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第七話:おっちゃんの秘密

なんとかおじちゃんの説得に無事成功した私は美味しいかき氷を食べ終えた足でおじちゃんに連れられ、カフェに入りました。


これを読まれている貴方様にも是非足を運んでいただきたいカフェ。


近鉄奈良駅から歩いて六分、小西さくら通り商店街にあるカフェ。鹿の書かれたおしゃれなのれんが目印の【ロクメイコーヒー】は平日の昼とは言え、多くのお客様で賑わっていました。


「いらっしゃ・・・・あれ?むっちゃんやん!珍しいねぇこんなとこ来るなんて」


この人はサキお姉さん。このロクメイコーヒーで働くスタッフのお姉さんで、彦おじいちゃんの次に僕に優しくしてくれた人でもあります。


栗色の髪をポニーテールにしていつもニコニコ太陽みたいなお姉さんを見て、私も頑張らなければいけないなといつも勇気をもらっていました。


「あれ?となりの鹿さんは?お友達?」


「ぼくのししょーです」


サキお姉さんに背後で気まずそうにしてるおじちゃんを紹介すればおじちゃんはしぶしぶ頭を下げる


「師匠?よくわからんけどむっちゃんの先生みたいな感じなんかな?」


「えへへ~、これからばしばし鍛えてもらってク●シ《にゃ~お》観光客をちぎってはなげちぎってはなげできるようにがんばります!」


「うーん。お姉さんいつものむっちゃんが好きやからそのままでええかなー?」


私の気合にお姉さんはそう返すと私とおじちゃんを奧の席にあんないしてくれました。


「むっちゃんはいつものやつでええのかな?」


「はいです!おじちゃんには、おコーヒーをお願いします」


注文を終え、カウンターに戻っていくお姉さんを見送ればおじちゃんは大きなため息をつき私に話し出しました



「は~・・・ホンマすごい子やで。このワシを丸め込むとはのぅ・・・〝悪の才能〟あんで」



「ぼく、悪人にはなれないですよ?」


おじちゃんの言葉にそう返すとサキお姉さんが注文した品を持ってきてくれました。



おじちゃんは本日のコーヒー、


そして私はデ・カフェオレとフレンチクロワッサン。


ここに来るといつもこれを頼むのが癖になっていました



「あ、せや・・・・名前ちゃんと聞いとらんかったな」


コーヒーを啜りながらおじちゃんは私に尋ねてきました


ぼくはムジカです。100人兄姉の末っ子で、神鹿修行のため春日の神域から下界に下りてきたんです!」


「へぇ~むっちゃんは神鹿なんやなぁ、そらまたえらい・・・・・神鹿?・・・・・・神鹿ぅ!!?」


私の自己紹介を聞いていたおじちゃんでしたが神鹿と言う言葉が聞こえると思わず椅子から立ち上がり驚きの表情を浮かべていました


「むっちゃん!?え!?ちょ!!そんなどえらい所の子なんか君!!」



「う?どーしたんですか?おじちゃん」


首を傾げる私におじちゃんは冷や汗をダラダラ流しながら困惑していました


・・・それもそのはずでございます。


神話の頃、天界より雷神であり武神の建御雷神たけみかづち様が下界に降り立った際、雷光とともに白く輝く一匹の鹿に乗っていた事から春日神鹿伝説の始まりであったのです。


神鹿とは即ち、春日三柱神の御使い。


その為、天界では神鹿の子供が産まれると神々や巫女達で大切に育て、そして大きくなる前に一度修行として下界に送り出し春日の地を巡り人々と神の絆を深め


そして天界に戻って初めて立派な神鹿として認められるのです。


「は~・・・むっちゃんどらい事しとるんやなそんな小さいのに」


「そうなんです~」


「・・・せやけど、なんでその神鹿のむっちゃんがいきなりワシの弟子になりたいなんて言い出したんや?」



コーヒーを啜りながら尋ねてくるおじちゃんに私は口に頬張ったフレンチクロワッサンを咀嚼し飲み込み、言葉を返しました



「・・・あの時、ぼくを助けてくれたおじちゃんがすごく素敵に見えたんです。」


神鹿修行として下界に降りた私には味方などおらず・・・あの日、優しくしてくれた彦じいちゃんだっていつも私の側に居てくれる事はできません


そんな時に、海外観光客に絡まれ困っている私の前に颯爽と現れバッタバッタとなぎ倒していくおじちゃんの姿は


幼い私の瞳にはヒーローのように輝いて見えました。


それに私もまだ幼くはあっても神鹿の一匹、偉大な兄や姉にはまだ遠く及ばずとも


今此処でおじちゃんと離れてはきっと後悔すると強い予感を持っておりましたから


少々強引な手を使ってでも弟子入りを頼み込んだのでございます。


笑顔で話す私を見て、おじちゃんは複雑そうに顔を歪めるも深いため息をつきコーヒーを一気に飲み干せば私を見ると


「・・・・やっぱ無理や。」


「へ?」


「そんな話聞いたらなおさらアカン。弟子入りは他の奴に頼んだ方がええ」 

 

「む!やーです!絶対におじちゃんに弟子入りします!」


「ワシが鹿や無くて〝大罪犯した元人間〟や言うてもか?」


そう言うとおじちゃんは怖い顔で私を見つめてきました。


元人間とはいったいどういう事なのかと首を傾げましたがその時、彦じいちゃんのある言葉が私の脳裏に過ったのです




ー 如来様達もちゃあんとワシらを見ていてくださるからな・・・きちんと善行せんとアカン。〝獣にされてまう〟からな ー





「・・・・仏様の、罰?・・・・」


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