嫉妬とヤキモチと
「うわー 樋口さんって病んでる人だったとは知らなかったわ」
「私も…すっごくいい人っぽかったのにね。まあそれも愛情の裏返しだと思えばさ」
「それもそうかもね。それくらいしないとひなたの場合…」
「ちょ、ちょっと待ってよ!なに納得してるわけ!?」
翌日私は樋口に連れられて携帯を買いに行った。私と樋口の携帯は同じ会社ではなかったのだが『同じ会社だと通話とかメールが無料だから』と言う理由で強制的に樋口と同じ携帯になり、その足で私の携帯会社に行き解約の手続きをとることになった。
携帯を手に入れるとすぐ樋口は自分の携帯と赤外線通信をして番号を登録した。
それであかりや悦子の連絡先も分からなかったので樋口からあかりの番号は教えてもらい、そこから悦子に連絡を取ってもらったのだ。
「あんたが元彼とかの番号を入れたままとか何で樋口さん知ってたの?」
「もしかして…ひなたの携帯をこっそり見たとか?」
「いや、だって友達と彼氏って区別がつかないじゃない?ましてや苗字でしか入れてないとか…それともフォルダ分けしてたとか?」
「そんなことしないよ。普通に「女友達」「男友達」くらいしか分けてない」
「樋口さんなら男友達も許せないとか?うわー ますます病んでるわ」
「会社では絶対見られない一面を見せてもらってるよ…」
2人とも何だか楽しんでるような気がしないわけでもないが…そのころ樋口と一緒に暮らし始めて半年以上経ち、仕事に復活してそろそろ2ヶ月になろうかとしていたところでもあった。
「でも何で急に付き合うとかそういう話になるわけ?何かきっかけでもあった?」
―――そうなのよ!全くきっかけなんてないわけよ!
「もしかして…とうとうやっちゃったんじゃない?」
―――いえいえ!やってませんから!誘ってもいませんし!!
「ってかあんた、今何人の男とやってるの?」
「えっと…2人?」
「あいかわらず…ねえ、あかりも何か言いなさいよ」
「……ゴメン、きっかけはたぶんうちの旦那絡みだと思うわ…」
「ちょっ!!何黙ってるのよ!そういうことは早く言いなさいよ!」
「そうだよ!どういうことなわけ?」
「まあ、落ち着いてよ。えっとさ…木村君って覚えてる?」
木村って誰?そう思いながら悦子の方を見ると彼女も同じような顔をしていた。あかりはやっぱりねという感じで話を始めた。