第3話 『反抗期の嵐』
春のある午後。
娘の表情はいつもより強張っている。
「もう、うるさい!放っておいてよ!」
母はびっくりして後ずさる。
「え…どうしたの?」
娘は机に向かって背を向けたまま、ため息をつく。
「だって、ママばっかり…!私の気持ち、分かってくれないもん!」
母は静かに深呼吸する。
「ごめんね…でも、分かりたいから話してくれない?」
娘は頭を抱え、声を潜める。
「分かるわけないでしょ!」
その夜。
母はキッチンで一人、夕食を作りながらため息をつく。
「どうして急にこんなに反抗的になっちゃったのかな…」
蒼がいなくなってから、娘は少しずつ自分の気持ちを抑えることを覚えた。
でも、それは今、限界に近づいているのだろう。
母はふと、娘の小さかった頃の笑顔を思い出す。
「怖くても、向き合わなきゃ」
翌朝。
娘はまだ拗ねたまま、朝食も手をつけない。
「行ってきます」
母が声をかけても、反応は薄い。
学校に向かう背中を見送りながら、母は心の中で決める。
「焦らなくていい。きっと、時間が解決してくれる」
放課後。
娘が学校から帰ると、母は少し距離を置きながら話しかける。
「今日はどうだった?」
娘は無言でリビングに座る。
母は優しく隣に座る。
「反抗期って、大変よね。私も昔はそうだったみたいに…」
娘は少しだけ顔を上げ、涙が光る。
「でも、ママ…私、頑張るよ」
母は微笑む。
「その気持ちがあれば、大丈夫。怖くても、揺れても、ちゃんと前に進める」
夜。
母と娘は窓の外の桜を見上げる。
舞う花びらは、反抗期という嵐の中でも、親子をつなぐ希望の光のようだ。
娘は小さな声でつぶやく。
「ママ、ありがとう…私、少しずつでも変わりたい」
母はそっと肩に手を置く。
「一緒に歩もう。怖くても、揺れても、ずっと一緒」
桜の花びらが舞う窓の外に、春の光が優しく二人を包む。
反抗期も、悲しみも、成長の証。
春は、終わらない。
そして、親子の絆も、少しずつ強く咲き続ける――。




