い出した。




