憧れのバージンロード
昨日の夜は何事もなく、以前私が寝させてもらっていた和室に寝せてもらった。3年前に出て行った時と何にも変わっていなかった。しいて言うなら私が3歳年をとり、同時に樋口が3歳年を取っただけだ。なので樋口はもう41歳になっている。悦子は見合いしたと言っていたがどうなのだろうか?もしかして見合い相手とは上手く言っていてそろそろ結婚とかの話になっていたりするのだろうか?私はそれを聞いて祝福できるのだろうか?
シンと静まり返った部屋に布団を敷いて私はそんなことを考えていた。実は眠りについたのは明け方近くですっかり寝不足なのだ。
今日は本当にお天気でぽかぽか陽気だ。バスの中も必然的に温度はあがり、山道を揺られているので眠りを誘う状態ではあったが 私はなぜか眠れなかった。肩が急に重くなってそちらを見れば樋口はすっかり眠っていた。目つきが鋭くて怖がられている樋口も寝顔は結構かわいい。
年度末で仕事が忙しかったのかもしれない…私は彼の頭をそのままにしておくことにした。
「悦子!あんた私を騙したわね」
「騙したとか人聞きが悪くない?別にウソなんて言ってないもん」
「だからって…」
「それよりいいもの見せてもらったわよねぇ~ 樋口さん対木村君?」
「うんうん!樋口係長結構必死だったよね」
「ん??」
「まあ誰がどう見ても木村君に勝ち目はないよね」
「そうだよねぇ~ ちなみに木村君のこと覚えてた?」
「いや、全然」
「「だよねぇ~」」
何だか悦子とあかりに誤魔化された気がするが 話題は違う方へと流れていった。そして結婚式は厳かに行われた。正直教会での結婚式に参列したのは初めてで、どんなものかと思っていたけどバージンロードを歩いてくる新婦はやっぱり綺麗だったし、女の子の憧れと言うのもよくわかる。
そして披露宴は同じ敷地内にあるレストランで行われ、新婦が着ていたドレスはお母さんの手作りのものだった。以前からお母さんはクリーニング店をされていて、補正とか裾上げとかもされると聞いていた。母親が作ってくれたドレスでお嫁に行くなんてすごい贅沢だなと思った。
「佐伯さんて 樋口係長とはどういう関係なんですか?」
たぶん新郎の会社の同期?と思われる女の子3人に私は囲まれていた。披露宴も終わってバスに乗ってまた私達は街中に戻ることになっていたのだ。
「会社に来た時も樋口係長と一緒でしたよね?」
み、見てたんですか…ちょっとだけ焦りを感じたが、別にやましい関係な訳でもない。ただ、なぜかこの女の子達の視線が怖い。
「あれ?佐伯さん バス乗らないんですか?今度は俺の隣に座ってくださいよ~ ちゃんと前に座りますから」
「うるさい!今私達が話してるんだから あっちに行ってよ」
「何だよ!うるさいとか…」
「あんただって知りたいでしょ?樋口係長と佐伯さんの関係」
「へ?関係って…何か関係があるの?」
木村君まで加わってしまった…何か穏便な言い方をしなければいけない。
「えっとね、私と樋口さんは以前からの知り合いって言うか…」
「ひなたは俺の彼女だが それが君たちに何か関係があるのか?」
後ろから抱きしめられたと同時に頭の上から厳しい声がした。一瞬にしてみんなの顔がこわばる。
「ひなたとは村田君が結婚したくらいからの付き合いで 一緒に暮らしていたこともある。今は事情で彼女は名古屋にいるが今回式に出る為 うちに泊まっている。そうだよな?」
私は勢いで何度も頷くと彼らはすごすごと去っていった。もしかして会社ではあんな厳しい言い方してるんだろうか?もっと優しく言ってもよかったのに…
少し心に引っかかる部分もあったような気がしたが結局私は最初と同じで樋口の隣に座らされてバスは出発した。




