第43話 “気持ち”採取ミッション:みのりの両親編②
翌朝。
みのりの部屋のチャイムが、爆撃のような勢いで連打された。
「みのりぃぃーー!! 来たばいーー!!」
「……は、早い……!」
みのりが玄関を開けると、母は旅行バッグを抱え、父はその後ろで穏やかに手を挙げた。
「おはよう、みのり」
「お父さん……! お母さん……!」
そして――母の視線は、部屋の奥で待っていたあっくんにビタッと吸い寄せられた。
「あっ……アツシさん!!!」
母の両目がキラーンと輝いた。
まるで“推し”を生で見つけたファンのように。
「会いたかったーーーっ!! 母ちゃん、今日までずっと心臓バクバクで眠れんかったとよ!!」
「み、みのりの母よ……落ち着くがよい」
「落ち着けるわけなかろ!! アツシさんが外国行くって聞いて、気が狂いそうやったと!!」
母は涙目であっくんの手をガシッと握る。
「アツシさん……! 娘のこと……ずっと大事にしてくれて……ありがとう!! 外国に行っても……みのりのことよろしくね……!!」
「い、いや、余とみのりは――」
「分かっとる!! 恥ずかしゅうて言えんのやろ!? でも母ちゃん、全部お見通しやけん!!」
「いや違……」
その瞬間、みのりは背中のポケットの中――小瓶が微かに震えるのを感じた。
(……え? ちょっと、もう反応してる……?)
母はさらに続ける。
「アツシさんが来てから、みのりずっと楽しそうやった!! こん子、前よりずっと明るくなったんよ!! 母ちゃん、それ見て、なんか胸が熱うなって……“ああ、この子はこの人と一緒におって幸せなんやなあ”って……」
小瓶が、ぼわっ……と暖かく光りはじめた。
(これ……魔力に変換されてる……!)
「だから……お願いやけん……外国行っても元気でね……! いつかまたちゃんと……みのりのこと迎えにきてね……!!」
「迎えに!? 待ってお母さん!? 本当に違うから!?」
みのりが叫んでも止まらない。
母の感情は、もう噴火寸前の火山のようだった。
「母ちゃん、アンタたちが結婚する日……夢で何回も見たんよ!! みのりが白無垢で、アツシさんは紋付き袴で……!」
「白無垢!? お母さんほんとに待って!!」
「よか結婚式やった……!」
「だからまだ結婚しないって言ってるでしょーーっ!!」
その瞬間、みのりのポケットの中で――
ぱんっ!!
「――え!? ちょ、今の音なに!?」
小瓶が小さく爆ぜるような音を立て、中には溢れんばかりの金色の光がぎゅうぎゅうに詰まっていた。
「み、みのりさん!」
物陰に隠れていたルカくんが小声で叫ぶ。
「すごい魔力量です……! これは……母上の“娘を想う気持ち”と“アークロン様への信頼”が混ざって……!」
「あれは爆発するたぬ!? タヌロフ、ちょっと怖いたぬ!!」
「なんであんなに魔力高いの!? お母さんただの一般人なのに!!」
「“母の愛”は……時に災害レベルです……」
部屋の真ん中で母はさらに加速する。
「アツシさーーーん!! みのりのこと、死ぬまでよろしく頼むけんねーーー!!」
「だから違うと申しておる……!」
みのりの手の中、小瓶の光はもうパンパンに膨らんでいた。




