第46話 世界の命運より先に、まずはごはん!
「魔法が使えないとなると、転移魔法も使えんな……」
あっくんが腕を組んでうなった。
魔力の封印。魔法の禁止。勇者リオルが治める世界では、ちょっとでも魔法の気配がすれば即アウトという理不尽ルールだ。
「どうしたものか……このままでは皆の居場所にも辿り着けん」
銀髪のポニーテールがしゅん、と垂れた。
そのとき――
ぐぅぅぅぅ……!
空にまで響きそうな勢いで、みのりのお腹が鳴った。
「わわ! ちょ、ちょっと……! 今のは私のじゃないから!」
「みのりの腹か……。まさか異世界転移の最初の強敵が、空腹とはな」
あっくんが深刻そうに頷く。
みのりは頬を赤らめ、ぽつりと言った。
「そういえば、ごはん食べる暇なかった……」
「ならば、何か食べる場所を探すか。みのりの住む世界に転移する前から持っていたこちらの世界の通貨がある。遠慮なく食え」
あっくんが胸を張り、街のほうを指差した。
◇
二人が入ったのは賑やかな酒場だった。
木の梁がむき出しの天井、どこか懐かしいランタンの光。
店員が持ってきたのは、異世界特有の食材を使った料理だった。
「えっ……なにこれ!? 透明のスープなのに、味が濃い……! この丸いの、ぷるんぷるんしてる!」
「スライムの煮凝りだな」
「スライム!? 食べていいやつなんだ……!」
次に出てきた皿には、香ばしく焼かれた肉。
見た目はほぼ鶏肉なのに、食べると柑橘のような香りがふわっと広がる。
「おいし……! あっくん、これ日本で売れるよ!」
みのりは幸せそうに笑ったが、ふいに食事の手を止める。
「……お母さんとお父さん……きっとお金持ってないはずだし、お腹空かせてるよね……。早く探さないと」
みのりがテーブルの上でぎゅっと拳を握る。
その横顔を見て、あっくんはすっと立ち上がった。
「では行こう。次の街を目指すぞ。みのりの家族も、ルカもタヌロフもリュカも――必ず見つける」
「うん……!」
二人は夕暮れの街道へ歩き出す。
異世界の空は、淡い二つの月が昇り始めていた。




