第15話 魔王、久々に加減をミスって我が家がまた壊れる
仕事を終えて帰宅したみのりが玄関を開けると、まず目に入ったのは――床に落ちた細かな木くず。そして、不自然に傾いた室内ドア。
嫌な予感がして靴を脱ぐと、リビングから気まずそうに顔を出すあっくん。
「……みのり。すまぬ。少々、手元を誤った」
聞けば、掃除をしていたらクイックルワイパー(の柄)が途中で折れ、バランスを崩した際に扉を勢いよく押してしまい、ドアの蝶番が吹き飛んだらしい。
さらに追い打ちで、みのりのためにと料理もしてくれていたのだが、フライパンが彼の魔力に反応して高温になり、そのまま底が抜けてキッチンが若干焦げた。
怒りたい気持ちは山ほどあるのに、しょんぼり肩を落としたあっくんを見ると強く言えないみのり。
「……あっくん。ほんとに、気をつけてね。火事もなかったしケガしなかったならよかったよ」
そう言うと、あっくんは深々と頭を下げる。
「余は、みのりの世界を壊すつもりなど毛頭ない。ただ……慣れぬのだ。力の加減が」
しょげる魔王とため息のOL。
修理業者を呼ばなきゃ……とため息をつくみのりだが、その胸には、なぜか怒りとは少し違う複雑な気持ちが渦巻く。
そして、ふとよぎる同僚・倉田絵莉の言葉。
――あんた男見る目ないんだから、気をつけなさいよ。
……ほんとにそうだよ、絵莉。
けれど、みのりは思う。
“この魔王に限っては、ただのドジな同居人で見捨てる気にはなれないんだよなぁ” と。
壊れたドアを見上げながら、苦笑するみのりだった。




