表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生令嬢、もふもふと前世の社畜スキルで領地改革〜没落領地の立て直しなんてホワイトすぎて余裕です!〜  作者: こうと
第二章 ホワイト領地宣言!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/23

第20話 プロトタイプ・もふ

 三日後に迫った王都視察団の受け入れに向けて、ルベリット家の屋敷は「不夜城」と化していた。時間は11時である。

緊急事態ということでみんなの残業も許可してしまった。申し訳ない……。


「……ハンスさん、ミーナ。これが今回のおもてなしに関する『SOP(標準作業手順書)』よ。これをすべて頭に入れてちょうだい」


 私が差し出した数枚の羊皮紙。そこには、来客に対する挨拶の角度、お茶を出すタイミング、さらには「相手が失礼なことを言った時の、角の立たない論破の仕方」までが網羅されていた。


「ええと……お嬢様。この『エスカレーション(上長への報告)』というのは……?」


 ミーナが首を傾げながら指差す。彼女も最近では、私の「社畜用語」にかなり慣れてきていたが、専門用語カタカナはまだ難しいらしい。


「相手の要求がハンスさんの権限を超えた場合、即座にリーダーに投げること。いい? あなたたちの仕事は『接待』じゃなくて『営業』。相手にルベリット領の価値を見せつけて、有利な契約(融資)を引き出すのがゴールよ」


「は、はい! 承知いたしました、お嬢様!」


 ミーナが軍隊のような勢いで敬礼する。……うん、教育(OJT)は順調ね。


「さて。……最後に、今回の『防衛セキュリティ』の要。――クロ、ちょっとこっちに来て」


 ソファで高い高いをされていたクロが、面倒くさそうに私の方を見た。


「なんだ、お前。俺は今、ミーナに腹の毛を整えてもらっている最中なんだ。仕事の話なら後にしろ」


「ダメよ、これはあなたの『福利厚生』にも関わる大事なことなんだから」


 私は、部屋の隅に設置した「奇妙な装置」のスイッチを入れた。

 それは、カイルと共同開発した魔導具一号機の応用編。石柱に数種類のブラシを仕込み、私の魔法回路を学習させた【魔導自動ブラッシング機:プロトタイプ・モフ】だ。


「……なんだ、その奇怪な石の棒は。俺を攻撃するつもりか?」


「ふふ、まあ見てなさい。……起動ブート!」


 魔法陣が展開されると、石柱に付いたブラシが、クロの魔力の周波数に合わせて「超高速振動」を始めた。私が一ヶ月の深夜残業で身につけた『指先の魔力テクニック』を、プログラムとして完全に再現した動きだ。


「おい、やめ……んっ!? ……ぁ…………あぁぁ…………っ!!」


 クロの金色の瞳が、一瞬でとろんと蕩けた。

 石柱にそっと体を擦り付けた瞬間、機械のブラシが、クロが一番痒いところに「一秒間に数千回の往復デバッグ」を叩き込む。


「なんだこれ……!! お前の指も凄いが、この機械……無心で、延々と、俺の魂を削り取ってくるぞ…………! あ、あう…………ぅ…………」


 伝説の厄災獣が、ベッドの上で液体のように溶けていく。

 

「クロ。その機械を今後も使いたければ、視察団が来た時にしっかりと『威圧パトロール』をしなさい。もし、視察団が失礼なことをしたら、少しだけ殺気を見せていいわ。……それができたら、このブラッシング機を最新型(バージョン2)にアップグレードしてあげる」


「…………。……安い、安い御用だ…………。俺を誰だと思っている…………。伝説の……。……ああっ、そこ、そこだ……! もっと強く……!!」


 クロが完全に骨抜きにされている。

 それと同時に、クロから漏れ出した膨大な魔力が、私の設計した「おもてなしの結界」と同期し始めた。

 

 屋敷全体を包み込む、温かくて、けれど外部からの悪意を一切通さない、世界一ホワイト(防衛力が高い)な空間。


「(……よし。セキュリティパッチは最新版を適用済み。おもてなしのマニュアルも配布完了。……あとは、相手がどんな『バグ』を持ってくるか、楽しみね)」


 私は膝の上で、溶けた状態のクロを軽く叩きながら、窓の外の月を見つめた。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ