第44話 異世界ゲート、開いちゃいました!
母の興奮は、もはや止まる気配がなかった。
「アツシさん!! もういっそ、式は海外で挙げちゃう!? ほら最近はハワイ挙式とか人気らしかろ!? 外国行くならちょうどよかやん!!」
「お母さん落ち着いて!! 私たち結婚しないから!!」
「恥ずかしがらんでもよかと!! 母ちゃん、準備なら手伝うけん!! ドレスも和装もどっちも着ればよかやん!? 二回挙式でも――」
その瞬間だった。
みのりのバッグの中――
“魔力小瓶”たちが、カチ、カチ、と不穏に震えだした。
その瞬間――
裏山の“裂け目”が轟音とともに発光した。
眩い光がリビングまで差し込み、家の床がわずかに震えた。
「いけない! ゲートが開きかけてる!」
ルカくんが飛び出し、髪を揺らしながら叫ぶ。
「なんね!? 眩しか~!? UFOでも来たと!?」
お母さんはすでに状況理解を放棄していた。
タヌロフが窓の外を睨み、耳を立てる。
「あの魔力の流れ……まずい予感しかしないたぬ!」
あっくんは、黄金の瞳を細めた。
「……余の想定を超えておる。集めた“気持ち”が、裂け目を活性化させてしまったか」
彼はすぐに決断した。
「ルカ、タヌロフ。余らは森へ向かうぞ。みのりよ、両親と共にここに残――」
言い終わるより早く、
どおん!!
裏山側から、光柱が天へと突き立った。
地鳴りとともに、吸い込むような風が吹き荒れる。
「アツシさん!? ちょっと待ちなさい! 危なかよ!!」
母が叫び、玄関へ走る。
「お、お母さん!? ちょっ……!!」
風は強まり、まるで巨大な口が全員を飲み込もうとしているかのようだ。
「みのり! 下がれ!」
あっくんが腕を伸ばし、みのりを抱き寄せる。
「アークロン様! ゲートの引力が……!!」
ルカくんも踏ん張るが、足が滑る。
そして次の瞬間――
“裂け目”の光が爆ぜ、渦が森一帯に広がった。
「ひゃあああああああ!!??」
「なんねこれぇええ!!」
「なんだいこれは……!?」
「タヌロフ飛んでるたぬぅうう!!」
「きゃーーーーー!!」
「余を掴め、みのり!!」
叫び声が重なる間にも、身体はぐいぐいと森の奥へ吸い寄せられる。
そして、裂け目の中心で――
全員まとめて光に呑み込まれた。
視界が反転し、世界が裏返るような感覚。
強烈な風と、耳鳴りと、誰かの手の感触。
次に目を開けたときには――
もう、元の世界ではなかった。




