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第六話:作戦のご利用は計画的に

奈良の信仰心を育てるべく降り立った神鹿の子鹿と


突如奈良公園に出没した茶色い悪魔。


思えば本当に数奇な縁だと私も感じております


「おまたせしました~♪奈良イチゴ氷と大人の抹茶デラックスです~♪」


東町商店街からさらに奥、もちいどのセンター街にある予約制のカフェへおじちゃんに案内された私はお店のお姉さんがテーブルに並べたかき氷に目を奪われました


キラキラと輝く氷の山の上には甘い香りを漂わせるイチゴジャムと大きなイチゴが乗っていて


「さ、とりあえず食べや坊。」


にこにこと笑いつつ一瞬自分の財布を開け「二千円もするんかたかが氷菓子でェ・・・」と呟いたおじちゃんに頭を下げ一口。


「おいしいですおじちゃん!」


「ほーかほーか、気に入ったならなによりや・・・せやったらソレ食べたらちゃんと帰」


「とても美味しいし感動しましたので弟子にしてください。」


「(圧が凄い!!!!・・・・子鹿やのに圧が凄い!!!)」


イチゴを頬張りながら見つめてくる私の気合におじちゃんは気圧されたのか抹茶デラックスを高速でかっこむとどうやら頭がキーンとしたらしくこめかみを押さえていました


そう、おじちゃん曰くこの時はなんとか私を引き剥がそうと試行錯誤した結果の苦肉の策・・・・


子供ならと考え《お菓子で釣り満腹なったら帰らせよう》と言う作戦を練っていたらしいのですが・・・


幼い私はそんな物に釣られたりはしませんでした。


それほどまでに、目の前に現れたヒーローを私は絶対に手放したくなかったのです。


「よ、よっしゃ。かき氷食べ終わったらクレープも食べよか?」


「ありがとうございますおじちゃん。弟子にしてください。」


「語尾!!語尾おかしいて!!」


「おかしくないですよおじちゃん。おかしくないので弟子にしてください。」


「話ィイ!!!通じひんん!!」


イチゴをもぐもぐ頬張る私におじちゃんは頭を抱えながらもかき氷を食べつつなんとか私を引き剥がそうと話しを続けます


「あんな!坊!おっちゃんヒマやないねん!」


「大丈夫です。わかってます弟子にしてください。」


「わかってへんやん!!!ゴリゴリに押し通そうとするやん!!だ、だからな!?おっちゃん忙しいし遊びに付き合うとるヒマないねん!!」


「ぼくも遊びじゃないです弟子にしてください。」


「おンンまッ!!!エエ加減にせえよ白まんじゅう!!」


一歩も引かない私の態度にとうとう我慢ができなくなったのかおじちゃんは机をバン!と叩くと立ち上がり



「さっきから弟子にしろ弟子にしろてやかましいねん!!こちとらヒマやないんじゃクソガキが!!わかったらはよ失せ・・・・」


「・・・・う・・・」


「はっ!!?」


私も後に引けなかったので、ついにあの禁断の秘技を繰り出しました。


そう、幼いからこそ・・・幼い子鹿だからこそ許される必殺の・・・涙目ウルウル攻撃。


一昔前、CMでチワワのウルウルした瞳に多くの人々が打ち抜かれました


「あっ、あっ、あっ、す、すまん!ごめんな?び、びっくりしたな?ごめんな?」


慌てて私に駆け寄りおじちゃんはなんとか私の涙を引っ込ませようと必死に話しかけてきましたが、ここで引くわけにはいかなかった私はさらに瞳をウルウルさせながらおじちゃんを見つめます。



「ご、ごめんな?いきなりでっかい声だしてもうてホンマごめんな?こ、怖かったよな?」


「・・・・・・」


「おっちゃんちょっと言い過ぎたわ、ホンマごめんな?」


「・・・・・」


「な、泣かんといて?な?ほんま、もうでっかい声ださんから!」


「・・・・・」


涙目で見つめてくるおじちゃんは良心を何度も何度もタイキックされるような痛みに苦しめられたと話してくれました。


しかし私は確信していたのです。あと少しだと



「っ~~~・・・・」


とうとうおじちゃんはガクリと膝を突き苦しげに呟きました



「な、何でも言うこと聞いたるから泣かんといてくれ!!」



「弟子にしてください。」


「弟子にします!!!!」



結果は私の作戦勝ち。


こうして、私はおじちゃんに弟子入りする運びになったのでありました







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