年の差のある恋人
木村と言うのはあかりの旦那である村田君の後輩で、会社でもとても仲がいいらしい。何度かコンパで私は会ったことがあるらしいが悦子はたまたま偶然にもその時は欠席していたみたい。
先日会社で会議があって、木村と村田と樋口はたまたま出席していたらしい。樋口と村田は同じ部署ではないのでそういうことは珍しいそうだ。それで木村が村田と話をしているのを樋口が聞いたのではないかと言うのだ。
「村田君がその木村って人と話してるのがどうひなたに結びつくわけ?」
悦子の問いかけに私も大きく頷いた。もしかして私の悪口か?
村田に『前に合コンした時に来ていた佐伯さんは彼氏がいるのか』とか『僕は年上が好きで甘えたいタイプなので佐伯さんみたいなクールビューティ?みたいな感じの人が好みなんです!』と言ったらしい。村田もあかりから私の好みのことは聞いていたので 木村に『彼女は年上が好みで10歳くらい年上が好きみたいだ。だから年下はダメだと思う』と告げたらしい。
「私はひなたが年上が好きってのを聞いて 告白する気になったんじゃないかと思ったわけよ」
「なるほどね~ ってあかり、樋口さんっていくつなの?」
「たぶん…37?」
「あらぁ~ 14歳違うね。ひなたの一番歳の差があった男っていくつ?」
「は?え…たぶん…17?」
「ちょうどいいじゃん」
「ちょうどいいよね」
何がちょうどいいのかさっぱりわからないが、ともかく2人は私が樋口と付き合うことに反対はしなかった。むしろがんばれと応援してくれた。
「ただいまぁ…」
玄関を開けて家に入ると 当然のように樋口の靴がある。私はいつものように樋口の部屋のドアをノックした。
「ただいま、今帰ってきた」
「おかえり 村田さんと向井さんとの食事はどうだった?」
「いつもどおりって言うか…楽しかったです」
私がそういうと樋口は私の腰に手を伸ばして引き寄せて唇を重ねた。離れた唇が私の首筋を舐めるように触れていく感触にゾクっとして手を伸ばして体を離した。
「えっと…お風呂に入ってきます」
「そう、じゃあ僕も一緒に入ろうかな?」
「いや、もう樋口さん入ったでしょ?一人で入ります」
「それは残念。じゃあ待ってるよ」
私は逃げるように浴室へと向かった。
私達は一緒のベッドに…樋口の部屋で寝ている。半年も私に何もしなかった樋口だったが、
「付き合ってるんだからいいよね」
とその日の夜から私を抱いた。それと…体中にある彼の印。独占欲の現れとしかいいようがない。こんな印があるし、樋口が毎晩求めて来るし…あれ以来私は男と付き合いはやめた。もしばれたらと思うと…やっぱり怖い。
風呂から上がると樋口はベッドで本を読みながら待っていた。彼の読んでいる本は私には難しすぎて分からないことが多い。すべて英語と言う本も少なくないのだ。
「ひなたは夏休みはどうなんだ?お盆に取れるのか?」
「そうみたい。でも「働きたいなら売り場に出る?」って言われちゃった」
「それはちょっと困るな。温泉でも一緒に行こうと思ってたからさ」
いつものように彼に抱っこされるようにして眠りにつく。最初は慣れなくて眠れなかったけど 今は彼の体温が心地よくてすぐ眠れるようになった。付き合い始めは唐突だったけど 私がきっと付き合うと返事をしたのは樋口のことを信頼していたからだと思う。一番大変だった時に傍にいてくれて、信頼できる相手だと思ったからだ。また男を信用できるようになるとは思ってもみなかった。私はその時十分に幸せだった。
次こそはきっと樋口サイド…