第90話 図らずも集結!? 煌めく展望テラスと、魔王軍三組のトリプルデート
一週間の家計簿を締め終えて、ふう、と一息ついた夜。
テレビの中では、どこか浮き足立ったような明るい声で、週末のお出かけ特集が流れていた。
「――今週のおすすめデートスポットは、こちら! 都心から少し足を伸ばして楽しめる、季節限定のイルミネーションと展望テラスです!」
画面いっぱいに広がる光の海に、私は思わず目を奪われる。
「わぁ……きれい」
「ほう。人間界の“デート”というものは、光の強さを競い合う祭りなのか」
隣で腕を組みながら、あっくんが真剣な顔でうなずく。
解釈はちょっとズレてるけど、そこがまた可愛い。
「ね、次の休み、ここに行ってみない?」
「余と、か?」
「うん。せっかく恋人になったんだし」
そう言うと、あっくんは一瞬だけ目を見開いてから、満足そうに深く頷いた。
「……当然だ。余が、みのりを完璧にエスコートしよう」
◇
そうして迎えた、デート当日。
テレビで見た通りの展望スポットに到着すると、そこはすでにカップルや家族連れでいっぱいだった。
「すごい……本当に街が光ってる……」
「人の数も、想定以上だな。だが案ずるな、みのりが迷子になることのないようエスコートしよう」
「ならないよ、子供じゃないんだから!」
軽く言い合いながら、入口へ向かう。
――と、そのときだった。
「あれ……?」
少し先で、見覚えのある金髪が揺れた。
「……ルカくん?」
「えっ……みのりさん?」
振り返ったルカくんの隣には、少しお洒落をした真帆さん。
二人とも、鉢合わせると思っていなかったのか、気まずそうに固まった。
「も、もしかして……デート、ですか?」
「うん。そっちは……」
「はい……その……」
言葉を濁しつつも、真帆さんが頬を染めて小さく笑う。
どこからどう見ても、完全にデートだ。
――と、さらに。
「えっ、みのり!?」
「絵莉!?」
反対側から聞こえた声に振り向くと、そこには絵莉とリュカくん。
手こそ繋いでいないけれど、寄り添う二人の距離感は完全に「それ」だった。
「ちょ、ちょっと待って。なんで全員ここにいるのよ」
「テレビで見て、つい……。絵莉さんが、行ってみたいと仰ったので……奇遇ですね」
リュカくんが困ったように笑い、あっくんが腕を組んで低く唸る。
「……これは、偶然か?」
「たぶん……うん、テレビの影響力、すごすぎ」
結果。
まさかの、トリプルデートが成立してしまった。
◇
展望テラスでは、三組それぞれが絶妙な距離感で並ぶことになった。
「わ、わぁ……高い……。でも、すごく綺麗ですね」
「大丈夫です、真帆さん。僕がそばにいます、絶対に離しません」
ルカくんは、魔王の側近らしい揺るぎない誠実さで、真帆さんの隣を死守している。
「リュカくん、あれ見て! ハート型だよ!」
「本当ですね……あ、絵莉さん、危ないですから身を乗り出しすぎないでください」
絵莉は天真爛漫に楽しんでいるし、リュカくんは終始顔を真っ赤にして彼女の裾を掴んでいる。
「……みのり。余は、こういう場では何をすればよいのだ」
「普通に、一緒に夜景を楽しめばいいの」
「それが一番、余には難易度が高いのだが」
ぼやきつつも、あっくんは私の肩を「余のものだ」と言わんばかりに引き寄せた。
その堂々とした仕草に、他の二組が一斉に視線を逸らす。
なんだか、こっちが気恥ずかしい。
でも。
三組分の笑い声と、きらめく夜景の光に包まれて。
私は思った。
恋人になってからの世界は、想像以上ににぎやかで。
ちょっと騒がしくて。
――でも、すごく、愛おしい。
「ね、あっくん」
「どうした、みのり」
「たまには……こういう賑やかなデートも、悪くないかもね」
「……余は、みのりと二人きりが良かったがな」
そう言いながらも、繋いだ手はしっかり離さない。
その大きな手の温もりに、私はこっそり、幸せな笑みをこぼした。




