第7話 『再発、そして決意』
春も半ば。
蒼の体調は再び悪化していた。
胸の痛みは鋭く、夜も眠れない日が増える。
娘は中学二年生。
「ぱぱ、痛いの…?」
蒼は微笑むが、声が震える。
「ちょっとね。でも、心配しなくていい」
でも、蒼の瞳には迷いがあった。
病院の待合室。
娘は私の手を握る。
「また入院するの?」
小さな声が、ひどく切ない。
私は深く息を吐く。
「そう。でも、今回はみんなで乗り越えられるよ」
娘は黙ってうなずき、頬を赤らめる。
怖いのに、泣かない。
でも、胸の奥に緊張があるのが分かる。
病室。
赤いランプが光る。
蒼はベッドに横たわり、点滴の管を握る。
「ごめんな…また迷惑かけて」
娘は泣きそうな目で蒼を見つめる。
「迷惑なんて思わないよ。だって、ぱぱは私のぱぱだから」
蒼は少し笑う。
「ありがとう…そう言ってもらえると、少し楽になる」
検査の結果。
再発だった。
言葉が喉に詰まる。
でも、蒼は深呼吸をして、目を閉じる。
「来たな…これも春の試練だ」
私は隣で手を握る。
「怖いけど、前に進むしかない」
娘も手を握り返す。
「一緒に頑張ろう、ぱぱ」
蒼は微笑む。
「うん、もう一度、戦える」
夜。
病室の窓の外、桜の花びらが舞う。
赤いランプは点いているけれど、恐怖は孤独ではない。
家族がいる。
娘の笑顔、私の手の温もり。
仲間たちの支え。
それだけで、恐怖を少しずつ越えていける。
蒼は小さく呟く。
「怖くても、揺れても、進む。これが俺の春だ」
娘が笑う。
「うん、春はまだ終わらない」
赤いランプの向こうに、また春が咲く。
再発は試練だけれど、希望も同時に運んでくる。
怖くても、揺れても、私たちは前に進む。
春は、まだ、終わらない。
――つづく。




