第52話 勇者軍、まさかの迷走中!? 朝焼けの森で見つけた違和感
朝の光が森の葉を透かし、薄金色の道をつくっていた。
お腹を満たした一行は、勇者軍の動きを探るため再び歩き出した。
「勇者の城は北方だが……その前に情報を集めねばなるまい」
あっくんが周囲に視線を巡らせる。
ルカくんは、眉間に皺を寄せて険しい顔をしていた。
どうにも気になることがあるらしい。
「……そういえば」
「どうかしたの、ルカくん?」
「勇者軍の行動が、どうにも一貫していない気がするんです。魔法使用者は即刻処刑――それが勇者リオルの明確な方針のはずですが……」
ルカくんが、思案するように口元へ手を添えて続ける。
「この森に来る途中、風に紛れて聞こえてきた人々の噂話があります。勇者軍は、地域ごとに態度が揺れているそうで……同じ“魔法使用者”でも、冷徹に処断する場所もあれば、妙に見逃されている場所もあるらしいんです」
あっくんが眉を寄せた。
「内部の混乱……というには、少し規模が大きすぎるな。まるで、勇者以外の何者かが“裏から指示を加えている”かのようだ」
誰かの介入――しかし、誰なのかまるで分からない。
みのりは不安を押し殺してたずねた。
「まさか……魔族とか?」
「いや、魔族ならばもっと露骨に魔力の瘴痕を撒き散らす。これは……人の情念が介入しておる気配だ」
「……何者かが、勇者軍の判断に影響を与えているということですか?」
「味方……なのかな?」
「断言はできぬ。ただ――放置すれば状況がさらに読めなくなる。急ぎ勇者の本拠へ向かうぞ」
そのとき。
「……妻……は大丈夫やろか……」
父がふと、空を見上げて呟いた。
「大丈夫たぬ! みのりのお母さんは最強たぬ! あっちはあっちで頑張ってるたぬ!」
「……そうであってほしかねぇ……」
――まだ誰も気づいていなかった。
勇者軍の“揺らぎ”と父の心配が、ゆっくりと一本の線に近づきつつあることに。




