第4話 同居生活の始まり
翌朝、私は目を覚ますと同時にリビングのコタツを見た。
昨夜、床で寝ると言い張ったあっくんをなんとかコタツに押し込んだのだ。
だが――。
「……ちょ、ちょっと待って、なんで裸!?」
黒い魔王コートは、魔力が尽きたせいで完全に解除されて消えていた。
200センチ超えの男がコタツで無防備に寝ている光景は、朝から刺激が強すぎる。
私は慌てて自分の部屋に走り、適当に大きめの服をひっつかんで戻る。
「これ着て! とりあえず!」
「む……? 朝か……?」
寝起きの声がやたら低い。
そして、私のシャツとスウェットをあっくんが着ると――
パ ッ ツ パ ツ。
肩幅がはちきれそうで、胸板でボタンが悲鳴をあげている。
スウェットは太ももで限界を迎え、裾は七分丈にしかならない。
「……動くと破れそうだな」
「わかってる! 見ればわかる!!」
私は絶望しながらスマホを開いた。
深夜ドンクにもなかったんだから、ネットに頼るしかない。
検索ワードは「筋肉」「大きいサイズ」「高身長」「服」「男性」
そんなワードを組み合わせて出てきたのは、筋トレが趣味のビジネスマン向けブランドだった。
モデルがだいたい胸囲110センチメートル以上の人ばかりで、妙に頼もしい。
「……これ、いけるかも」
ただし値段を見た瞬間、私の心はひび割れた。
ジャケットとパンツのセットアップで5万円。
「ご、5万……!?」
「みのり、どうした?」
「いや、大丈夫……! 大丈夫だけど……! 給料日まで、私……もやし生活かもしれない……」
でもこのままパツパツあっくんを外に出すわけにはいかない。
私は覚悟を決めて購入ボタンを押した。
――そして。
届くまでの数日間、私はあっくんを見上げて言った。
「ねぇ、あっくん。うち、貧乏だから……同居するなら、家事して?」
「家事……とは?」
「掃除とか、洗濯とか、料理とか……生活に必要なこと!」
あっくんは腕を組み、真剣な顔でうなずいた。
「ふむ。それがこの世界での労働か。余は魔王であったが……よかろう。やってみせよう」
――こうして、私は家賃も光熱費も払えない超巨大魔王を家に住まわせ、家事全般を魔王に任せるという奇妙な生活を始めることになった。
(もやし生活と魔王と同居生活、どっちが厳しいんだろう……)




