思わぬ再会
住んでいた時はこんな片田舎、どっこもいいところなんてないと思っていたが 今になってみれば私には大事な故郷だ。年度末に5日も休みを取ってしまって本当に申し訳なかったので朝から目いっぱい働いたため、みんなから飛行機の時間に間に合うかと心配されるくらいだった。
樋口が転勤でここから離れたらやっぱりここに帰ってこよう。友達もいるし…やっぱりここの空気が懐かしい。
最終便と言ってもまだそんなに遅い時間ではない。さて迎えが来てるって言う話だったんだけど…私は携帯の電源を入れてロビーを出た。日はすっかり沈み空には星が見え始めていた。
「遅くなってゴメン、待った?」
迎えに来た人は私が夢にまで見た会いたくてたまらなかった人だった。
「……あ、え…」
私の声は届いてないみたいに彼は私の荷物を持って歩き出した。悦子のやつ…迎えに来るって言ったのに樋口を来させるなんて!抗議しようと携帯を開くとちょうどメールが届いた。
『騙したみたいでゴメン。もう何ともないなら樋口さんとあっても平気だよね?』
―――うっ…
この前の電話で樋口のこと もうなんとも思ってないのかと聞かれ、『もう吹っ切れたから気にしないで』と強がってしまったのだ。悦子は私のウソなんてお見通しってやつですか…逃げようにも既に荷物が人質状態、あの中に明日着る服とか入っているのだ。
仕方なく樋口の後を着いて行った。
「元気にしてた?」
以前よく行っていたとんかつ専門店で机をはさんで座っている樋口の手にはゴマの入ったすり鉢が握られている。彼はいつも粉状になるまでゴマを擂り潰す。私がそこまでしなくても…と何度も言ったのだがどうやら彼はそれが好きらしい。反対に私はほとんど擂り潰さないのだ。お互いそういうところは全然あわないといってもいい。ところが
「ご飯は麦ご飯で、キャベツは千切りでお願いします」
そう、そういうところは間違いなく好みがバッチリなのだ。
「ええ、元気にやってます」
「お兄さんの会社で働いてるんだって?」
悦子のやつ…どこまで話したんだ!私は当たり障りのない返事を返しながらちらりと樋口を見た。あまり3年前とは変わらない、一見若く見えてスーツ姿が似合うので周りの女の人の視線を集める。本人は全く知らないみたいけど、会社では狙っている女の子がいるとあかりから聞いたことがある。緊張しながらの食事は味がよくわからなかった。
「飲み物は水とお茶、ビールくらいしかないけどそれでいいかな?コンビニに寄ろうか?」
――― はい?
えっと…え?もしかして…
今夜の宿は樋口の部屋だった。どうやらこれからの5日間はここで決まりになっているようだった。逃げようにも荷物はしっかり樋口の手の中にあるし、車を降りると逃げないようにか手まで引かれてしまった。えーつーこー!!




