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第十話:仁義なき献血~輸血の抗争~


さて、須知おばちゃんの説得によりおじちゃんは献血を受けれることになったのですが・・今でも私はその時のおじちゃんの目つきを、表情を覚えています



「おい若いのォ・・・・・*先生には鹿の鳴き声に聞こえます」


『ひぃぇえええ!!なんか威嚇してる!!めっちゃ唾飛ばしてくるしなんか口臭が揚げた鶏肉臭いしなんなんだよこの鹿ぁ!!』


「スっと終わらせぇや・・・・さもないとその口に奈良産のタピオカ詰め込んだるからなぁ・・・*先生には鹿の鳴き声に聞こえます」



血管がちぎれるのではないかと思うほどに歯茎をむき出しにし、目が飛び出るのではないかとおもうほどに瞳孔を開き鼻息を荒くしながら先生をにらみつけるおじちゃんの姿はまるで任侠映画で腹に銃弾を10発食らいながらも敵組織に突っ込んでいく竹●力のようでした・・・・



「採れるだけ採れや・・・・5リットルや・・ワシは覚悟決めてるんや若造がぁあ・・・」


『ひぃいいい!!?』


「おじちゃん!さすがに5リットルは死んじゃいますよ!?」


おじちゃんの覚悟は確かに立派なものでしたが・・そうなのです。これを読んでいる貴方様はご存じでしょうか。


献血で採血できる血液の量は男性は1200ml、女性は800mlと決まっており、五リットル採血しろというのは無理な話なのです。普通に死んでしまうのです・・


「止めんなやむっちゃん!!ハイリスクハイリターンや!!」


「おじちゃん!その言葉は悪いほうの意味ですよ!」


「ワシはもう覚悟決めとる・・・今更血ィ取られるのがなんや・・・オラ!!医者ァ!!おどれも男やったら覚悟決めろ!!刺せ!!ええからぁ!!」「」


「お、おばちゃん・・鹿はなんて言ってるんですか?」


「ええからはよ刺せ言うてますね」


「もうなんなんだよ奈良県ってぇええ!!」


その時の先生は訳もわからない状況と目の前の鹿の恐怖に顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながらなんとかおじちゃんの血管を探り当てると駐車の針を刺して採血を始めました


しかし、おじちゃんはそれで満足いかなかったらしく・・・


「・・・おい」


「え?な、なんかまた鳴いた」


「なにをチンタラチンタラ抜いとんねん!!一気にいけや一気にぃいい!!」


「ひぃいいいい!!?おばちゃん!?なんで!?なんか怒り出したんですけど!?」


「ちんたらやらんと一気に抜けいうてますね」


「うわぁああああん!!!」


おじちゃんのまさかの無茶ぶりに先生の中の理性・・きっとsan値と言うものが限界に突破したのでしょう。先生はわけもわからない叫び声をあげながらおじちゃんの血を採血し・・・献血ワゴンの中は先生の阿鼻叫喚とおじちゃんの怒号でまさに地獄絵図と化していました



「ぐふっ・・・」


「おじちゃん!!」


献血を終え、やっぱりおじちゃんはぱたりとその場に倒れてしまいました。血を抜かれすぎたせいでもはや真っ白く干からびたおじちゃんは、まるで洗濯機で洗われてカピカピになったポケットティッシュのように見え、私は急ぎ鹿苑に採血したおじちゃんの血液と干からびたおじちゃんを運搬台車に乗せて走りました


その時の私はまるで医療ドラマの患者の家族のような面持ちだったとのちに鹿苑のお兄さんは苦笑いで語ってくれました



「ムジカちゃーん。」


「はっ!健お兄さん!」


待合室で待っていると獣医師免許も持っている健お兄ちゃんが私に歩み寄り頭をなでながら状態を話してくれました


「おじちゃんは!・・おじちゃんは大丈夫なんですか!?」


「もうぜんぜん大丈夫やで。抜いた血全部輸血しなおしたら回復したわ。・・・ほんまあの鹿のおっちゃんなんやねん・・化け物か?」


「よ、よかったです・・・」


健お兄ちゃんの言葉に私はほっと胸をなでおろすとリュックからスケッチブックを取り出しテーブルに広げました。


・・そう、遅くなってしまいましたが神鹿としての修行。お巳さんとの大切な約束


このスケッチブックを私の見てきた素敵なもの。大好きなものでいっぱいにするという大切な修行をはたさなければなりません。


一枚目は彦じいちゃんにゆずってしまいましたが・・そう、二枚目に描くのはもう決まっておりました。






・-・-・--・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-



きょう、ぼくはひーろーにあいました。


しかのおじちゃんです。


おじちゃんは、ならこうえんのへいわをまもるために


めいわくなかんこうきゃくを ばっさばっさとなぎたおし


けんけつで ごりっとる ていきょうしてます


とても かっこよくて わいるどなおじちゃんが


ぼくはだいすきです


むじか。


・-・-・-・-・-・-・-・・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「ふぅ・・・鉄の箱に揺られて半時もかかっちまったが・・・」


近鉄奈良駅に到着したバスから小さな影が降り立つ。この令和の時代に場違いなそのいで立ちは道行く観光客の注目の的になったがその小さい影は気にも留めず、横断歩道を渡れば春日の山を見上げ笑みを浮かべる


「ここが今の大和国やまとこく・・けっ、異人ばかりじゃねぇか鬱陶しい・・だが、あの御仁もきっと此処に居るはずだ・・なぁ、小天狗丸こてんぐまる


縞模様の合羽に三度笠。腰に携えた小さな刀


右目に傷のあるイタチは三度笠をくいとあげ小さく笑みを浮かべた



「待っててくだせぇよ・・・・・・〝主君〟」















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