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ホウレンソウ

「おはようございますー。」


権藤健太への転生後、初出勤となった本日、我は権藤健太が勤めているネットカフェ「ホワイトウィングカフェ(通称WWC)」に足を運んだ。


ネットカフェとは権藤健太の記憶の中に無数の情報が入っていたため、どんな場所なのかは直ぐに把握ができた。


そんなネットカフェで本日から働き、そして権藤健太のこれからの人生を代わりに生きる我にとって、一番解せぬ事が一つ。


人間は怪我の治りが悪い!!!!


魔族であれば、魔力さえ回復すれば自己修復で治るのだが、もう3ヶ月も月日が過ぎている。


また片足が動かないため、松葉杖という棒を両手に持ち歩くのだが、移動が非常に不便である。


ようやく店までたどり着き、店の入口を開ける。


「店長、お疲れ様です。ようやく職場復帰ですね。店長入院中、シフト回すの大変だったんですからねー。あと毎日顔見れなくて寂しかったですよ個人的には。」


WWCで長年働く池さんが挨拶をしてきた。


権藤健太の記憶の中で、権藤健太と最も親しい人間の女である。


「本当に迷惑かけてごめんなさい。今日からまた一緒に頑張りましょう。」


付き合って5年、住みかは違えど仕事以外の時間でも頻繁に会って飯を食らう仲であるが、権藤健太はつがいになろうとはしていない。


「ねぇ、店長。まだ杖ないと動けないんでしょ?さすがに清掃や調理なんか無理なんで受付にずっといてください。」


と気を効かせてくれた池さんは椅子をわざわざ用意してくれていた。


「ありがとう、今度また飯奢ってあげるね。」


と椅子に手をかけた瞬間。


((待って!!!!!!))


心の中で知らぬ男の声が聴こえた。


咄嗟に我は椅子に手をかけるのを止めた。

と同時に電話が鳴り、池さんが電話に出る。


「お電話ありがとうございます。ホワイトウィングカフェ池がお受けいたします。」



「あ、お疲れ様です。」



「はい、今大丈夫です。」



「はい、今日から店長復職されました。」



「はい、歩くのに松葉杖使われてますので、今日は受付の業務をお願いしています。」



「はい。」



「ずっと立ちっぱなしは辛いかなと思いまして、私が椅子用意しました。」



「はい。」



「そんなんですね。」



「畏まりました、今後は気をつけます。」




「はーい、お疲れ様ですー。失礼します。」



不機嫌そうに電話を切る池さん。


「本部からでした。部長の許可貰わないと勤務中は椅子に座るのは禁止ってです。」


権藤健太の記憶の中にある権藤健太が働くネットカフェの本部の情報と完全一致する。


部長が知らない事は何もできない。

もし何かを勝手にやったら、説教そして低評価。

常に監視されていて話し声も聞かれている。

そして、本部の人間は部長の言いなりでしかかない。


「池さん、私が本部からの電話に出たらよかったですね、ごめんなさい。多分そのまま椅子に座っていたら、部長から誰の許可貰って椅子に座ってるんだ?と速攻電話が来たんじゃないかな…アハハ」


「本当面倒くさい会社ですよね…」


そう話すと池さんは椅子を片付けるフリをして…防犯カメラの映らない場所に椅子を置いてくれた。


「お客様が受付来ない時はここに座っててください。」


本当に心優しい人間である。


ただ、隠れて座っている事がバレると池さんにも迷惑かけるため、念のため部長に電話で本日から復職した件と椅子に座ってもよいかの確認の連絡を入れる事にした。


「お疲れ様です。WWCの権藤です。」


「おう、お疲れ」


「本日から復職しましたので、そのご報告と、まだ足の怪我が完治しておりませんので、勤務中に椅子に座ってもよいかのご確認のためご連絡致しました。」


「あ、そう。まだ足動かせないの?」


「はい、歩くにはまだ松葉杖が必要でして。」


「そうなんだ、で、いつ普通に歩けるの?」


「医師からはあと1週間ほどで松葉杖無くても歩けれるようになるだろうと話ございました。」


「そうなんだ、じゃあさ、仕事できないんならさ、明日から1週間公休にして、歩けるようになってから勤務でいいんじゃないの?」



破滅光線でもお見舞いしてやろうか?と思う我であったが、それもこの体では不可能であるし、まずこの部長に権藤健太も相当いじめられていた記憶が複数残されている。


人間の心の複雑さを理解した上で、社内での発言の重みを理解した上でこう言い放った。


「電話は記録に残らないからってパラワラまがいな事ばっかり言ってると痛い目に遇いますよ。」


権藤健太よ、よくこれまで我慢して頑張った。これから我輩たちの仕返しの番だ。

次回、この暗い展開からラブコメに移行?

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