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異世界魔王とOLの日常が想像以上にドタバタで困る  作者: 白月つむぎ


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第59話 帰還したと思ったら今度は日本が危機!? 魔王、責任を取るってよ

 ふわり、と視界が揺れた。

 気づけばそこは、いつも見慣れた私の部屋――日本。蛍光灯の白い光がやけにまぶしい。


「……か、帰ってきた……!? 本当に……!」


「うむ……こやつの手触り、懐かしいな」


 隣では、かつて私が「クリスマスのプレゼントに」と買って渡した抱き枕――たぬ助――を、あっくんが嬉しそうに撫でていた。久しぶりの再会らしく、指先にそっと力がこもっている。


 リュカくんはそっと胸に手を当て、ほっとしたように微笑む。


「……なんだか落ち着く匂いです……」


 ルカくんは感極まったように頬を緩めた。


「無事に帰ってこられてよかったですね!」


 タヌロフはフローリングにぺたんと座り込み、尻尾をぱたぱた揺らして叫ぶ。


「タヌロフ、日本に帰ってきたたぬーっ!」


 父は娘の姿を見つめながら、抑えていた感情があふれたように声を震わせた。


「本当に……みのり、無事でよかった……!」


 母は涙をぬぐいながら、安心のため息をつく。


「よかったよかった……どぎゃんすっとかと思っとったんだからね!」


 みんな思わず笑顔になり、顔を見合わせた。


 胸がいっぱいになって、その場でへたりこみそうになる。

 ――でも。


「……どうしよ……私、数日間行方不明だったし……仕事も無断欠勤だし……絶対怒られる……!」


 現実が一気に押し寄せてきた瞬間、足元がぐらついた。


「まぁ落ち着きなよ。焦ったって、起きてしもうたことはどうしようもなかけん。ほら、テレビでも見んね!」


 母がリモコンをぽち、と押した。


「次のニュースです。本日未明、また都内の住宅街で、謎の生物が目撃されたとの事です」


「え……?」


 私は、思わず目を丸くする。


「現場から中継です」


 画面に映ったのは、青いゼリー状の物体。


「これは……!」


 父が身を乗り出して驚く。


「スライムたぬ!」


「スライム!? なんで!? 魔物!??」


 背筋に嫌な予感が走る。


 画面を凝視したあっくんが、低く呟く。


「ゲートを開いた際に、やはり魔物が巻き込まれていたのか……」


 隣でリュカくんが肩を震わせる。


「ぼ、僕が異世界とゲートを繋いじゃったから……」


「いや、あれはあれですごく助かったし……! リュカくんのせいじゃないよ……!」


 ルカくんはテレビの前に立ち尽くし、真剣な表情で続報を待っていた。


「被害状況は……」


 テレビのキャスターが淡々と読み上げる。


「続いての情報です。その他にも大型の蛾に似た生物や、赤い発光体のような目を持つうさぎに類似した生き物の目撃情報が相次いでいます。今のところ、いずれの個体からも攻撃行動は確認されていませんが、周辺住民の皆さまは引き続きご注意ください」


 私は胸を撫で下ろした。


「よかった……とりあえずケガ人はいないみたい」


「見た感じ、低級魔族しかいないみたいたぬね」


「……だが、厄介だな」


 あっくんの眉間に深い皺が刻まれる。


「魔物は……魔力の濃い環境に触れると、本能的に繁殖しようとするのだ。異世界の魔力がゲートから漏れ、この世界にも流れ込んでしまったのだろう……」


「つまり、あっちの生き物がこっちにきて、勝手に増えるってこと……?」


「そうなる」


 問いかける私の声に、あっくんは静かにうなずいた。

 険しくなった表情は、事態の重さをしっかりと受け止めている証のようだった。


 父が、


「この世界の生態系にも影響が出るかもな……」


 と低くつぶやく。


 その言葉に、私は思わず肩を震わせた。


「どどど、どうすれば……!」


 不安が一気に口からこぼれる。

 その横で、あっくんは深く視線を落とした。


「これは、余の責任である……」


 静かに項垂れたあと、彼はゆっくりと顔を上げた。

 銀髪のポニーテールがふわりと揺れ、決意の宿った瞳がテレビ画面のスライムを鋭く射抜く。


「責任もって、余が討伐しよう」


 あっくんの揺るぎない声音に、思わず胸が熱くなる。


「……あっくん……!」


「そなたの世界を守るのは、魔王である余の務めよ。任せておけ、みのり」


 ――帰ってきたばかりなのに、また波乱の予感。


 でも、大丈夫。

 この仲間たちと一緒なら、絶対に乗り越えられる。

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