拗らせた元婚約者に執着されていますが、今更遅いです
その日も、ポーリーンは困っていた。
まただわ……と、心の中で何度目かわからない嘆息を漏らす。
視線の先では婚約者である第二王子ルシアンが、美しい令嬢と睦まじそうに昼食を摂っている。
笑い合いながら食事をする彼の姿は、ポーリーンが同席した際には決して見られないものだった。
ポーリーンはルシアンを好いていたが、同じ気持ちが返ってくることはない。
第二王子との婚約は、侯爵令嬢の執着の末に仕方なく結ばれたものだ――というのが、周囲の共通認識であった。
実際は、王家からの打診によって結ばれた婚約なのだが……それを言ったところでどうだというのか。
ルシアン自身はこの婚約を厭い、ポーリーンだけが報われない想いを寄せていることに変わりはない。
既に何年にもわたって続いている婚約関係ではあるものの、今更ルシアンが振り向いてくれるとは期待していなかった。
諦めの境地ではあったが、けれどポーリーンはいつまでもこの胸を締め付ける感情を抑えられずにいた。
そもそも、ここ王立学園に通う間は昼食を共にするというのは、ルシアンが言い出した約束事の一つであった。
もちろん、ポーリーンは喜んだ。
授業以外にもルシアンと過ごせる時間ができた、と。
……しかしそれも、はじめのうちだけだった。
彼はただ、気に入らない婚約者にそのことを理解させる機会を減らしたくなかっただけなのだ。
そして……それを突き付けられるのは、何も昼食の場に限った話ではない。
『あまり見つめないでくれ。いつもそうして他人の顔を眺めるなど、はしたないんじゃないか』
『近くを歩き過ぎだ。あまり視界に入らないようにしてもらえないか』
大好きな人の顔を見つめれば眉を顰められ、隣を歩けば先へ行ってしまう。
傷つかないわけがなかったが、けれどこの程度はまだ始まりに過ぎなかった。
ルシアンの婚約者に対する要求は、厳しいものだった。
『試験の上位者に貴女の名前が無いようだが、一体何をしていたんだ』
『その……王子妃教育が佳境に入りまして、試験勉強まで手が回りませんでした』
『言い訳か。まさかこの程度の試験で点が取れないとはな』
『何だその隈は。寝ていないのが丸わかりじゃないか。周りからどう見られるか気を遣ったらどうだ』
『はい……』
『今回は首位、か。だが、そこまでして点を取ったからといって、いい気になってもらっては困る』
『そんなところで何をしている』
『あ……猫が迷い込んでいたので、保護を。それに、どこから入ってきたのか確認――』
『やめるんだ、貴女のすることじゃない。そんなことで周囲の見る目が変わると思うのか』
こんなやり取りは、ごく一部に過ぎない。
ポーリーンは努力を欠かさないが、ルシアンの求める理想の婚約者像からは程遠いのだろう。
そもそも気に入られていないのだから仕方のないことではあるとはいえ、だからといって諦めるわけにもいかなかった。
ルシアンの要求は厳しいものではあったが、それ以上に辛いのは、言い終える際に決まって告げられる『そのようなことでは自分の婚約者は務まらない』という言葉だった。
機会さえあれば、もっと望む通りの令嬢を迎えたいのだと……ポーリーンに否が応でも突きつけるのだ。
そのくせ、ポーリーンが男女問わず誰かといることもまた、ルシアンは許せないらしい。
そんなつもりはないのに、愛想を振りまいているだのふしだらだのと苦言を呈されるのはどういうことなのだろうか。
――今もそうだ。
ルシアンはポーリーンを待たずに、最近よく一緒にいる令嬢と先に食事を始めている。
それだけではない。
ポーリーンの大好きな人は、彼女のいる場ではいつだって曇った表情を浮かべているのに……今は美しい令嬢へ向け、その秀麗な顔に笑みを浮かべているではないか。
彼の視線の先にいるカイラ・トルーマン伯爵令嬢は、溌溂とした魅力を放つ美しい少女である。
第二王子を前に物怖じすることなく、彼女もまたルシアンの隣で華やかな笑顔を浮かべている。
精彩を欠いた人形のような婚約者などよりも、彼女の方がルシアンの隣に並び立つのに相応しいのだろう。
自分でもそう思ってしまうことに、ポーリーンは胸を掻き毟りたくなるほどの苦しさを覚える。
ポーリーンは、無意識のうちに薬指にはめられている指輪を撫でていた。
美しいこの指輪は、ルシアンとの婚約が結ばれた際に贈られたものだ。
これと対になるものが、彼の指にもはめられている。
常に肌身離さず身に着けているこの指輪はポーリーンとルシアンを結びつけ、彼の婚約者であることを実感させてくれる数少ないものの一つであり、心の拠り所でもあった。
一抹の虚しさが、ポーリーンの胸を衝く。
以前から、ルシアンに好かれていないのはわかっていた。
この気持ちが一方通行で、向こうからすれば迷惑極まりないものであることも。
昼食を共にすることは、婚約者としての約束事ではあったが……一歩を踏み出すことができない。
ここでポーリーンが入っていったところで、想い人には顔を顰められ小言を言われるのだろう。
彼の隣に座る少女から向けられる勝ち誇ったような笑みや、将来の側近候補である周囲の人間たちの何か言いたげな視線も辛い。
そういった情景がありありと浮かんでしまい、ポーリーンはどうしても昼食の席に割って入る気持ちにはなれなかった。
どうせ空気を悪くするだけなのだから……と、彼女はくるりと身体を翻し、その場を後にした。
背後から響く笑い声に胸を締め付けられるが、内から湧き上がる感情には蓋をする。
涙を零さなかったのは、王子妃教育の賜物だったといえるだろう。
***
ポーリーンは平静を装い、一般生徒向けの食堂へ足を運んだ。
ざわめきをやり過ごし、何食わぬ顔で食事の載せられたトレイを受け取り、空いた一角へと腰を下ろす。
お腹が空いていたわけではないけれど、せめて誰かの傍にいたかった。
狂おしい感情を持て余し、惨めたらしく一人でいるのは嫌だった。
何も言わずに傷心のポーリーンを受け入れてくれたのは、彼女にとって唯一の友人であった。
――この五歳も年下の少年の傍しか居場所が思いつかなかったのは、少し情けなくもあったけれど。
リチャード・キーツ。
長い銀髪を垂らし女の子のような容姿をしたこの少年は、学園初の特待生である。
侯爵家の末息子で、弱冠十二歳にして王宮魔術師顔負けの魔力保持者。
そして、幼いながらに数々の魔術具を世に送り出している天才児。
既に最年少王宮魔術師の座が約束されている彼がこうして学園に通っているのは、貴族の子女としての慣例に過ぎない。
そのため特例として歴代初の早期入学が認められ、飛び級での卒業も既に決まっているのだった。
そんな眩いばかりの道を歩むリチャードとポーリーンの接点は、生徒が二人しかいない高等魔術の授業であった。
ポーリーンの弟と同じ年ながらこうも違うものかと、出会った当初は心底驚嘆させられたものだ。
天才の名をほしいままにするリチャードと比べられるほどではないが、ポーリーンもそれなりに魔術の素養が高く、また探究心もあったため、高等魔術の授業を選択していた。
偏屈な教授に対し生徒が二人しかいないにもかかわらずキチンと授業が行われているのは、やはり専門性が高い分野だからだろう。
当然、ルシアンには咎められた。
しかし学園に味方のいないポーリーンにとって、好奇の目に晒されない時間を望む気持ちも少なからずあったのだ。
……そうでなければ、きっとこれまで耐えることはできなかっただろう。
ポーリーンはルシアンの婚約者であり続けるために、多くを犠牲にしてきた。
幼いころからの友人たちは、そんな彼女から離れていってしまった。
そしてルシアンのポーリーンに対する態度は知れ渡っており、第二王子の婚約者とは肩書きばかりだと、彼女は口さがない噂と冷笑の的となっていたのだった。
リチャードは天才特有の気難しさもありながら、同じ分野を学ぶ意欲のあるポーリーンに対して寛容だった。
彼女にとって、普通に会話のできる相手がいたことは救いだった。
気づけばいつしか、リチャードはささやかな悩みを打ち明けられるほどの友人になっていた。
リチャードは、自身の不出来さを嘆くポーリーンを笑うこともなかった。
『どうして言われっぱなしでいるわけ? 十分よくやってると思うんだけど』
『いいえ……あの方の隣に立つには、まだまだ全然足りないところばかりなの』
『そ。まぁ、生まれ持ったものに胡坐をかくより、努力する姿勢は良いんじゃない』
ポーリーンに頷くことはできなかったが、彼の飾らぬ言葉は小気味よかった。
このままではいけないことは、ポーリーンにもわかっている。
第二王子ルシアンと侯爵令嬢ポーリーンの婚約は、王家側から打診のあったものだという。
そのためどれほどルシアンが親の決めた婚約者を嫌おうとも、彼から破婚を持ち掛けるわけにもいかないのだろう。
だからルシアンは、ポーリーンが自身の婚約者に相応しくないと、彼女自身へ、周囲へ知らしめ――ポーリーンの方から婚約者の座を辞退するように仕向けているのだ。
――決して認めたくはない事実が、胸を抉る。
ポーリーンは、幼い日に優しくしてくれた少年に恋心を抱いた。
初恋の人は婚約者になった。
それが政略によるものだろうと、どれほど向こうに気持ちが伴わなかろうと、いつかは……と。
けれど……どれほどポーリーンが努力したところで、ルシアンが隣に望むのは彼女ではないのだ。
微かに俯いたポーリーンの視界の隅に、ひと房の黒髪が映る。
彼女は色味のない自分の髪が嫌いだった。
眩い金髪のルシアンと並ぶのなら、鮮やかな薔薇色の髪を持つカイラのような令嬢が相応しいと、どうしても考えてしまう。
男性は女性の容姿を花や宝石にたとえて持ち上げるものだが、ポーリーンはルシアンから歯の浮く言葉どころか、容姿を褒められたことなど一度たりともない。
そんなことを言う人でないことはわかっているけれど、思い返すほど虚しさは広がっていった。
ポーリーンが愁いを帯びた表情を浮かべ、口に運ぶ気のない料理を優雅な手つきで細かく切り分ける姿を、テーブルをはさんだ向こう側でリチャードが見つめる。
彼は変声期を迎える前の声でぼそりと何かを呟いたが、それを打ち消すような声が頭上から降ってきた。
「こんなところにいたのかポーリーン! 探したぞ!」
「ルシアン様……」
ぞろぞろと連れ立ってやってきた婚約者に対し、ポーリーンは立ち上がり礼をとる。
そんな彼女の姿を見るともなしに、ルシアンは再び口を開いた。
「何故このようなところで油を売っている。貴女が昼食の席に来ないせいで、どれだけ待たされたと思っているんだ!?」
「…………」
繰り返す謝罪すら煩わしいと、撥ね付けられたのはいつのことだっただろうか。
頭を垂れたポーリーンは口を開かず、ルシアンの言葉を聞く。
それはいつも学園のそこかしこで見られる光景だった。
ルシアンの表情からは、煩わされた不快さがありありと見て取れた。
待たされたと言ってはいるものの、食事が終わっても姿を現さないポーリーンの事にようやく思い至ったというだけで、既に食事を始めていたのはその目で見た通り。
いつまでもやってこないポーリーンを心配しての行動でないことは、痛いほどわかっている。
「貴女は約束の一つも満足に守れないのか!? 一般生徒に交じって食事を摂るなど、自分の立場を理解していないのか、それとも私への当てつけのつもりか?」
決して声を荒げているわけではないのに、ルシアンのよく通る声は食堂中に響き渡った。
婚約者との昼食の場から踵を返したポーリーンが不参加を誰かに言づけなかったのは、そんな些細なことで想い人の歓談の場を乱したくなかったからだ……というのは、自己満足の弁明に過ぎない。
ひとしきり言い終えると、ルシアンは婚約者に対しいつもの文句を口にした。
「――全く。貴女がこのようなことを繰り返すなら、我々の婚約は考え直さねばならないかもな」
ため息交じりに吐き出された婚約者の言葉と、それに呼応した愉し気な少女の息遣いが届き、ポーリーンの身体が微かに震える。
『考え直さねば』などとルシアンは言っているが、隣に美しい少女を侍らせている意図は明白だった。
何度聞いても辛い言葉だが、今日は特に堪えた。
言い終えた後はさっさと踵を返すのが常だったが、彼の視線はポーリーンの向かい側に座っていたリチャードへ移ったらしい。
「君は……あぁ、例の特待生か。彼女の食事相手は君か? それとも、彼女が勝手に居座ったのかな?」
ポーリーンはハッとリチャードを振り仰ぐ。
ルシアンが他者を引き合いに出すことは稀にあったが、こうして近くの人を巻き込むのは、直接的なポーリーンへの苦言以上にいたたまれないことだった。
ルシアンを見上げるリチャードの表情は見えないが、ポーリーンには彼の浮かべる表情を知る勇気はなかった。
「賢い君ならわかっているだろうが、私の婚約者は君と釣り合うような人ではない。授業以外では、あまり関わらないことだ」
吐き捨てるようなルシアンの言葉に対し、ポーリーンの胸の内に、初めて沸々とした感情が湧きあがる。
――何故自分は、友人の前でまで……こうも侮辱されているのだろう?
浮かんだ疑問は、身体の中心から熱く沸き立つようでもあり、芯から凍り付いていくようでもあった。
特待生のリチャードは、数々の称賛をほしいままにする優秀な人物だ。
そんな彼とでは友人としてすら釣り合いが取れていないというのは、ポーリーン自身が誰よりも一番よく理解している。
今だってリチャードが何も言わないのを良いことに、勝手に慰められていただけに過ぎない。
けれど当のリチャード本人は『そんなことを気にするなんてくだらない』と、かつてポーリーンにそう断じてくれた。
彼が案外、面倒見の良い性格をしていることも知っている。
いくら婚約者といえど、これ見よがしに美しい令嬢を侍らせるルシアンから、友人付き合いにまで口出しされる謂れはなかった。
それに……かつて友人の一人もいないのかとせせら笑いを浮かべた当の本人が、ポーリーンに残された唯一の友人へ向ける言葉に納得がいかないのも事実。
リチャードが優秀であればこそ、彼と知己であるのは誇るべきことだった。
けれどポーリーンが何をしようとも、ルシアンにとっては何の価値も無いのだ。
だからこそ、彼の婚約者という肩書き以外は無価値な存在なのだと、関わるような相手ではないのだと……ポーリーンにとって他でもない、唯一の友人に対して告げているのだろう。
ルシアンには長年様々なことを指摘され続けてきたが、その分努力も重ねてきたつもりだった。
だがこうも貶められては、その自負は音もなく崩れ落ちていく。
ポーリーンは友人――それも弟と同じ年齢のリチャードに対するプライドを傷つけられ、そしてこれまでの努力の何もかもを踏みにじられた心地がしていた。
視線を向ければ、勝ち誇った表情を浮かべるルシアンの姿。
彼を見上げるリチャードの表情は翳っていて、やはりポーリーンからは見えなかった。
リチャードの性格上、きっと何か言い返してしまうだろう。
短い交流の中でも、彼がルシアンへ好感を抱いていないだろうことは、流石に察していた。
それ以上に……もし賢しいリチャードが全てを呑みこんだとして、ルシアンの言葉に同意する姿は絶対に見たくない。
ポーリーンはようやく、これまで自身を奮い立たせてきた執着を手放すことを決めた。
急に、何もかも投げ出したくなってしまったというのが近いだろうか。
婚約者との長年に渡る根競べは、ポーリーンの完全敗北であった。
「――殿下」
ポーリーンは、リチャードが何か言い出す前に先んじて口を開く。
真っ直ぐに姿勢を正した彼女を、ルシアンは少しだけ驚いたような表情で見つめていた。
「不出来な婚約者である私が、これ以上殿下を煩わせることはないとお約束いたします」
顔を上げたポーリーンは、キッパリと告げる。
売り言葉に買い言葉という単語が頭を掠めたが、ポーリーンは止まらなかった。
不思議そうにするルシアンにゆっくりと近づけば、彼はギョッとしたように僅かに身体を仰け反らせた。
こんなにも嫌われていたというのになんと愚かだったことかと、ポーリーンは自身へ苦々しい想いを抱く。
「殿下、……手を」
そう促せば、訝しげながら素直に手のひらを差し出すルシアン。
隠し切れずどこか嬉しそうな表情を浮かべる婚約者に、ポーリーンは揺らぐ感情の中しっかりと仮面を被る。
待ち望んでいた瞬間なのだから、それは嬉しいだろう。
それでも、こんなときだからこそ、いつものようにしかつめらしくしていてくれたらよかったのに……と思わずにはいられない。
悔恨に駆られながら、ポーリーンは自身の薬指にはめていた指輪を外す。
ルシアンのはめているものと対になっているその指輪は、ポーリーンにとって喜びの象徴であり、何よりも重たいものでもあった。
長年肌身離さず身に着けてきたものだったにもかかわらず、指輪は拍子抜けしてしまうほどあっさりとポーリーンの指から外れた。
外した指輪を目にすると、先ほどまであれほど荒れ狂っていた感情が不思議なほどに凪いだ。
久しぶりに間近で目にしたルシアンの顔だったが……かつて恋した、不器用ながら優しく温かい少年の面影は微塵も無かった。
ずっと大切にしてきた思い出は、焦がれるあまりに作り出したポーリーンの幻想だったのだろうかという想いすら湧いてくるほどである。
ルシアンに触れないよう、ポーリーンは外した指輪を慎重に彼の手のひらの上に乗せる。
ポーリーンにとっては、初恋の人との婚約の証。
ルシアンにとってはきっと、忌々しく自分を縛り付ける鎖だったのだろう。
指輪を手にして呆けたような表情を浮かべるルシアンだが、もしかすると今はまだ実感が無いのかもしれない。
そうして一歩下がり、ポーリーンは深々と頭を下げる。
次期王子妃として育てられた彼女の、堂々とした礼であった。
「何をしても至らぬ私では、とても殿下のお相手は務まりません。本日をもって私ポーリーン・ラトリッジは、第二王子殿下であるルシアン様の婚約者の座を辞退いたします。どうぞ殿下に相応しいお相手と結ばれますことを、フォルテア国民の一人として祈っております」
――こうして、ポーリーンの恋は終わりを迎えた。
ルシアンの顔をもう一度見る勇気はなく、ポーリーンは足早にその場を立ち去る。
背後からは「まぁ殿下! 婚約解消おめでとうございます!! ようやくこれで自由の身ですわね!」と弾む令嬢の甲高い声や、ルシアンへ何かを訴えるような周囲の声が反響するが、ポーリーンはそれを振り払うように進んだ。
明日からは負け犬の笑い者となるだろうが、どうだってよかった。
そしてポーリーンはその後残された者たちの騒動を目にすることなく、学園を後にしたのだった。
***
「待ってくれ、話を聞いてくれポーリーン!!」
「殿下……」
その日も、ポーリーンは困っていた。
数年ぶりに戻った学園で、まさかルシアンが特別講師として現れるとは思ってもみなかったのだ。
そして彼はポーリーンの前で、どうかもう一度婚約してほしいと懇願するのだった。
***
かつてのポーリーンは、ルシアンが婚約解消を望んでいるものと思っていた。
しかしどうやら実際は違ったようで、指輪を返した翌日にはたくさんの手紙と王宮への招待状が怒涛の勢いで届き続けたことは忘れたくても忘れられない。
傷心を通り越して燃え尽きたような状態となったポーリーンにはとても応じられるものではなかったが、配達人には手紙の返事を催促され、招集に応じるよう懇願されたのも一度や二度ではない。
なけなしの気力を掻き集めようやく目を通した手紙の数々には、信じられないような内容が綴られていた。
ものすごく簡潔にまとめると、曰く。
『君のことを心から愛している。これまで言い過ぎたことを誠心誠意謝罪するので、どうか婚約破棄はしないでほしい』――ということだった。
大嘘にもほどがあると思ったが、ルシアンの綴った真相はポーリーンの理解の範疇を超えていた。
『君を好きすぎるあまり、どうしても素直になれなかった。そして溢れそうな気持ちが酷い言葉に置き換わってしまうのを、直すことができなかった。それでも気持ちを寄せてくれる君に甘えて、優越感に浸っていたんだ』
なんだそれは、とポーリーンは魂を飛ばしかけた。
長年にわたってあれほどまでに傷ついてきたのは、一体何だったのか。
彼に相応しくあろうと努力した日々の記憶が、暗く塗りつぶされていく。
好きな子に意地悪をするとか、そういう次元の言動ではまるでなかったのはポーリーンが一番理解しているはずなのだが、そこに書かれているのはつまりそういうことだった。
王家側からもたらされた婚約の打診も、ルシアンたっての希望によるものだったという。
毎度のように婚約関係の解消を引き合いに出していたのも、結局はポーリーンが自身へ縋る姿に悦に入っていたということだ。
きっとはじまりは同じだったはずなのに、これまでポーリーンとルシアンの気持ちが重なることはなかった。
『他の女を傍に置いたのは、君がやきもちを焼いてくれるのが可愛くて嬉しかったからだ。君への気持ちが揺らいだことは一度もない』
とても信じられるようなものではなかったが、嘘と断じるには大量の手紙に綴られた内容はあまりに多かった。
いっそポーリーンは、あの美しい令嬢を不憫に思った。
もし手紙に書かれていることが本当ならば、彼女はただ子供じみた思想のルシアンに巻き込まれただけなのだ。
次々に届けられる手紙を読み進めるほどに、ポーリーンは自身の行動を褒め称えたくなった。
彼の婚約者の座を辞し指輪を返したことは、英断だったのだ。
既に真偽など関係ない。
今更ルシアンの気持ちを知ったところで、ポーリーンがこれまで受けてきた仕打ちがなかったことにはならないのだ。
どれほど懇願されたところで、ルシアンと人生を共にする気にはならない。
それどころか、初恋の人へ抱いていた淡い幻想すら打ち壊されてしまった。
ポーリーンが後になって知ったことだが、ルシアンの両親である国王夫妻も結婚する以前から互いに突き放したり嫉妬させたりといった行動を取っては相手の愛情を確認するという、はた迷惑な行為の常習犯だという。
ルシアンはそんな親の姿を見て育ち、同じような形で婚約者へ好意を示していたことになる。
彼の行動が親譲りだったからといって、ポーリーンはそれに応えられない。
むしろ嫌悪を超え、どこか恐怖すら感じるほどである。
事の経緯を知ったポーリーンの両親は、執拗なルシアンの態度に娘の身を危ぶみ、彼女を急いで他国へ留学に出した。
新しい地で、ポーリーンはようやく安寧の日々を手に入れたのだった。
***
留学を終えたポーリーンは、学んできた知識を活かすため研究員として学園に戻った。
ルシアンから絶えず手紙は送られ続けてきていたが、とっくに卒業したはずの彼は学園に近づけないと踏んでいたのだ。
しかし彼は王子である身分を如何なく発揮し、こうして再びポーリーンの前に現れては同じ話を繰り返すのだった。
「ルシアン殿下、僕の婚約者にそう言い寄られては困ります。彼女にその気は無いのですから」
「リチャード、貴様っ……!!」
その日も、困ったポーリーンを救ってくれたのはリチャードだった。
ルシアンとの婚約を解消した挙句に執着されることとなり、その後の嫁ぎ先探しが難しくなったポーリーンを引き取ってくれたのも彼である。
かつては女の子のような容姿をしていたリチャードはここ数年で一気に身長が伸び、美しい青年へと成長していた。
今も伸ばしたままにしている銀髪を低い位置で結わい、王宮魔術師のローブを纏っている。
かつては小生意気に感じられた口調も、今は鼻につくほど慇懃無礼なものへと変わっていた。
激昂するルシアンをものともせず、彼はポーリーンの肩を抱く。
「あまり興奮すると、また倒れてしまいますよ? もう一度離宮に呼び出されて顔を突き合わせる羽目になったら、お互い面倒でしょう?」
リチャードが冷ややかな笑みを浮かべる。
ルシアンはここ数年のうちに、恋煩いというには度が過ぎているほどにやつれ果てた姿となっていた。
謎の体調不良や発作に襲われているらしく、王宮医師や他の王宮魔術師たちではどうにもできなかったものを、今度はポーリーンと同じタイミングで留学から戻ったリチャードにお鉢が回ってきたのだ。
彼が詳しく話さないためポーリーンには詳細を知りようもないが、目の前にいるルシアンはほとんど病人といっても差支えがなかった。
……身体も、精神も、病んでいる。
今も「もう一度この指輪をはめてくれ」と、かつて婚約していた際に贈られた指輪を差し出しているが、何度懇願されたところでポーリーンが頷くはずもないのは自明のことなのに、それでもこうして繰り返すのがその証左だろう。
「さあ、帰ろうポーリーン」
「えぇ……そうね」
「待て、話はまだ――」
「いいえ、終わりですよ。とっくの昔に全部終わっているのに、本当に懲りない人だなぁ」
さっさと背を向けたリチャードが、追い縋るルシアンを肩越しに振り返る。
ポーリーンは彼の身体に遮られ、その表情まで読み取ることはできない。
「貴方がそんなだから、指輪の主ごと全てを失う羽目になる。……まぁ、今更手遅れですけどね」
言い捨てると、今度こそ彼はポーリーンの背を押して歩き出した。
ルシアンは今にも倒れそうだったが、近くに人が控えているので大丈夫だろうと、ポーリーンは気にするのを止めた。
横でリチャードが大きく息を吐く。
「全く、王宮魔術師なんて忌々しい……。ポーリーンと職場が離れているなんて耐え難いよ」
「でも、毎日迎えに来てくれるじゃない」
「当たり前だろう? 煩わしい害虫がいなくたって、僕が君を迎えに行くのは決定事項だ」
「もう……」
ポーリーンは、ようやく笑みを浮かべた。
恩師との研究は充実していて意義深いが、それでも留学先まで一緒だったリチャードと離れてしまって心細いのはポーリーンの方だ。
リチャードは本来予定されていた早期卒業の時期から、さらに他国への留学で王宮魔術師への就任を遅らせたので、ただでさえ忙しい。
それなのにポーリーンの仕事が終わる時間になれば、こうして欠かさずに迎えに来てくれるのは嬉しいことだった。
「いっそのこと式を早めよう。そうすれば同じ邸で暮らせる。送り迎えの時間しか一緒にいられない今の生活とはお別れだ」
「ふふっ、ダメよ。もう貴方がすっかりみんなの予定を決めてしまっているし……第一、肝心のお邸はまだ準備中でしょう? それに休日は、ずっと一緒に過ごしているじゃない」
「それじゃ足りないんだよ」
リチャードは口を尖らせた。
見た目は随分と大人びた彼だが、ポーリーンの前ではこうして子供じみたことを言ってみたりもする。
言葉を惜しまない彼に困ってしまうこともあるけれど、大抵は恥ずかしいだけなので、そういう理由で困らされるのならポーリーンは甘んじて受け入れることにしている。
そうしてリチャードと話すうちに、生気を失ったかつての婚約者であるルシアンのことは、ポーリーンの脳裏からすっかり消え去ったのだった。
***
ポーリーンは疲れていたのだろう。
帰りの馬車に乗ってしばらくすると、リチャードの肩に頭を預けて眠ってしまった。
そんな彼女の様子に、リチャードはすっかり凛々しくなった顔に笑みを浮かべる。
――ようやく手に入れた、愛しい人。
そしてポーリーンと婚約することができたのは、ある意味あの愚かで不快な害虫のような男のおかげでもあると思い返し、今度は愛しの婚約者には到底見せられない顔で嗤う。
馬鹿な男だ。
想い人から寄せられる好意にあぐらをかいて、下らない理由でポーリーンを散々傷つけ、苦しめた挙句……結局は逃げられた愚か者。
あの男の薄気味悪い情念を、ポーリーンが知らずにいたのは僥倖だった。
彼女は初めて出会った際にあの男の見せた優しさとやらに恋心を抱いたらしいが、そもそもそこから間違っている。
ポーリーンの知らない顛末を、リチャードは知っていた。
彼女にまつわる大切なことなのだ。
当然、調べるに決まっている。
最年少王宮魔術師になれるくらい大変に優秀なリチャードには、やりようはいくらでもあった。
幼少期のルシアンは、王宮で一人困った顔をしている同じ年ごろの少女に一目惚れした。
話しかけてみれば、幼いポーリーンは大切にしている髪飾りを落としてしまったという。
ルシアンは快く手伝いを申し出た。
結局、髪飾りは見つからなかったが……優しく親身になってくれた出自も知らぬ少年に恋心を抱いたのだと、かつてポーリーンはリチャードへ話した。
――とんだ虚妄だ。
あのルシアンという男は、一目惚れした少女に関する物を手に入れたいがために、見つけた落とし物を自分の懐へくすねた盗人である。
その上で彼女からの好意を得ることまで成功した、正真正銘のクソ野郎。
あの男の幼く歪んだ独占欲は、昔から変わることがなかった。
ポーリーンの周囲から友人が去ったのも、彼女の付き合いの悪さのせいなどではない。
彼女に近づく者は誰であろうと遠ざけるよう、ルシアンが裏で工作していたのだ。
たった二人きりのクラスメイトとなったリチャードの存在も許せなかっただろうが、年の離れた特待生だったことでどうしようもできなかったらしい。
そのおかげで、ポーリーンの方からリチャードに寄ってきてくれたのだから傑作だ。
可愛くて素直な彼女は愚かな婚約者を持ってしまったばかりに、リチャードがただ話を聞くだけでも相当な信頼を抱いてくれた。
しかも年下であるリチャードへのけん制が引き金となって、あの男の元からポーリーンが去ったのだから、本当にいい気味だった。
ちまちまと折を見ては、ポーリーンの受けている仕打ちが正当なものでないと訴え続けた甲斐もあるというものだった。
これらのことをリチャードがポーリーンへ黙っていたのは、別に悪気があったわけではない。
ただ……醜い真実を告げることで、彼女があれ以上盲目的で意固地になってしまうことを避けたかったのだ。
外から一気に離そうとしたら、より歪で強固に噛み合ってしまう場合があるのは、愛憎劇に限らずいくらでも例がある。
リチャードにとって、大変だったのはそこからだ。
ポーリーンはいくら新しい結婚相手を探すことが難しかろうと、降って湧いた新たな求婚者に飛びつくほど頭の緩い人ではない。
あの騒動の翌日、すっかり準備を整えたリチャードが行ったプロポーズは、ものの見事に失敗した。
『まだ若いんだから、同情で結婚相手を決めてはいけない』と断られたのだ。
ポーリーンが傷心中だったせいもあるが……要はガキだからと、惚れた女に告白したのに信じてもらえなかった。
リチャードは、これほどまでに自分の年齢を呪ったことはない。
彼女への想いを自覚してからというもの、虎視眈々とこの時を待ってきたというのに、少しばかり年が離れているせいで台無しである。
とはいえ、リチャードの策はそれでは終わらなかった。
ポーリーンを高度な魔術研究が盛んな国へ留学させることについて、彼女の両親へ提案したのは彼である。
当然、すぐさま自身も留学生として彼女の後を追った。
国を離れたことで周囲を取り巻く煩わしいしがらみもなくなり、リチャードは全身全霊でポーリーンを口説き続けた。
年齢はどうしようもないが、ポーリーンへ向ける気持ちを同情心などと一緒にされてはたまらない。
そして時間をかけることで、一過性の気持ちでもないことを証明するほかになかった。
――ポーリーンは決してリチャードの言葉を疑っていたわけではなかったのだが、とんでもない元婚約者のせいで自己評価がとにかく低かったので、将来性の塊であるリチャードに気持ちを向けられているのは何かの間違いだと思っていたのだ。
己の気持ちを抑える必要のなくなったリチャードは言葉を惜しまなかったため、その想いは最終的に誤解の余地なくポーリーンへ伝わった。
そしてようやくポーリーンがリチャードの求婚を受け入れたころには、彼はすっかり成長していた。
留学を終える前に口説き落とすことができたので、彼女と恋人として過ごす期間も生まれた。
リチャードの幸せ絶頂期は、今も更新中である。
いよいよ国へ戻り、あの男のやつれ果てた姿を見たときには心底愉快でたまらなかった。
何故そんなことになったのか、他国の魔術にまで精通したリチャードには一目でわかった。
ルシアンは、呪いに塗れていた。
度重なる謎の体調不良や突然の発作は、幾重にも纏った呪いが彼を蝕んだ結果によるものであった。
理由もわかりきっていた。
――ポーリーンが、指輪を外したせいだ。
互いを結ぶ愛と献身を前提とした、守護の魔術具。
彼女がかつてはめていた指輪は、王族が婚約者や結婚相手に渡すもので、互いの魔力で強固な護りを形成する。
そしてあの指輪は『外したい』という意思がなければ外すことはできない……つまり、外部からは護りを崩すことはできないものなのだ。
ポーリーンが愚かな婚約者へ向ける気持ちが長年褪せることがなかったのも、指輪の副次的な効果によるものである。
主を失うまいと、対の指輪の持ち主への軽い魅了に似た暗示をかけるのだ。
本来は指輪が贈られた際に王族側から説明が為されるものなのだが、ポーリーンが知らなかったのには理由がある。
彼女たちが生まれるより以前に壮絶な離婚騒動が起き、結婚相手に指輪を外されたことによりとんでもない弱点が生まれたために、その王族が亡くなったのだ。
だが相手の魔力を強力な守護に使う以上、説明はするべきだった。
王族はただでさえ負の感情を向けられやすいのだから。
ルシアンの容態について意見を求められた際、リチャードはこの事実を懇切丁寧に説いてやった。
それを聞いて激昂したのは、今いる王族の中で唯一このことを知らずに指輪をはめていた王太子妃であった。
互いの魔力で補完し合っているとはいえ、説明が為されないということは勝手に魔力を奪われているのと同義だ。
その上、意思を捻じ曲げるほどではなくとも洗脳に近い効果まである。
それらは禁忌に等しい。
王太子妃がすぐにでも指輪を外すつもりはなくとも、これから先不信感は拭えない。
そしてとっくに政務から外されたほど蝕まれているルシアンを見て、次は我が身だと王太子がノイローゼになるのも無理はない。
本当に仕様もない連中だと、リチャードは喉の奥で嗤う。
ルシアンが今あんなことになっているのは、自業自得に他ならない。
魔力の多いポーリーンに指輪を外されたのもそうだが、それだけであんな状態になるほど、周囲から悪意を集めていたのだ。
あの男の幼稚な身勝手に振り回されたのは、ポーリーンだけではない。
強力な呪いの一部は、知った女のものだった。
あの下らない男が、ポーリーンの嫉妬を煽るために使った伯爵令嬢。
あんな男のどこが良かったのかまるで理解できないが、彼女はポーリーンがルシアンの元を去るなり捨てられた。
都合よく使われた挙句、口汚く罵られたせいで心を病み、卒業を待たずに学園を去っていった憐れな女。
領地に引きこもり、ルシアンへ日夜恨みを募らせているのも、さもありなんといったところか。
そんな人間は、他にも探せばいくらでも湧いてくるのだろう。
リチャードは、国王夫妻からどうか息子を救ってやってくれと懇願されたが……絶対に、断固お断りだ。
かつて婚約者だったポーリーンへあのような扱いをした挙句、ようやく手に入れたリチャードの愛しい婚約者だというのに、今も未練がましく懸想する男のために、何故そんなことをしてやらなければならない?
――むしろ、更に呪いを重ね掛けしてやったほどだ。
その程度、リチャードには造作もない。
そういった魔術以外の力について、留学先で学んできた甲斐があるというものだ。
複雑に絡み合う呪詛を紐解き、彼に辿り着ける者はそういるはずもないので、まずバレることはない。
……まぁ、バレたところでリチャードにはどうということもないのだが。
本当にあのルシアンというのはしつこい男で、今日も新たな策を講じなければと考えていたところだった。
ポーリーンの指輪に、あの男から彼女を見えなくさせる視認阻害の魔術を掛けよう。
それで見当違いのところを彷徨い歩けば良い。
もちろんリチャードがポーリーンへ贈った指輪は、リチャードの魔力だけを消費して守護の効果を与えるものだ。
毎日彼女へ散々愛を囁くのが生きがいだというのに、暗示などとんでもない。
ルシアンが彼女に指一本触れられないことはわかっているが、それでも忌々しいのは事実。
これ以上、愛しい人の名を呼ばせることも許せそうにない。
――いっそのこと、離宮から出られないくらい呪いを強めてやろうか。
よしんば新たな対の指輪の持ち主が現れたところで、あれほどの呪いに塗れたルシアンを救えるほどの魔力は持たないだろう。
それでも、これといってルシアンの命に別状はないのだ。
この先も随分苦しむことになるだろうが、指輪の他にも守護はある。
王宮にかけられたものもあれば、腐っても王子なのでリチャード以外の王宮魔術師も付いている。
むしろあの男に死なれては、後味の悪いものとしてポーリーンに消えない記憶を残してしまう。
迷惑な元婚約者がいつの間にか姿を見せなくなり、そのうち忘れ去られるくらいが丁度良い。
悪い笑みを浮かべながらそんなことを思案するリチャードの隣で、何も知らないポーリーンは健やかな寝息を立てているのだった。
主人公が執着していると思ったら、実は周りの方がヤバい奴らだったお話でした。
お楽しみいただけましたら、評価ボタンやいいねボタンをポチポチっとしていただけますと嬉しいです。
ここまでお読みいただきありがとうございました!