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タンクのなかのこと、(改題 ●二年生になったので、観測始めます! )

作者: 有城 沙生
掲載日:2026/02/04

ちょっとだけ、改稿しました。


「二年生では、恒例の観察をします!」


 先生が楽しそうにしてるけれど。

 でもね。

 みんな知ってると思うんだよ?


 この観察って、ととさまもかかさまも、あんちゃんもねえちゃんも、じいちゃんもばあちゃんも、みぃんなやってきたことだもの。


 話は聞いてるよ。


 みんなの前には、タンクと生成キットがあるしね。


「もう、みんなノリが悪いなーみんなー頑張ろうねー!」


 頑張るものなのかな?


 んー。でも、毎日、日記をつけるのか。

 ボク三日坊主なんだよねー。

 ちゃんとやれるかな?


「では、キットの中のをタンクに入れてください。入れればいいですよぉ。失敗とかないからねぇ、思いきっていこー!」


 先生がそんな風に言うもんだから、そっちでばざばさ入れて砕けてる子もいるし、こっちは変なガス発生させてる子もいるよ。


 ほら、あっちでは爆発してる!


 まあ、タンクの中だから大丈夫なんだけど。



「わあああああんっ!」


「あー!エムくん!大丈夫だから!落ち着いて!ほら!泣かないの!ちゃんと混ぜてあげて!」


 て、先生がわたわたしてる。


 エムくんが、泣きながらタンクの中をかき混ぜてる……かき混ぜすぎなのでは?


「ん!面白いのが出来ましたねー」


 いいんだ。


 ボクはそぉーとやりすぎたのか、何も起こらない。


 いいのかな?

 ちゃんと出来てるのかなー?


「ああ、これはこれで大丈夫ですよ。

 スナくんらしいのが出来ます」


 て、先生に言われたから大丈夫なんだろう。


 そして──教室の中では、まだまだ中々のカオスが繰り広げられてるよ。


 正直、一度できて"安定"してしまえば状態はそう変わらないんだって。

 でも、出来かたはみんな違う。

 早くて、その日。

 遅くても五日以内。


 同じタンクはひとつもない。



──三日目。


 ボクのタンクに、大きく燃えてるのが出来た。

 大きいのを中心に、いくつかのちっちゃいのが現れて、その周りを回ってる。


 最初はそれぞれ、ふらふらしてあぶなっかしかったけど。


 でも、だんだんと決まったように動きして。


「へぇ。中々綺麗だねー」

 先生が覗いてきた。


「こんなにぐるぐる回って、ぶつからないの?」


「大丈夫だよ。通り道も安定してるみたいだし。ぶつかることは…滅多にない、と、思う。たぶん」

 頼りないなー。


「同じキットを使うのに、この状態になるのはいつもひとつなんだよ。今年はスナくんのなんだねー」


 ボクはきょろきょろと周りを見た。


 エムくんのは、ぽやぽやしてばらばらして、すごくたくさんだし。

 ガラキシオくんのはタンクからはみだしそう、にみちみちしてるし。

 お花みたいのや、動物みたいのが出来てる子もいる。


 エムくんのもばらばらだけど、ボクのとはなんか違う。


「こっちのちっさいのは、その年によって数は色々で──まあ、だいたい十コ前後だけど。スナくんのは九つだね」


 一つの大きいのと、ちっさいの九つ……

 全部で十コ!十コ?!


「先生!十コを一つずつ、観察日記つけなきゃいけないの?!」


「観察日記をつけるのは、この燃えてる大きいのだけでいいよ。ちっさいほうはしても仕方ない」


「ちっさいほうは要らないの?」


「そんなわけでもないんだけどね。

 無きゃ無いで、面白いけど。

 おっきいのほど変化はないから。

 ただ……」


「ただ?」


「この三つ目のやつ。これね。青くなったら腐りやすいから気を……つけたところで、腐るんだけどね。まあ、見てるといいよ」


「腐っちゃうの!!どうにも出来ないの?!」


「んー…どうだろうねー。まあ、見るのは大きいのだけでいいよ」


 て、言うと先生は別のタンクを見に行った。


 

──五日目。


 みんなのタンクを、先生がひとつひとつ確認してる。


「よし。では展示板に並べましょう」


 先生の指示通りにタンクを重ねて、タンクの壁を作る。


 壁の手前に透明の扉をつけて、閉める。


 すると、タンクの境がすーっと消えて、扉の向こう側で、広がる。


「おおー」


  みんなでひとつひとつ作ってたのが、おっきなひとつになった。



 でも、みんなの名前が出てるから、自分のはちゃんと分かるようになってる。


 ボクのは……随分、隅っこだなー。


 タンクに入っていた時から、いっぱいいっぱいだったガラキシオくんのやつが、めきめきとぐぉーって大きくなって…。


 なって…


…………あれ?


「先生!ガラキシオくんのが、ボクの食べちゃったー」

 半べそをかきながら、先生に訴える。


「ああ。大丈夫だよ、食べられた訳じゃない。

 くっついちゃったんだ。

 ほら、ここにちゃんとあるよ」


 先生が差したところを見ると、ボクのあった!


「へへっ!先生!ボクの、あったよ!」


「ん!あったね。ちゃんと観察するんだよ。みんなもね!」


 みんなで、はぁーいと返事した。


 ボクはもう一度、ボクのを見た。


 九つのちっさいのは、相変わらずおっきいのの周りをぐるぐるしてる。


 ガラキシオくんのは、エムのとも、お花みたいのやら、いろんなのとくっついた。

 


 三つ目が青くなった。



──半年後。


 観察してるのはボクだけになってしまっている。


 みんなのは展示板に展示されてから、あんまり変わらなくて、つまらないみたい。


 ボクのだって、でっかい燃えてるのの周りを、ちっさいのがくるくる回るだけでおもしろいものではないけど。


 あ、外側のやつが時々順番を代えてるのは、面白いかな?


 三つ目の青いの。


 ホントに腐っちゃうのかな?


ーーそうだ!拡大鏡を使って中を見てみよう!

 そしたら、原因が分かるかもしれない!


――――!!!!!


 えっ?!なにこれ!!

 ゆっくりと動く、黄色と緑のわさわさしたのと、それより数は少ないけど黒いうじゃうじゃしたやつ。


「先生!先生!これ!先生の言ってたやつ?うじゃうじゃしてるの!!気持ち悪い!」


「え?中、見ちゃったの?――――あー。やっぱりいつものだ。多分その黒いうじゃうじゃのせいで腐るんだよねー」


 一緒に拡大鏡を覗いた先生は、なんだか呆れてるみたい。


「ねぇ、先生!この黒いうじゃうじゃ、取っちゃったらいいんじゃないの?」


「取ってもみてもいいけどねー。その、黒いの、取っても取っても、いつの間にか増えちゃうんだよねー」


「そうなの?取れないの?」


「それが不思議とね。

 どうにもならないんだよねー。

 青いのが腐っても、おっきいのには影響ないから、成績には支障はないよ」


「そうなんだー。ならいいか」


 

──八ヶ月目。



 青いのが、青くなくなってきた。

 赤とか黒とかが混ざった感じ。


「先生。これが、腐ったってこと?」


「中はどうだい?」


「わさわさが無くなってる。黒いのがうじゃうじゃしてる」


「どうなるかなー。自然にうじゃうじゃがなくなって、わさわさがまた増えたら青くなるかもね」


「取るとダメなのに、無くなるといいの?」


「そう。無理やり取ってもダメなのに、無くなったら戻るかも知れない。戻らないかも知れない」


「わかんないの?」


「分からないんだ、ごめんね」


 ふぅん。そうなんだ。



──一年後。


 二年生がもうじき終わる。

 観察も終わり。


 展示板は、撤去される。


「みなさん、よく頑張りましたね!特にスナくんは熱心でした」


「でも、青いの腐っちゃった」


「あれは仕方ありません。

 多分どうしようもないんです」


 扉の向こうにあったボクたちのは、すっかり無くなった。


 次の二年生が、ここにまた新しいのを作るんだ。


 ボクたちは三年生になって、別の違うことをする。


 三年生でやることは、みんな教えてくれないから、まだ知らない。


 楽しみにしときなさい、て。


 空っぽの教室を見ながら、三年生でやることを考えて、わくわくしたんだ。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

気になったことがあれば、軽い気持ちで置いていってください。

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