第八話:これでうぃーんうぃーん
「獣の・・罰・・・・」
彦じいちゃんが話してくれた仏界に伝わる大きな罪を犯した者が受ける罰の一つ、畜生輪廻。
まさかその罰を受けた相手がこうして目の前にいることに幼いながらも私は驚きを隠せないでおりました。
「・・なんや、知っとるんか。ワシが受けてる罰の事」
「おじちゃん・・悪いことしたですか?」
幼い私の言葉におじちゃんはにやりと笑みを浮かべると顔をずいと近づけ
「ぎょーさん悪いことしたわ・・それこそ、仏様がキレ散らかすくらいの事をな」
そこまで言うとおじちゃんは毛皮から何かを取り出すとテーブルに広げてくれました。それは酷く古びた
巻物で、そこには見事な描写で描かれた蓮池の絵が描かれておりました・・しかし、どれもこれも蕾のままで幼いながらにソレをまじまじと見た私はどこかもの悲しさを感じたのです
「・・しくみはよぉわからん。せやけど良いこと一つしたら蓮の蕾が開くんやどうや」
「じゃあ、ここに描いてあるお花が全部咲いたら・・・」
なるほど、仏様方もよく考えたものだと思います。つまりこの巻物に描かれた蕾の蓮すべてが満開になったその時が罪の清算。極楽浄土に上り輪廻転生できるという仕組みらしいのです。
「・・でも、お花咲いてないですよ?」
「それがわからへんねや・・ったく。こちとら早くこんな獣臭い体抜け出して人間に戻りたいっちゅーに・・」
・・・まぁ、確かに私が見たあの光景。
おじちゃんからしてみれば奈良の治安を守る良いことだとは思うのですが・・・やっている事が
追いはぎ、暴力、強盗。
確かに蕾が咲く訳などありえないし、むしろ業を更に積み重ねているような物なのです
「な?わかったやろ?むっちゃんみたいな良い子がワシみたいな悪党に関わってもなんも面白い事なんかあらへん・・弟子の話はすっぱり忘「それとこれとは話がちがいます」被せてきた!?」
おじちゃんはそうは言いましたが私だってやっと見つけたヒーローをはいそうですかと見す見す手放すようなことはしません。
だからこそ、思いついたのです
幼い子鹿の頭を絞り出して考えた、最高の名案を
「おじちゃんが人間に戻れるお手伝い、ぼくもします!」
「はぁ?」
「ぼくはおじちゃんをお助けして、立派な神鹿へと近づけるし・・おじちゃんはぼくのお手伝いをすることで、人間に戻ることができます・・・」
「ま・・まぁ、たしかにな・・・」
「ミンミンの関係です。」
「それやと蝉になるでむっちゃん。」
私の提案におじちゃんは少し考え込むと深いため息をつき私を見つめ
「・・・こら絶対引き下がらへんな。」
「ひかぬ、こびぬ、かえりみぬです」
「それやと奈良が世紀末なってまうやんか・・・はぁ~・・・しゃあないな。」
す、と手を差し出しおじちゃんは少し困ったように笑みをこぼすと
「ワシの完敗や。これからよろしゅうな?むっちゃん。」
やっと、私がおじちゃんの弟子になる事を許してくれたのでした。
「これで、うぃーんうぃーんです!」
「え?ワシらロボなるん??」