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もふの手のひら冒険録 〜ゲーム初心者の聖女(予定)、異世界で伝説のモフモフたちに懐かれる〜  作者: あめとおと


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7/8

聖女の逃走と、ギルドマスターの密命


秘密の庭園で心ゆくまでモフモフを堪能したシノは、レオン・フェザーから「またいつでも来るとよい」という言葉と、お土産に「聖域の果実」をもらって街へと戻ってきました。

しかし、街の様子が何やらおかしいことに、シノはすぐ気づきます。


「あ! あの子じゃない!? 銀狼を連れた調律師って……」


「本当だ、頭の上にあの『光る毛玉』が乗ってる!」


街の広場に入った途端、プレイヤーたちの視線がシノに集中しました。中には録画機能を使おうと近づいてくる人や、フレンド申請を送ろうと詰め寄ってくる人の姿も。


「ひゃぅっ!? な、なんでみんな私を見てるの……!?」


ゲーム初心者のシノにとって、この突然の注目は恐怖でしかありません。慌ててフードを深く被り、銀狼の毛並みに隠れるようにしてギルドへ逃げ込みました。

ギルドの中も、シノが入るなり一瞬で静まり返ります。受付のセシルが心配そうに駆け寄ってきました。


「シノ様! 大丈夫ですか? ……掲示板でかなり有名になってしまわれたようで」


「セシルさん、助けてください……。普通にのんびり遊びたいだけなのに……」


そこへ、奥の重厚な扉から一人の男性が現れました。

精悍な顔立ちに、歴戦の傷跡。

しかし、その手にはなぜか可愛らしい肉球柄の便箋を持っています。彼こそがこのギルドの頂点、ギルドマスターのガウルでした。


「君がシノか。騒がしくてすまんな。……実はな、君にしか頼めない依頼があるんだ」


ガウルは真剣な面持ちで、一枚の依頼書を差し出しました。


「東の街道で、一匹の『ビッグ・ベア』が暴走して、流通を止めている。本来なら討伐対象だが……あいつは本来、温厚な性格なんだ。何か理由があるはずだと俺は見ている。調律師の君に、あいつを鎮めてきてほしい」


「……戦わなくていいなら、やってみます」


シノは、街中の視線から逃げ出す絶好のチャンスだと思い、その依頼を即座に引き受けました。


シノは銀狼の背に乗り、ギルドの裏口からこっそりと出発しました。


街道を進むと、そこには確かに、自分の頭を抱えて暴れている巨大なクマがいました。


『いたい……みみが、いたいよぉ……!』


シノが【調律師】の耳を澄ませると、聞こえてきたのは怒りではなく、痛みの声でした。


そっと近づいたシノは、クマの耳の中に「毒トゲ蜂」が入り込んでいるのを見つけます。


「よしよし、痛かったね。今取ってあげるから……」


銀狼が威圧感でクマを落ち着かせている間に、シノは聖域でもらった「癒やしの果実」をすり潰して耳へ。すると、蜂は逃げ出し、クマの痛みは瞬時に消え去りました。


「ガオー……(ありがとう……)」


クマはシノをぺろりと舐めると、満足そうに森の奥へ帰っていきました。


「よし、解決! ……さて、急いで報告して、街を出なきゃ」


シノは追っ手のプレイヤーたちが来る前にギルドへ戻り、ガウルに完了報告を済ませました。

ガウルは「まさか10分で終わるとは……」と呆気に取られていましたが、シノは報酬を受け取るやいなや、セシルにこう告げました。


「セシルさん、私、少し遠くへ行こうと思います。南の方に、助けを待っているモフモフがいるみたいなんです」


「……シノ様らしいですね。どうかお気をつけて。あなたの優しさは、この世界の光ですから」


セシルが丁寧に深々とお辞儀をする中、シノは再び銀狼の背に飛び乗りました。


「さあ行こう! 目指すは南の火山。新しいモフモフが待ってるよ!」


背後から「あ! 聖女がいたぞー!」というプレイヤーたちの声が聞こえてきましたが、銀狼の快速には追いつけません。


こうしてシノは、有名人としての騒がしい日常を振り切り、新たな出会いと「究極の温もり」を求めて、未知のエリアへと駆け出していったのでした。




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