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私の秘密  作者: 響子
第1章
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運命の出会い

「それでは村田伸一郎くんと内海あかりさんの結婚を祝して かんぱーい!」


今日は友人の結婚式、新婦は私と同じ高校の同級生だ。高校を卒業して入社した会社で知り合った、俗に言う社内恋愛で社内結婚だ。

3次会ともなると残っているメンバーは顔見知りばかり、そしてそのメンバーの中に私の相手になる対象がいない。どうも同じ年頃の男には興味がなくて話していてもあまり楽しくない。私はそっとその場から離れ、カウンターに座った。ふと正面をみると飲み屋のカウンターにはあまり似つかわしくない絵が掛けてあった。あれはダリ?そしてこの店の名前を思い出す。


「もしかしてサルバドールってダリから取ってます?」

「あれ、ダリを知ってるの?」

「ええ、絵は好きなので…」

「珍しいもんだね。同じ質問をした人が一晩で2人ってのは初めてだよ」

「同じ質問?」


マスターの視線の先にはちょっと年上の2人組の男性が座っていた。マスターの視線に気がついたのか彼らはこちらを見つめている。


「今ね、彼女がこの絵を見て 店の名前はダリから取ったのかって聞いたので 同じ質問を今晩は2人からされたって話をしていたんですよ」

「へぇ~」


2人組の片方が立ち上がって私の隣に座った。


「君、絵好きなの」

「見るだけですけど…」

「俺も好きなんだよね~」

「ウソばっかり言うな」


もう片方が隣に座った男を引っ張っていきながら「ゴメンね」と言って帰っていった。


「後から来たほうの方がダリのことを聞かれた方です」


マスターはそう言ってにっこり笑った。その頃私は絵画鑑賞にはまっていた。ダリなどの抽象画も好きだけど 一番はラファエロの絵が好きだ。20そこそこの男と絵についての会話が成り立つわけもないわけで…だから同じ年代の男とは付き合ったりしない。自分のためになる男、自分の知識を広めることが出来る男しか利用価値はない。


「あれ?もしかして樋口係長じゃないですか?」


聞き覚えのある声がして振り向くと少し酔った新郎の友人が先ほどの男に声をかけていた。どうやら同じK商事の社員らしい。何やら後ろが一気に騒がしくなった気がするが 私はマスターに見せてもらっている本のほうが気になっていた。


「その絵は『これはリンゴではない』だよね」


隣にはさっき樋口と呼ばれていた人が立っていた。ページにはリンゴの絵が書かれているが確かにこの題名は「これはリンゴではない」だ。


「君はシュルレアリスムが好きなの?」

「そういうわけじゃないです。絵は全般的に好きです」

「もしかして描いたりする?」

「いえ、見る専門です」


私がラファエロが好きだと言うと彼はレンブラントが好きだと言う。彼はつい最近こちらに転勤になったらしく、美術館にはもっぱら1人で行っているらしかった。


「もしよかったら一緒に行きませんか?」


私はそう彼を誘った。こんなに絵の話が出来る人に会ったことがなかったし、正直なところ自分も1人で美術館に通っていて寂しかったと言うこともあった。


「いいの?それは助かるなぁ」


私達は携帯を取り出してお互いの連絡先を交換し合った。今思えばセックスしている相手にすら携帯の番号を教えなかったのに、この人には番号をすんなり教えたのは何か感じるものがあったのかもしれない。

樋口とは1,2ヶ月に1度くらい美術館に一緒に行く仲になった。その後食事をしてそのまま別れる。彼はそれ以上を要求してこなかったし、私もこちらから誘うこともなかった。


  

樋川→樋口に変更しました。

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