第十六話 十年前の霊相談
第十六話 十年前の霊相談
十年前、裕也と裕也の母である陽子はとある件について霊関係の事務所で、ある霊媒師に相談をしていた。
「ええと、つまり、最近息子さんの裕也くんに良くないことが起き続けてるということですか。」
「はい。元々、不運な子だったんですけど、最近はもっと酷くて……。例えば建物の横の歩道を歩いている時、看板などが落ちてきて当たりそうになったり、一度にありえない数の不幸が重なったりと、色々と不可解な現象が起き続けているんです。これって何かに取り憑かれたりするんでしょうか?」
すると霊媒師はすこし黙り込んだ後、口を開く。
「最近起きている不可解な現象が起きる前、女の子の友達亡くなったりしたとかはあるかな?」
そう霊媒師が裕也に言うと裕也暗い顔をしてこう言った。
「僕のせいだ。僕がボーっとしてトラックに轢かれそうになったから、瑠衣ちゃんは死んじゃったんだ。瑠衣ちゃんは僕の事を恨んでいるんだ。」
それを聞いた霊媒師は首を傾げた。
「本当に恨んでいるのでしょうか?」
「それはどう言う事ですか?」
陽子が疑問を口にする。
「いえ、確かに裕也くんには女の子の幽霊が取り憑いていて、それが不運の原因になっています。」
「そうだよ。だから瑠衣ちゃんは!」
「守護霊なんですよ。」
「「え?」」
裕也と陽子は揃って呆ける。
「はい。だから守護霊なんですよ。その瑠衣さんは。」
霊媒師は話を続ける。
「普通、大体そう言う案件の原因は悪霊なんです。ですが、裕也くんに取り憑いているのは悪霊じゃなく守護霊なんです。」
「もう守護霊でも悪霊でもなんでも良いですから、早くどうにかしてください。」
陽子は不安になっている様子でそう言った。
「うーん。まあ大丈夫ですよ。守護霊は主人の害になるような事はしませんよ。」
「そんなの分からなじゃないですか。」
「大丈夫ですよ。もしそんな事しようと考えているなら、もうすでに悪霊になっていますから。だから落ち着いてください。」
「は、はぁ。」
陽子は落ち着いた様子でため息をついた。
「まぁ、これでも渡しておきます。」
そう言って、霊媒師は鍔がなく鞘と持ち手が木でできている作りたての小刀のような物を裕也に渡した。
「これは?」
「一種のお守りとでも思って毎日欠かさず持っておいてください。お金は勿論いらないんで。」
「……はい。では私達は帰るんで。」
裕也と陽子は諦めたように帰っていった。
裕也達が帰った後、近くにいた他の霊媒師に声をかけられた。
「よかったんですか?あれって妖刀ですよね。あれって結構高いんじゃ……。」
「いや、昔の私に似ててね。あれはすごい才能の持ち主だよ。もしかしたら、陰陽師にでもなるんじゃないかなぁ。」
そう聞くと他の霊媒師は呆れたように言う。
「そんなの、ありえるわけないじゃないですか。第一、陰陽師は国内に両手で数えれる程度しかいないレベルの霊能力者なんですから。」
「ふふっ。」
霊媒師は笑う。
「え?もしかしてそれで渡したんですか⁉︎」
他の霊媒師は驚いた顔でそう言った。