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オープニング

(重厚な鋼鉄の壁面に囲まれたスタジオ。壁には精密な原子模型のオブジェが配置され、青白い光でライトアップされている。背景中央には巨大な世界地図があり、その上に「1945.8.6」の日付が赤く浮かび上がる。「歴史バトルロワイヤル」の金属製ロゴが威圧的な存在感を放つ。コの字型に配置された黒い大理石調のテーブルが、まるで国際会議場のような厳粛な雰囲気を醸し出している)


(スポットライトが中央に集まり、黒のパンツスーツに身を包んだあすかが登場。胸元には原子軌道をモチーフにした銀のブローチが輝く。手にはクロノスと呼ばれる透明なタブレットを持っている)


あすか:「皆さま、ようこそ『歴史バトルロワイヤル』へ。私は物語の声を聞く案内人、あすかです。今夜のテーマは『核の覇権』——人類が手にした究極の力は、平和の守護者か、それとも破滅への扉か」


(クロノスを優雅に操作すると、空中にホログラムが浮かび上がる。1945年7月16日、ニューメキシコの砂漠で行われたトリニティ実験の映像)


あすか:「1945年7月16日、午前5時29分45秒。人類は新しい時代の扉を開きました。それは、自らを滅ぼす力を手に入れた瞬間でもありました。あれから80年。核兵器は世界にどのような影響を与えたのか。そして、これからどこへ向かうのか」


(映像が広島、長崎の被爆直後の光景に切り替わる。そして冷戦期の核実験、キューバ危機の緊迫した会議風景へと続く)


あすか:「今夜は、時空を超えて4人の証人をお招きしています。彼らは核の歴史において、決定的な役割を果たした人物たち。科学、政治、そして国家の威信を賭けて、この究極の力と向き合った方々です」


(クロノスを掲げると、スタジオの端に青白い光の渦が現れる——スターゲート)


あすか:「では、最初の証人をお呼びしましょう。マンハッタン計画の科学部門を統括し、原子の火を解き放った天才物理学者。しかし同時に、その後の人生を深い苦悩と共に歩んだ人物。『我は死神なり、世界の破壊者なり』——この言葉と共に、ロバート・オッペンハイマー博士!」


(スターゲートから青白い光と共に、痩身の男が現れる。やや猫背気味で、神経質そうに手をこすり合わせながら歩いてくる。黒いスーツは体に合っておらず、ネクタイは少し曲がっている)


オッペンハイマー:「また...この問いに向き合う時が来たのですね。何度時を経ても、あの閃光は私の瞼の裏に焼き付いています」


(席に着くと、存在しないタバコを吸う仕草を無意識にしてしまい、気まずそうに手を下ろす)


あすか:「博士、ようこそ。2025年の世界へ。あなたが生きた時代から見て、核兵器を巡る状況はどう映りますか?」


オッペンハイマー:「数は...減ったようですね。しかし、一発あたりの破壊力は私の想像を超えています。我々は、より効率的に自滅する方法を磨き続けたということでしょうか」


あすか:「重い言葉です。では、続いての証人をお呼びしましょう。史上唯一、核兵器の使用を決断した最高指導者。『責任は全て私が負う』——その言葉通り、生涯その決断を背負い続けた人物。第33代アメリカ合衆国大統領、ハリー・S・トルーマン!」


(スターゲートから、小柄だが力強い足取りの男が現れる。グレーのダブルスーツをきっちりと着こなし、眼鏡の奥の目は鋭い。軍人のような姿勢でまっすぐ歩いてくる)


トルーマン:「後悔はない!あの決断が100万のアメリカ兵の命を救った。日本人の命も含めてだ!」


(オッペンハイマーと目が合うと、一瞬緊張が走る)


トルーマン:「博士、また会いましたな。あの時あなたは『大統領、私の手は血で汚れています』と言った。覚えているか?」


オッペンハイマー:「ええ、覚えています。そしてあなたは私を『泣き虫科学者』と...」


トルーマン:「事実だ!武器を作ったのはあなただが、使う決断をしたのは私だ。泣き言を言うべきではない」


(トルーマンはオッペンハイマーの向かいの席に、挑戦的な視線を送りながら座る)


あすか:「お二人の間には、歴史的な因縁があるようですね。この議論も白熱しそうです。さて、3人目の証人は、米ソの核独占体制に挑戦し、独自の道を切り開いた人物です。『フランスの栄光』を体現し、誰にも膝を屈しなかった巨人。フランス第五共和政初代大統領、シャルル・ド・ゴール将軍!」


(スターゲートから、196センチの長身の男が威風堂々と現れる。軍服姿で、ケピ帽を小脇に抱えている。ゆっくりとした足取りだが、一歩一歩に重みがある)


ド・ゴール:「フランスは、誰の許可も必要としない。アメリカの許可も、ソ連の許可も、そして歴史の許可すらも」


(オッペンハイマーとトルーマンを見下ろすような視線で眺める)


ド・ゴール:「ほう、原爆の父と、原爆の使用者か。興味深い組み合わせだ。あなた方は力を持ちながら、その力に怯えている。フランスは違う。我々は力を恐れない。力を支配する」


トルーマン:「将軍、相変わらず傲慢だな。NATOの同盟を何だと思っている?」


ド・ゴール:「同盟?(冷笑)それは強者が弱者に恩恵を施すふりをしながら、支配する仕組みだ。フランスは、そのような偽りの保護を必要としない」


(悠然と席に着き、腕を組む)


あすか:「将軍の独立への執念は、まさに伝説的ですね。そして最後の証人は、人類史上唯一の被爆国から参りました。非核三原則を掲げながら、同時に現実の国際政治の中で苦悩し続けた指導者。ノーベル平和賞受賞者、佐藤栄作総理大臣!」


(スターゲートから、小柄な日本人男性が慎重な足取りで現れる。黒の詰襟に身を包み、表情は穏やかだが、目の奥に深い憂いを宿している)


佐藤:「皆さま、初めまして。いえ、正確には...歴史の中で、皆さまの決断の影響を受けてきた者として、ようやくお目にかかれたというべきでしょうか」


(オッペンハイマーに深く一礼)


佐藤:「博士、あなたが作り出したものが、1945年8月6日、広島に落とされました。7万人が一瞬で...」


オッペンハイマー:「(顔を歪める)存じています...毎日、その数字が私の頭の中で響いています」


佐藤:「(トルーマンに向き直り)大統領、あなたの決断によって、私の国は世界で唯一の被爆国となりました」


トルーマン:「そして、その後日本は驚異的な復興を遂げた。我々の援助もあってな」


佐藤:「ええ、そして皮肉なことに、今度はあなた方の核の傘の下で守られている。これが、我が国が背負う永遠の矛盾です」


(静かに席に着く)


ド・ゴール:「矛盾?それは選択の結果だ。独立を選ばず、保護を選んだ。フランスなら、違う道を選んだ」


佐藤:「将軍、あなたは広島の焼け跡を見ていない。あの地獄を見れば...」


ド・ゴール:「感情論では国は守れない。それとも、また同じ目に遭いたいのか?」


あすか:「皆さん、まだオープニングですよ。(微笑みながら)でも、この緊張感...素晴らしい。4人の証人が揃いました。それぞれが核の歴史において、決定的な役割を果たした方々です」


(クロノスを操作し、4人の経歴がホログラムで表示される)


あすか:「では、本格的な議論に入る前に、一つ質問させてください。皆さんにとって『核』という言葉を聞いて、最初に思い浮かぶことは何ですか?一言でお願いします」


オッペンハイマー:「プロメテウスの火...人類には早すぎた力です。我々は火を制御する前に、それを手にしてしまった」


トルーマン:「力だ。純粋な力。そして正義を守るための必要な力だ。綺麗事では世界は回らない」


ド・ゴール:「独立。真の主権国家の証明です。核を持たない国は、結局は核を持つ国の意のままになる」


佐藤:「8月6日の広島。(長い沈黙)あの悲劇を二度と繰り返さないために、我々は生きています」


あすか:「四者四様の答え。科学者の後悔、政治家の決断、独立への意志、そして被爆国の記憶。これらすべてが、核の歴史を形作ってきました」


(スタジオの照明が少し暗くなり、より重厚な雰囲気に)


あすか:「さあ、いよいよ本題に入りましょう。第1ラウンドのテーマは『開発と使用——原罪の瞬間』です。すべてはここから始まった。1945年7月16日、ニューメキシコの砂漠。オッペンハイマー博士、あの瞬間を振り返っていただけますか?」


オッペンハイマー:「(深いため息)トリニティ...我々はその実験を『三位一体』と名付けました。神への冒涜だったのかもしれません...」


(4人の視線が交錯し、歴史的な議論の幕が上がろうとしている)

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