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異世界魔王とOLの日常が想像以上にドタバタで困る  作者: 白月つむぎ


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第33話 異世界ズ、スカウトされる

 鍵を回してドアを開けた瞬間、私は一瞬で思考を停止した。


「みのり! 余は“班長補佐”なる役職を授かったぞ!」


「みのりさん……僕は“新人委員”だそうです……」


 あっくんとルカくんが、なぜか町内会の法被を着て立っていた。


(え……なにこれ……幻覚?)


 わけのわからない光景に、私は持っていた買い物袋を落としそうになった。


「ちょ、ちょっと二人とも……その格好、なに?」


「スカウトされたのだ。余の威風、町の平和に役立てたいと言われてな」


 誇らしげに胸を張る魔王。

 その法被の背中には 『第三町内会』 と堂々プリントされている。


「僕は……断れませんでした……。突然“あなた若いし助かるわ〜!”って囲まれて……」


 ルカくんは法被の袖をつまみながらしょんぼりしていた。


 私は額を押さえる。


「……一体、どうしてこうなったの?」


「昼間、アパートの前を掃除しておっただけなのだがな」


 と、あっくん。


「そうしたら近所のおばさま方が通って……」


 と、ルカくん。


 二人は顔を見合わせ、同時に言った。


「『あらまあ! なんてイケメンなの! 町内会手伝ってくれない?』とな」


「逃げ道がありませんでした……」


 と、ルカくんが遠い目をする。


 私は胃がキュッとなった。


(スーパーに続き、今度は町内会にまで……! 年上女性に人気出すぎでしょ……この二人……)


 そのとき――タヌロフが布団の中からひょこっと顔を出す。


「タヌロフもお手伝いしたかったたぬ……」


「絶対やめて!!!」


 全力で制止する。

 タヌロフが町内会に参加した瞬間、この街は終わる。


 私は深呼吸して二人に向き直った。


「で……今日は何をしてきたの?」


「ゴミ集積所の清掃をな」


「あと、防犯パトロールの説明会……」


「“夜の見回り頼むわね〜アツシくん♡”と言われたぞ」


 おばさん方にもアツシって偽名で通してるんだ。


「みのり。余は人気があるようだ」


 なぜか少し得意げに言う魔王。


「みのりさん……僕……町内会の人たち、迫力があるし話も聞いてくれなくて怖いです……」


 ルカくんはというと、逆に青ざめている。


「まあ……うちの地域は元気な人多いから」


 ――そのとき。


 ピンポーン!


 玄関のチャイムが鳴り響く。


「えっ……まさか……」


 私が硬直する中、ドアの向こうから声がした。


「アツシく〜ん! さっき渡し忘れた書類あるのよ〜!」


 町内会のおばちゃんだ。


 あっくんがスタスタと歩き、ためらいなくドアを開ける。


「ご苦労。何か用か?」


 ドアが開いた瞬間――


「……っ!」


 おばちゃんが一瞬で固まった。


 玄関の白い光を受けて立つ、長身筋骨隆々容姿端麗銀髪ポニーテール姿の魔王。

 法被姿なのに異様に絵になる美形。

 そして発される妙に気品ある声音。


 無理もない。

 人間界における“想像上のイケメン”を軽く越えている。


 おばちゃんは胸に手を当て、


「ちょ、ちょっと……顔が良すぎて言葉が出ないわ……!」


 膝をぷるぷる震わせながら動揺している。


「渡し忘れた書類……これ……ね……!  暇なとき書いてくれればいいから……!」


「ふむ。預かろう」


 あっくんが淡々と書類を受け取り、軽く頷く。

 そのだけの動作だけで、おばちゃんは耳まで真っ赤になった。


「あ、あ、あと……夜の防犯パトロール、アツシくんが来てくれるなら……おばちゃん、元気出るわ〜……!」


「任せよ。余はみのりの住まう地を守る」


「……かっこよ〜〜!!」


 おばちゃんがその場で膝に手をつき、震えた。


 あまりの展開に、私はキッチンから飛び出す。


「ちょ、ちょっと待ってください! あっくんは引っ越してきたばかりでまたこの地域に慣れてないから、その……無理させないで……!」


 おばちゃんは私を見て、ぱっと表情を輝かせた。


「あらあら〜! みのりちゃん、あんたも幸せだねぇ〜! こんな良い男と一緒にいるなんて!!」


「い、いや、その、まだ……」


 言いかけたけど止めた。

 説明すればするほど混乱が増えるだけだ。


 結局おばちゃんは


「じゃあ二人とも、明日の班会でね〜っ!!」


 とテンション高く帰っていった。


 ドアが閉まると同時に私は崩れ落ちる。


「……はぁぁぁ……。なんでこうなるの……」


 あっくんは不思議そうに首をかしげた。


「みのり。余は何かおかしなことをしたか?」


「いや……ただ立ってただけなんだけどね……」


 ルカくんは法被を握りしめて小さくつぶやく。


「みのりさん……町内会って……怖いところですね……」


「違う意味でね……!!」


 魔王が町内会に入るなら……地域の平穏は守られても、私の平穏はもはや望めないだろう。

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