第3話 『友達の背中』
学校の中庭。
桜の花びらが舞う午後。
娘は少し緊張した面持ちで、友達と話していた。
「ねえ、聞いて」
小さな声。
娘の告白の話を、そっと打ち明ける。
友達は一瞬驚く。
でも、すぐに笑顔になる。
「すごいね。私もやってみようかな」
娘の肩が、ふわっと軽くなる。
放課後。
娘は友達と一緒に帰る途中、ふと立ち止まる。
「ねえ、ぱぱが言ってたこと、分かる気がする」
友達が首をかしげる。
「怖くても、踏み出すことって大事だよね」
娘の瞳には、ほんの少し大人びた光が宿る。
「うん、私もやっと勇気出せそう」
友達の手を握り、微笑む。
その夜。
家で夕食を食べながら、娘は照れくさそうに言う。
「今日ね、友達がさ、告白しようって決めたんだ」
蒼は笑う。
「ほう、すごいじゃないか」
娘は照れながら続ける。
「私、少し役に立ったかも」
蒼の目が潤む。
「…立派だな」
胸がじんわり温かくなる。
「一歩踏み出すだけで、世界が少し変わるんだな」
娘がうなずく。
「怖いけど、やってみるってすごいことだよね」
その夜、娘が寝た後。
蒼はリビングの窓辺に座り、夜空を見上げる。
桜の花びらがまだ風に舞っている。
「俺の娘も、誰かの背中を押してる」
過去の恐怖、赤いランプの夜。
震える手、涙、絶望。
でも、今はその全てが、光になった。
「踏み出す勇気って、こうやって連鎖するんだな」
私はそっと手を握る。
「春は、まだ続いてる」
蒼は微笑む。
「これからも、続く」
誰かが勇気を出すたび、また次の春がやってくる。
怖くても、震えても、進む先には希望がある。
赤いランプの向こうで、未来は少しずつ光を増している。
――つづく。




