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私の秘密  作者: 響子
第1章
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家族の関係

私には12歳年の離れた姉がいる。彼女は『完璧』だった。頭がよく、運動もできて通知表はオール5だったこともある。高校は県内1,2の進学校ですんなり県内の国立大学の教育学部に入学した。彼女は教師を目指していたのだ。大学の頃、姉の知り合いに推薦されたようで県名を背負うミスコンテストに出て、特別賞をもらっている。頭だけじゃなくて外見もよかった。その姉が結婚したのは私がまだ中学生の頃だった。普通の平凡なサラリーマンとどうやって知り合ったのか知らないが普通に結婚した。そして男の子が産まれた。姉夫婦はそのまま仲良くやっていくかと思ったが、現実はそうではなかった。義兄に多額の借金が発覚したのだ。そのことで夫婦仲は一気に冷めていき、結婚生活は2年もなく破局した。

そんな姉の妹として生まれた私は母からは出来損ないに見えたに違いない。姉のように勉強は出来ない、運動も満足に出来ない、高校は何とか進学校ながら姉と比べて格段に下…そしてもちろん姉の卒業した国立大学なんて合格するわけもない。

それでも専門学校に行かせてくれたのは親心というものだったのかもしれない。小さい頃から母のがっかりしたような視線を受けていた私は母に相談などしたことはなかった。もっぱら家で話すのは母代わりとも言うべき祖母だった。



我が家は男縁がほとほとない家系だった。祖父は戦死し子供は母だけ、その母も結婚して子供は姉と私の女2人。そしてその父も私が産まれてしばらくして仕事中の事故で亡くなった。そんな中、姉の産んだ子供は男の子だった為 母や祖母はたいそう喜んでいた。離婚後私達はまた一緒に暮らしていたが、姉は知り合いの方に紹介された人と再婚することになった。相手は名古屋に住んでいて、姉と甥は引っ越していった。姉の旦那さんは自営業をしていて、姉はその手伝いをしているらしい。甥が小学校から帰ってくる頃合いを見計らって電話をかけ、学校であったことなどを聞いていた。

祖母が亡くなると頻繁に姉のところに行くようになった。姉夫婦のやっている事業は結構儲かっているようで、かなり広い家を建てているらしく、家のことをする変わりに一部屋貸してもらっているのだと私に話していた。


そんな母が事故に遭った。友達と遊びに行った帰り、信号無視で突っ込んできた車と衝突したのだ。運転していた母は腰を強打し、入院することになった。もちろん車は大破してしまっていた。その知らせを聞いて姉は産まれて間もない甥を連れてやってきた。女系家族だと思われた我が家の2人目の孫もやはり男の子だった。そして色々検査をしてある事実が発覚した。母は…ガンになっていた。


普通に検査をして退院の話を聞くと思っていた私と姉は愕然とした。腰を打って車椅子に乗っている母はどこから見ても元気で…だけど診断した医師は『1年もつかどうか…』。

姉は絶対そのことを母には知らせたくないと言った。父が亡くなって母は私達を育てる為に苦労してきている、だから今度は私が母に楽させたいんだと…

だが私は母をそんな風には思えなかった。姉はきっと母に叩かれたことも殴られたこともないのだろう。私は母から箒で叩かれ、足にあざを作って学校に行ったことがあり 先生に指摘されて「転んだ」と言ったことがある。朝食後、何か母の機嫌を損ねることをしたのかわからない。お腹を殴られ、トイレでさっき食べたものをすべて吐いて学校に行ったことがある。人の目に母がどう映っていたかはわからないが、私と母は性格があわなかった。

姉には悪いと思いつつも「私は仕事があるから…」と仕事を口実に母の面倒を見ることを断った。姉はそれに何ら不満を言うことはなく、母を看病することになった。母の容態が安定すると姉は母を名古屋に連れて行った。

私は1人家での暮らしが始まって最初の夏に事件が起こった。


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