第8話 『桜の下で誓うこと』
春の陽射しが柔らかく差し込む病室。
蒼の体はまだ本調子ではない。
胸の痛みは続き、点滴の管が手首に絡む。
娘は窓辺で、そっと手を握りながら外の桜を見つめている。
「ぱぱ、桜…きれいだね」
蒼は微笑む。
「うん、咲いてるな…今年も」
娘の瞳にも、桜色の光が映る。
放課後、娘が病院に来る。
友達も一緒だ。
「ぱぱ、私、約束する」
娘は少し照れながら言う。
「怖くても、逃げずに頑張るよ」
蒼の胸が熱くなる。
「ありがとう。お前がいるだけで、力が出る」
友達も微笑む。
「私も応援する!」
赤いランプが静かに点灯しているけれど、恐怖よりも温かさが勝る。
夜。
病室の窓の外、桜の花びらがゆっくり舞う。
蒼はベッドに座り、娘の手を握る。
「もう、怖くてもいい」
娘が首をかしげる。
「え?」
「怖いのは当たり前だ。だけど、怖いままでも進める」
娘はうなずく。
「うん…私も、ぱぱと一緒なら頑張れる」
蒼は深く息を吐く。
「よし、俺たち、一緒に進むんだな」
娘は笑い、友達も一緒に笑う。
窓の外の桜が、赤いランプの光を優しく反射する。
その夜。
蒼は窓辺でひとり、空を見上げる。
「春は、やっぱり来るんだな」
怖くても、揺れても、前に進む限り。
命と絆は、光を運んでくれる。
娘の手の温もり。友達の笑顔。
それだけで、恐怖の夜も越えられる。
蒼は静かに呟く。
「怖くても、負けない。春は、終わらない」
桜の花びらが、窓の外でふわりと舞う。
赤いランプの向こうに、また新しい希望の春がある。
――つづく。




