第四話:奈良公園の茶色い悪魔
さて、その日の翌朝でございました。
彦じいちゃんという心強い味方を得た私はまた信仰心を人々の魂に根付かせ、神鹿としての修行を成すべく奈良公園へと向かいました。
しかし今の奈良公園、これを読まれている貴方様もきっと思うところはあるのでしょうが・・・まぁほんとうに
観光客のマナーが悪すぎるのです。
なんだか現世の役人さん達は働いてるのか居眠りしてるのかさっぱりわからない政をしているせいか、異国人の観光客も山ほど増えました・・・ですが、そうなのです。
もう一度言わせていただきたい。マナーが悪すぎるのです
『ワォ!ベン!キュートなバンビがいるぜ!』
『やぁバンビ!白くてベリーキュートだぜ!写真とらせてくれよ!』
本来、奈良公園などにいる鹿は野生動物であり人が無闇矢鱈に近づいて良い物ではないのでございます。
ですがどうやらそれが異国人の観光客には理解できないようで・・戸惑う私などお構いもせず、ベタベタと触りだし写真を撮ろうと迫ってきたのでした
「あ、あの、やめ、やめてくださいぃ」
あたりを見渡せども、私を助けてくれる人はおらず、言葉などもちろん通じないため異国人の観光客は行動を止めてくれません。
その時でした。
「何しとんねんゴルァアアアア!!」
ドスの効いた声が響き渡ったかと思うと、観光客に向かって綺麗なドロップキックを決めている
二足歩行の鹿が私の目に飛び込んできました
「おどれらァあああ!!子鹿にベタベタ近づいたらアカンって書いてあるやろが!!!ご丁寧に英語で!!読めへんのかこのボケナスがぁ!!!」
二足歩行で、むちむちとした着ぐるみのような見た目
しかし蹄や頭に生えた角からしてあきらかに鹿であるのは理解できましたが
「マナー守れへんのやったら帰れぇ!!!母国帰ってピザとハンバーガー食って寝ろボケがぁああ!!!」
「helpme!!!andl,ll killyou!!」
「日本語話せ言うとるやろがゴルァアアアア!!」
気絶した異国の観光客ともう一人の観光客に見事なキャメルクラッチを決めて落とした後、その鹿は立ち上がると観光客のズボンのポケットからサイフを取り出し札束を何枚か引き抜きました
「迷惑料や・・・ケン○ッキー共が」
気絶した観光客にペェッ!!と唾を吐き捨てるその後ろ姿とワイルドっぷりに
幼い私にはその鹿がヒーローに見えたのです。