第十七話 立ち直り
第十七話 立ち直り
「ねぇ、鈴香ちゃんってさあ。こういう緊急事態の人助け的な?そういうのって初めてじゃないの?」
そう聞かれたのはついさっき、裕也をミノタウロスから守った少女である岩井鈴香だった。
「な訳ないでしょ。初めてじゃない人なんて警察官や自衛隊の人達しかいないわよ。」
「にしては慣れてるよね。センスとかかなぁ?」
「そうかもね。」
そう鈴香が言った瞬間、ものすごい勢いで避難場所である学校に突撃しようとミノタウロスが走って来た。
「あれってやばくない?」
鈴香が不安そうに言う。
「大丈夫でしょ。他のミノタウロスも手も足も出なかったんだから。私の『結界』を甘くみないでよね。」
バッリン!
「え?」
だが、そう言ったのも束の間、学校の周りを守っていた。結界はこうもあっさり破られてしまった。
「うそ……。」
「は、早く助けに行かなきゃ!」
鈴香達は呆気に取られながらも助けに向かった。
その五分前、裕也は先程の事で落ち込んで体育館裏で踞っていた。
「大丈夫か?」
裕也に声をかけたのは親友である石神瑛二だった。
「………」
「……なんかあんなら話せよ。聞いてやるからさ。」
「………」
「……そんな気力もないってか。」
「………」
「別に俺は強制してるわけじゃねぇから良いけど、話したほうが楽だと思うぜ。」
「……母さんが死んだ。」
「……そうか。」
「……結局、励ますとかしてくれないじゃん。」
「俺は聞いてやるとは言ったが。励ますとは言ってない。まず、俺の母親は俺を産んだ時に死んだからお前の気持ちなんて知ったこっちゃない。」
「……薄情だな。」
「そうだ俺は薄情者だ。だがそんな薄情者でも、お前にアドバイス出来ることがある。」
そう言うと瑛二は立ち上がりこう言った。
「妹を一人にさせるな。兄貴がそんなんじゃ、妹もずっと不安になったままだろ?ほら、今もあっちで一人布を抱えて踞っている。今お前がすべき事は妹のそばで寄り添って一緒に悲しんでそしたら一緒に立ち直る。そうだろ?」
そう言い終えた瑛二は去っていく。
そして、それを見ながら裕也は立ち上がた。
「そうだな。いつもお前の言っている事は正しいよ。瑛二。」
バッリン!
裕也がそう言った瞬間結界が破られた。