第57話 世界の運命を左右するのは父の技術力!? 大プロジェクト、始動!
勇者城の地下に広がる古い工房。
石造りの壁に、魔力炉の赤い光が淡く反射している。
普段は修繕具や兵器が置いてあるだけの場所が、いまは世界を救うための特別区画と化していた。
「この世界は魔法が中心で、工業がほとんど発展しとらんとですねぇ……」
父が図面と魔法石を並べながら唸る。
「ええ。魔力炉はありますが、“構造計算”という概念がないのです」
リオルくんは図面をのぞき込みながら応える。
「魔力の流れは感覚的に把握するのが常識で……こうして数値化されると新鮮ですね」
「けん、爆発せんように作るには、こげんな制御回路がいるとですよ。ほら、この“魔力圧縮層”の厚さは均等にせんと……」
「なるほど……魔力の偏流を抑える構造……! これは理にかなっています」
ふたりは意気投合し、図面に魔法陣と回路図を並べながら作業を進める。
その横で――
「タヌロフ、ネジ締め担当たぬ!」
タヌロフが胸を張って工具を構えた。
「あ、そこは慎重にしてくれよ」
「たぬ! 任せるたぬ!」
◇
「では、初期試作品――“制御核・零号”の魔力流し込みを行う」
リオルくんが魔力を注ぐ。
装置がぶうううんと低く唸り、魔力結晶が淡く光り――
「お、順調みたいですねぇ……」
「ですね。あとは安定すれ――」
ボンッ!!
「たぬぅぅぅぅぅぅぅ!?」
爆発とともに、黒焦げのタヌロフが宙を飛んだ。
表面が炭のように真っ黒で、目だけが白く残っている。
「タヌロフ!? だ、大丈夫!?」
みのりが駆け寄る。
「だいじょうぶ……タヌロフは……不滅たぬ……」
ぐらぐらしながら親指を立てるタヌロフ。
リオルくんが装置を確認し、眉を寄せた。
「魔力保持層に負荷がかかりすぎました……精密な調整が必要ですね」
「そげんらしいね。ほら、ここ……“魔力流束”の逃げ道が足りとらんけん」
「な、なるほど……!!」
魔法理論と機械理論が混ざり合っていく。
ふたりは再び図面へと向き直った。
◇
三日三晩。
父とリオルくんは仮眠を挟みながらひたすら調整し、あっくんは古代魔法の断片を提供し、タヌロフはまた黒焦げになりながらも奮闘し、ルカくんとリュカくんは材料の運搬と補給を続け――
ついに。
「……できた」
父が呟いた。
そこに鎮座していたのは、淡い白銀の光を循環させる球体――
“魔力制御核・第一号”
リオルくんがそっと手を触れ、魔力を流し込む。
安定。
波乱なし。
魔力の揺らぎも起きない。
「成功……です」
リオルくんの声が震えた。
「これで、世界はもうアツシくんに依存せんで済むとよ」
父の言葉に、私は息を呑む。
そして――
あっくんは静かに瞳を閉じた。
「これで……余は、みのりと共に帰ることができるのか」
その声は、淡く、どこまでも優しく響いていた。




