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異世界魔王とOLの日常が想像以上にドタバタで困る  作者: 白月つむぎ


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第102話 魔王の休日――水平線の誓いと、見守る者たち

 二日酔いの騒動も落ち着き、二人は仲直りの印として、冬の澄んだ空気を感じる海浜公園へと足を運んでいた。


 潮風が頬をなでる。あっくんは、みのりが寒くないよう彼女の手を自分のコートのポケットに入れ、しっかりと繋いでいた。


「……気分はどうだ、みのり。頭痛はもう残っておらぬか?」


「うん、もう大丈夫。あっくんがくれたドリンクのおかげかな」


 みのりが微笑むと、あっくんは少しだけ面映ゆそうに視線を海へと向けた。


「……今朝は見苦しい姿を見せた。余としたことが、みのりを独占したいという私欲に駆られ、魔王としての器を忘れておった……だが、改めて理解したぞ。余が真に守るべきは、この手の温もりなのだと」


 あっくんは立ち止まり、みのりの方を向き直った。


「みのり。余は、世界を征服するよりも難しい任務を自分に課すことにした……それは、生涯、みのりの隣で貴女を笑わせ続けることだ。これが余の、新たなる『建国』であると思え」


「……ふふ、壮大な目標だね。でも、あっくんなら、きっと成し遂げられるよ」


 みのりが彼を頼もしそうに見上げると、あっくんは満足げに鼻を鳴らし、彼女の額にそっと唇を落とした。

 二人の間には、喧嘩を乗り越えたことで以前よりも深く、揺るぎない信頼が流れていた。


「……あっくん、もう離さないでね」


 みのりが甘えるように彼の腕にすり寄ると、あっくんは一瞬虚を突かれたような顔をした後、愛おしさが決壊したように彼女を強く抱き寄せた。

 厚いコート越しでも伝わる、激しく、それでいて確かな鼓動。


「……離さぬ。余の許可なく、余の視界から消えることも許さぬ……みのりが他者の腕にいたあの瞬間の絶望は、世界を失うよりも恐ろしかった……二度と、余以外の熱に触れようなどと思うな」


 耳元で響く、独占欲に満ちた熱い囁き。

 あっくんはみのりの首筋に顔を埋め、深くその香りを吸い込んだ。

 それは、単なる魔王としての傲慢ではなく、愛する女性を失いたくないという、一人の男としての切実な祈りのようだった。


「わかった……約束する。私はずっと、あっくんだけのものだよ」


 その言葉を聞いた瞬間、あっくんの腕にさらに力がこもる。

 沈みゆく夕日が二人の影を長く引き延ばし、黄金色の光が二人を優しく包み込んだ。


 そんな、甘い毒ですら溶かしてしまいそうなほどの光景を、少し離れた松林の陰から三つの影がじっと見守っていた。


「……ふむ。心拍数、血流量、及び二人の距離感。すべてにおいて、昨夜の危機を乗り越え、より強固な結合状態に移行したと推測されます。真帆さんに報告するデータとしては、満点ですね」


 ルカが、手元のメモを真剣に見つめて分析する。


「よかったぁ……一時はどうなるかと思ったけど、やっぱりアークロン様とみのりさんは、運命の二人なんですね。見てください。あの空気……まるで僕と絵莉さんのようです……」


 リュカが、絵莉に会いたい気持ちを抑えきれないような、うっとりとした表情で溜息をつく。


「……あんまりジロジロ見たらダメたぬ。せっかくのいい雰囲気が台無したぬ」


 タヌロフが、もふもふの体を丸めて二人の足をぺしぺしと叩いた。


「でも、これで魔王様も少しは大人になったぬ。みのりを泣かせたら、それこそ異世界に強制送還たぬ……まあ、今のあのデレデレな顔を見る限り、当分はその心配もなさそうたぬ」


 三人は、夕日に染まる水平線を背景に、仲睦まじく歩いていく二人の背中を見つめ、安堵の溜息を漏らした。

 魔王軍のアパートは、今夜もきっと、賑やかで温かい夜になりそうだった。

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