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265.二人の恋模様②


 リトス視点です。



 相変わらず、フェリア様は可愛かった。


 その可愛さは、決して言葉で表現できるようなものではなくて。何よりもフェリア様の言葉一つ一つが、自分にとっては全て宝物のようで。


(……どうして、こうも嬉しい言葉を、言ってほしい言葉を的確にくれるんだろう)


 運命だと勘違いしてしまうほど、フェリア様への愛しさが膨らんでいってしまった。


(……俺の作った茶葉が一番好き、か)


 聞いた瞬間、嬉しくてたまらなくて感情が溢れて顔が赤なった。慌てて落ち着かせようと努めたが、上手く誤魔化せたかはわからない。


 本当はもらった言葉でいつまでも、噛み締めていたい所だが、今日はまだまだ終わらない。集中して切り替えると、移動しようと店を出た。


「どこか行きたい所はありますか?」

「そうですね……」


 少し考え込むフェリア様。手を顎に近付けて悩む姿も、当然可愛い。バレないようにその可愛さを眺めていた。


(あぁ……いつまでも見ていられる)


 顔が緩んでいることにも気が付かずに、ただ見つめていた。


「実は……食べてみたいものがあって」

「食べてみたいものですか」

「はい。クレープ、と言うようなのですけど。最近ご令嬢方中で密かに流行っているみたいで」

「クレープ……」

「リトス様はご存知ですか?」

「お恥ずかしながら……初めて耳にしました」

(流行りくらい勉強してくるべきだったな……)


 知らなかったことに恥ずかしさを感じ始めれば、フェリア様は柔らかく微笑まれた。


「私も昨日知ったばかりなんです。ということは、リトス様もまだ食べたことありませんよね?」

「はい」

「良かった……! よろしければ一緒に食べませんか?」

「……喜んで」


 何なんだ、この愛らしすぎるご令嬢は。


 顔を緩ませないようにと必死で堪えながら、無難な笑顔で頷いた。 


「この通りを真っ直ぐ行った、角のお店みたいです」

「わかりました、行きましょう」


 もう一度エスコートをし直すと、二人でクレープが売っているお店へ向かった。


「人気みたいですね」

「驚きました、こんなに並んでるだなんて」


 お店は若い女性やご令嬢方で並んでおり、長蛇の列となっていた。


「並ぶのはお嫌いですか?」

「私は問題ありません。フェリア様は?」

「慣れております! 是非とも並びましょう」

(な、慣れている……?)


 フェリア様の言葉に理解が追い付かず、一瞬固まりながらも、二人並ぶことにした。しかし、どうしても気になってしまったので、そのまま口に出してしまった。


「フェリア様」

「はい」

「慣れている、と言うのは……?」

「あっ……実はですね。私、直営店の方に何度か並んだことがあるんです」

「えっ」

「茶葉の新作発売日の日は、決まって争奪戦になりますから。どうしても飲みたい時は早起きして開店前に並びに来ているんです」

「それは……本当にありがとうございます」

「それだけ魅力的なので。並んだ甲斐がある茶葉ばかりですよ」

(て、天使だ……)


 まさか直営店(うち)に並んでいただなんて。確かに新作茶葉の発売日は、よく人が並んでいる。その話はよく耳にしていた。しかし、フェリア様が並んでいるとは。


 そんなことは全く予想していなかったので、これまでにない程の大きな喜びが込み上げてきた。それと同時に不安も浮かんだ。


「あの……新作茶葉は遅くとも一週間以内にはルナイユ公爵邸にお届けしていると思っているのですが……もしかして届いていませんでしたか?」

「そんなことは! ……しっかりと届いていますよ」


 すぐさま不安を書き消してくれたフェリア様。ただ疑問が残ってしまった。さらに尋ねるか悩んでいたところ、先程よりも少し小さな声で答えてくれた。


「やはり……新作はやはり出てすぐ飲みたいので。私の楽しみなんです」

(……あぁ、どうしよう。凄く嬉しい)


 楽しみ。そう言われて、内心は凄く舞い上がっていた。けれど、あくまでも平静を保ちながら感謝を告げた。


「ありがとうございます、フェリア様。これからも頑張って、美味しい茶葉を作ります」

「応援しております」


 そう微笑み合うと、段々と落ち着いた雰囲気になっていった。というもの表向きだけで、俺の内心はずっと気分が上がり続ける一方だった。


 気が付けば、クレープを選択する順番がめぐってきた。




 ここまで読んでくださりありがとうございます。

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