タンクのなかのこと、(改題 ●二年生になったので、観測始めます! )
ちょっとだけ、改稿しました。
「二年生では、恒例の観察をします!」
先生が楽しそうにしてるけれど。
でもね。
みんな知ってると思うんだよ?
この観察って、ととさまもかかさまも、あんちゃんもねえちゃんも、じいちゃんもばあちゃんも、みぃんなやってきたことだもの。
話は聞いてるよ。
みんなの前には、タンクと生成キットがあるしね。
「もう、みんなノリが悪いなーみんなー頑張ろうねー!」
頑張るものなのかな?
んー。でも、毎日、日記をつけるのか。
ボク三日坊主なんだよねー。
ちゃんとやれるかな?
「では、キットの中のをタンクに入れてください。入れればいいですよぉ。失敗とかないからねぇ、思いきっていこー!」
先生がそんな風に言うもんだから、そっちでばざばさ入れて砕けてる子もいるし、こっちは変なガス発生させてる子もいるよ。
ほら、あっちでは爆発してる!
まあ、タンクの中だから大丈夫なんだけど。
「わあああああんっ!」
「あー!エムくん!大丈夫だから!落ち着いて!ほら!泣かないの!ちゃんと混ぜてあげて!」
て、先生がわたわたしてる。
エムくんが、泣きながらタンクの中をかき混ぜてる……かき混ぜすぎなのでは?
「ん!面白いのが出来ましたねー」
いいんだ。
ボクはそぉーとやりすぎたのか、何も起こらない。
いいのかな?
ちゃんと出来てるのかなー?
「ああ、これはこれで大丈夫ですよ。
スナくんらしいのが出来ます」
て、先生に言われたから大丈夫なんだろう。
そして──教室の中では、まだまだ中々のカオスが繰り広げられてるよ。
正直、一度できて"安定"してしまえば状態はそう変わらないんだって。
でも、出来かたはみんな違う。
早くて、その日。
遅くても五日以内。
同じタンクはひとつもない。
──三日目。
ボクのタンクに、大きく燃えてるのが出来た。
大きいのを中心に、いくつかのちっちゃいのが現れて、その周りを回ってる。
最初はそれぞれ、ふらふらしてあぶなっかしかったけど。
でも、だんだんと決まったように動きして。
「へぇ。中々綺麗だねー」
先生が覗いてきた。
「こんなにぐるぐる回って、ぶつからないの?」
「大丈夫だよ。通り道も安定してるみたいだし。ぶつかることは…滅多にない、と、思う。たぶん」
頼りないなー。
「同じキットを使うのに、この状態になるのはいつもひとつなんだよ。今年はスナくんのなんだねー」
ボクはきょろきょろと周りを見た。
エムくんのは、ぽやぽやしてばらばらして、すごくたくさんだし。
ガラキシオくんのはタンクからはみだしそう、にみちみちしてるし。
お花みたいのや、動物みたいのが出来てる子もいる。
エムくんのもばらばらだけど、ボクのとはなんか違う。
「こっちのちっさいのは、その年によって数は色々で──まあ、だいたい十コ前後だけど。スナくんのは九つだね」
一つの大きいのと、ちっさいの九つ……
全部で十コ!十コ?!
「先生!十コを一つずつ、観察日記つけなきゃいけないの?!」
「観察日記をつけるのは、この燃えてる大きいのだけでいいよ。ちっさいほうはしても仕方ない」
「ちっさいほうは要らないの?」
「そんなわけでもないんだけどね。
無きゃ無いで、面白いけど。
おっきいのほど変化はないから。
ただ……」
「ただ?」
「この三つ目のやつ。これね。青くなったら腐りやすいから気を……つけたところで、腐るんだけどね。まあ、見てるといいよ」
「腐っちゃうの!!どうにも出来ないの?!」
「んー…どうだろうねー。まあ、見るのは大きいのだけでいいよ」
て、言うと先生は別のタンクを見に行った。
──五日目。
みんなのタンクを、先生がひとつひとつ確認してる。
「よし。では展示板に並べましょう」
先生の指示通りにタンクを重ねて、タンクの壁を作る。
壁の手前に透明の扉をつけて、閉める。
すると、タンクの境がすーっと消えて、扉の向こう側で、広がる。
「おおー」
みんなでひとつひとつ作ってたのが、おっきなひとつになった。
でも、みんなの名前が出てるから、自分のはちゃんと分かるようになってる。
ボクのは……随分、隅っこだなー。
タンクに入っていた時から、いっぱいいっぱいだったガラキシオくんのやつが、めきめきとぐぉーって大きくなって…。
なって…
…………あれ?
「先生!ガラキシオくんのが、ボクの食べちゃったー」
半べそをかきながら、先生に訴える。
「ああ。大丈夫だよ、食べられた訳じゃない。
くっついちゃったんだ。
ほら、ここにちゃんとあるよ」
先生が差したところを見ると、ボクのあった!
「へへっ!先生!ボクの、あったよ!」
「ん!あったね。ちゃんと観察するんだよ。みんなもね!」
みんなで、はぁーいと返事した。
ボクはもう一度、ボクのを見た。
九つのちっさいのは、相変わらずおっきいのの周りをぐるぐるしてる。
ガラキシオくんのは、エムのとも、お花みたいのやら、いろんなのとくっついた。
三つ目が青くなった。
──半年後。
観察してるのはボクだけになってしまっている。
みんなのは展示板に展示されてから、あんまり変わらなくて、つまらないみたい。
ボクのだって、でっかい燃えてるのの周りを、ちっさいのがくるくる回るだけでおもしろいものではないけど。
あ、外側のやつが時々順番を代えてるのは、面白いかな?
三つ目の青いの。
ホントに腐っちゃうのかな?
ーーそうだ!拡大鏡を使って中を見てみよう!
そしたら、原因が分かるかもしれない!
――――!!!!!
えっ?!なにこれ!!
ゆっくりと動く、黄色と緑のわさわさしたのと、それより数は少ないけど黒いうじゃうじゃしたやつ。
「先生!先生!これ!先生の言ってたやつ?うじゃうじゃしてるの!!気持ち悪い!」
「え?中、見ちゃったの?――――あー。やっぱりいつものだ。多分その黒いうじゃうじゃのせいで腐るんだよねー」
一緒に拡大鏡を覗いた先生は、なんだか呆れてるみたい。
「ねぇ、先生!この黒いうじゃうじゃ、取っちゃったらいいんじゃないの?」
「取ってもみてもいいけどねー。その、黒いの、取っても取っても、いつの間にか増えちゃうんだよねー」
「そうなの?取れないの?」
「それが不思議とね。
どうにもならないんだよねー。
青いのが腐っても、おっきいのには影響ないから、成績には支障はないよ」
「そうなんだー。ならいいか」
──八ヶ月目。
青いのが、青くなくなってきた。
赤とか黒とかが混ざった感じ。
「先生。これが、腐ったってこと?」
「中はどうだい?」
「わさわさが無くなってる。黒いのがうじゃうじゃしてる」
「どうなるかなー。自然にうじゃうじゃがなくなって、わさわさがまた増えたら青くなるかもね」
「取るとダメなのに、無くなるといいの?」
「そう。無理やり取ってもダメなのに、無くなったら戻るかも知れない。戻らないかも知れない」
「わかんないの?」
「分からないんだ、ごめんね」
ふぅん。そうなんだ。
──一年後。
二年生がもうじき終わる。
観察も終わり。
展示板は、撤去される。
「みなさん、よく頑張りましたね!特にスナくんは熱心でした」
「でも、青いの腐っちゃった」
「あれは仕方ありません。
多分どうしようもないんです」
扉の向こうにあったボクたちのは、すっかり無くなった。
次の二年生が、ここにまた新しいのを作るんだ。
ボクたちは三年生になって、別の違うことをする。
三年生でやることは、みんな教えてくれないから、まだ知らない。
楽しみにしときなさい、て。
空っぽの教室を見ながら、三年生でやることを考えて、わくわくしたんだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
気になったことがあれば、軽い気持ちで置いていってください。




