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260.流れる噂と評価


 三人称視点のお話です。


 

 

 先日、ネイフィス公爵家が降爵するという話が王家より発表された。降爵理由を“自らの申し出”とした為、具体的な理由まではすぐに伝えられなかった。それでもすぐに、レティシア・エルノーチェの殺害未遂に関する不祥事は公表されることになった。


 この一件は、社交界を大きく騒がせることになった。


 ご夫人方が集まるとある地方のサロンにて、複数人のご夫人がいつも通り会話を楽しんでいた。


「聞きました? ネイフィス公爵家が侯爵家になったというお話」

「えぇ。でもどうして降爵なさったのかしら」

「何でもネイフィス公爵令嬢……マティルダ様が大公殿下のご婚約者様を、殺そうとしたらしいわ」

「まぁ! 恐ろしいこと。……そう言えばマティルダ様と言えば、長い間大公殿下をお慕いしていることで有名でしたよね」

「ということは……嫉妬が引き起こした許されない過ち、というところかしら」


 マティルダがネイフィスという名を語れなくなったことを知らない彼女達は、ご丁寧にも“様”付けで彼女を呼んでいた。


「娘が殺害未遂を起こしたとなれば、確かに降爵は納得ですわ」

「えぇ。ところでマティルダ様はどういう処遇になったのでしょうか」

「私も知らないんです。どなたかご存じの方いらっしゃる?」

「確か……牢獄行きになったんだとか」

「まぁ!」


 マティルダが裁かれてから一週間も経っていない上に、大きなパーティーも開催されていなかった為、王都から離れた地方まで正確な情報が届くのは、もう少し先のようだった。


 牢獄行きになった話を聞くと、マティルダ本人についての話に移っていった。


「マティルダ様、ねぇ。……前々から、少し必要以上に目立たれていたご令嬢だったわよね」

「えぇ。聞いた話だと、皇后陛下が社交界を取り仕切らないことを良いことに、ご自分がその役目を果たすべきだと仰っていたそうよ」

「それはさすがに傲慢ではなくて?」

「私も同意だわ。皇后陛下が別に、マティルダ様に任せたわけではないでしょう」


 最もな意見に頷く一行。


「それに、ネイフィス公爵夫人はそんなことしてらっしゃらないでしょう」

「確かに。ネイフィス公爵……今では侯爵夫人よね。あの方は必要以上に目立つことはなかったもの」

「……何故母の姿を見て、自分が取り仕切ろうと思われたのかしら。不思議ね」

「まぁでも、マティルダ様が取り仕切ろうとしていたのはあくまでもご令嬢方の中、のお話でしょう。それなら納得じゃないかしら?」

「確かにそうね」


 どうやらマティルダに対して、好印象を抱くご夫人は少なかったようだ。


「ご令嬢方といえば、これから先どなたが仕切るのかしら。やはりフェリア様かしら?」

「ルナイユ公爵令嬢は適任よね」

「でも確か、先日のお茶会ではレティシア様を立てたと聞いたわよ」

「あぁ、レティシア・エルノーチェ様ね。でも彼女……王国の方、よね?」


 公爵令嬢同士親しくするのは勝手だが、帝国の社交界を王国出身の公爵令嬢が仕切るのに違和感を覚えるご夫人は多いようだった。しかし、先日のお茶会について詳しく知るご夫人の声で、状況は一変する。


「と思うじゃない? それがね、誰よりも緑茶についてお詳しいみたいなのよ」

「ま、まぁ。そうなの?」

「貴女が飲んでるその緑茶、何でもレティシア様が開発なさったものらしいわよ」

「ええっ!? それは初耳よ!」

「私も初めて聞いたわ……」


 とても王国出身とは思えないほど緑茶について博識で、まさしく大公妃としてこれ以上ないほど相応しい人だという話になっていった。


「……もしや、レティシア様は生まれてくる国を間違えたのでは?」

「な、何を言い出すの」

「だってそうでしょう! 長年緑茶を愛用して飲み続けている私達よりも詳しいなんて、他に説明がつかないわよ」

「ちょっとわかるくらいなら、勉強でどうにかできるでしょうけど、開発って。この短期間でそれができるのはもう、天才の領域よ」


 こうして、“レティシア・エルノーチェは生まれてくる国を間違えただけの、帝国の社交界を担うに最も相応しい人物”として話が収束するのであった。


 そして面白いことに、この話はレティシア自身の評価となり、多くの者に広がっていくのだった。


 



 ここまで読んでくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ちょっと読み直してたら気になりまして。 「まるてご自分がその役目を果たすべきだと仰っていたそうよ」 まるて→まるで、だと思うのですがそもそも『まるで』はなにかに例える時に使うものでは…
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