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244.賛辞と苦言

 

 更新が遅れてしまい大変申し訳ありません。こちら土曜日(昨日)分となります。本日分は後程更新いたします。よろしくお願いいたします。



 帝国式に関わらず、お茶会というものはまずは主催へ挨拶をするのが慣例となっている。もちろん、ここには爵位が関係してきて、主催者の方が爵位が高い場合は、招待客の方から挨拶に来るのが礼儀とされる。


 逆も同じで、爵位が低い者が主催の場合は主催者が挨拶をしに回らないといけないのだ。最も、基本的には爵位が高い令嬢しかお茶会を催さないとされるが。


 ただし今回のような例外ーー主催の隣に主催よりも位が高い者がいた場合、挨拶の順番は明確には定められていない。


(お茶会の準備期間にルナイユ様に聞いた時には、挨拶する側の心遣いや考え方によるって教えてくれた)


 あくまでもそう言われているものの、実際は主催者への配慮を考えて、できる限り主催との挨拶を一番最初にするべきなのだと見解を述べていた。


 そう語ったルナイユ様からすれば、ネイフィス様の動きは信じられないものだったのだろう。


(シャーロット様を立てると同時に、私を軽んじるとも捉えられる行為なのよね……ふむ)


 ただこれの面倒な所は、だからといって咎めることや苦言を呈することができる行為ではないという点。定められたマナーではないため、皇后陛下の方から挨拶をすることは、問題にはならず、ネイフィス様を詰める要素にはならない。


 むしろここで下手に指摘をすれば、ネイフィス様に良いように利用されかねない。それをわかっているからか、ネイフィス様は悪びれもせずに優雅なカーテシーをしたのだ。


(どうしたものかしら……)


 内心小さくため息をつきながら、今できることがないか考えていた。その間にも、ネイフィス様の挨拶を静かに耳を傾けていた。


「ネイフィス嬢」

「はい、皇后陛下」

「挨拶ありがとう」

「……?」

「……」


 シャーロット様はそう一言返すと、他に何か言葉をかけることはなかった。それに戸惑ったのか、ネイフィス様もすぐには声を出せていなかった。


「こ、皇后陛下」

「なんだ?」

「なかなかお会いすることができないので、このような場でお会いできたこと、本当に嬉しく思います」

「そうか」


 シャーロット様の淡白な返しが始まると同時に、ルナイユ様から話が振られた。


「エルノーチェ様、いつもとても素敵なドレスですが、本日は格段に輝いてらっしゃいますね」

「ありがとうございます、ルナイユ様」

「そちらはどこでお仕立てなさったんですか?」

「実は、プレゼントしていただいて」

「まぁ。ということは大公殿下にですね? さすが婚約者様ですね。エルノーチェ様に合うドレスをわかってらっしゃる」

「センスが凄く良いんです」


 気が付けば和やかに二人で会話をしていた。片耳をシャーロット様達の方に向けていたが、あまり楽しそうな会話には思えなかった。


「それだけではありませんよ。エルノーチェ様は何を着てもお似合いになられますからね」

「あ、ありがとうございます」


 思わぬ賛辞に照れてしまうと、顔が少し緩んでしまった。


「ルナイユ嬢とは気が合うな。私もそう思う」

「シャ、シャーロット様?」

「嬉しいです陛下。エルノーチェ様はご自身がまず気品溢れて輝いていらっしゃいますから、何を着ても華やかになるかと」

「その通りだな。それにしても、大公殿下は良いセンスだな。この会場も大公殿下が手配したのか?」 

「いえ……その、実は私と侍女で飾ったものでして」

「そうなのか!」

「そうなんですか!?」


 驚かれるとは思っていなかったので、私も反射的に少しだけびくっとなってしまった。


「これだけの装飾を自ら手掛けたのか……」

「さすがはエルノーチェ様。やはりなされることが素晴らしいですわ……」


 二人は会場内を見渡しながら、嬉しそうに話してくれた。ただ、その間ネイフィス様の声を聞くことはなかった。


「ではエルノーチェ様、後程またお話しいたしましょう」

「是非。今日は楽しんでください」

「はい、それでは」


 ルナイユ様がさっと去ると、皇后陛下の元へ移動した。その様子を見ていたが、まだ動きそうになかったネイフィス様が複雑そうな表情で皇后陛下の元を去った。


(ネイフィス様はルナイユ様にどかされた、と言うのでしょうけど、シャーロット様の表情や声色を聞いていれば、相手にされていないのは確かなこと)


 そんなことを考えてはいるものの、私は一人静かに待っていた。


「ごきげんよう、エルノーチェ様。本日はお招きいただきありがとうございます」

「お越しいただきありがとうございます、ネイフィス様」

「先程のお話を聞いていたのですが、素敵な会場とドレスですね」

「ありがとうございます」


 ネイフィス様の褒め言葉は一言で終わり、本心でないことは明らかだった。


「大公殿下のセンスがとても良いのですが、その良さを少しでも吸収できているのかもしれません。側にいると、相手のセンスが似てくるとどこかで聞いたことがあるのですが……そう思いません、ネイフィス様?」

「そう、ですね?」

「実はネイフィス様のおかげで、私が初めてお茶会へ来た日のことを思い出したものですから。初心を忘れずに、本日は頑張りますわ。是非、楽しんでください」

「……ありがとうございます、エルノーチェ様」

(……伝わったみたいね)


 遠回しに制すれば、理解したであろうネイフィス様は引きつる表情をおさえて、なんとか作り笑顔を見せてくれた。


 こうして、ネイフィス様との最初の接触は終わったのだった。

 



 ここまで読んでくださりありがとうございます。

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