第39話 “気持ち”採取ミッション:倉田絵莉編
翌朝。
会社へ向かう電車の中で、私はコートのポケットの中身をそっと握りしめた。
小さな小瓶――魔力を集めるための、大切な道具。
(これ……会社で本当に集められるのかな)
昨日の夜、コタツ会議で決まった作戦はこうだ。
――まずは絵莉の“みのりへの想い”から生まれる魔力を、自然な形で小瓶に集める。
絵莉は私のことを大切に思ってくれている。
だから今日は“普通に会話して、自然に感情を揺らしてみる”というミッションだ。
◇
午前の業務が一段落したころ。
「みのり〜! 今日お昼一緒できる?」
明るい声が私のデスクに飛んできた。
倉田絵莉。学生の頃からの友人で、今は同じ会社に勤める同僚。
「うん、ちょうど声かけようと思ってた」
(いい感じ……自然な流れ……!)
ポケットの中の小瓶が、少しだけ暖かくなる気がした。
◇
社食の隅の席、窓際。
絵莉はエビフライを箸で持ち上げながら言う。
「でね、この前会ったあっくんだっけ? めっちゃ優しいし、みのりのこと愛してるって感じするよね」
「えっ……そんなことないよ」
(落ち着け……! 自然に、自然に……)
ポケットの小瓶が、かすかに光の粒を揺らす。
「いやいや、あの人どう見ても“結婚候補”でしょ。なんなら両親への挨拶まで済ませたんでしょ?」
「う……うん、まあ……」
「ほらー! 言ったじゃん! みのりは最高に良い子なんだから、良い人と結ばれないと損だよ! 幸せになってもらわないと」
絵莉の声は明るく、あたたかい。
心から私を応援してくれる響き。
「みのり、最近すごく楽しそうだし……なんか安心したよ。誰かに大事にされてるってわかると、私まで嬉しくなるの」
(……そんな風に言ってくれて、ありがとう)
その瞬間、胸の奥がじんと温かくなるのと同時に――
小瓶の内側が、静かに光った。




