表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

190/390

188.発掘される能力


 昨日は更新できずに申し訳ありませんでした。昨日分の更新となります。よろしくお願いします。



 

 ご家族の挨拶を終えてから二日後、今日は婚約披露会の準備が始まった。 

 昨日は「お疲れでしょうから」と言われてゆっくり休むことになったため、一日が空いた。


 朝食を済ませると、そのまま一緒に書斎へと向かった。


「広いですね」

「私が使うだけなんですが、親しい間柄ですと、この部屋で話すこともあります」

「なるほど」


 エルノーチェ家の書斎よりも倍の広さがあり、部屋のなかは作業をするスペースと客と話せるように設けられたスペースにわかれていた。


「今日は並んで作業をしましょうか」

「はい、お願いします」

 

 レイノルト様が使っている机は、数々の書類を置いても問題ないように、普通よりも大きめに作られていた。そのおかげもあって、私が並んでも邪魔にはならなかった。

 

 用意された席に着こうとすると、机の上に見知ったものが置いてあった。


「あ、緑茶の茶葉ですね!」

「すみません……片付けるのを忘れていました」

「全く問題ありません。これが何か聞いても大丈夫ですか?」

「もちろん。この茶葉は実は開発中のものなんです」

「わあっ……!! 本当ですか?」

「はい」


 開発中という言葉に少し胸がときめいた。思わずじいっと茶葉を見つめる。


 レイノルト様の説明では、リトスさんの商会はリーンベルクに所属するものとなっているという話を聞いた。いわゆる後ろ楯、というもので、最近では事業自体にレイノルト様自身も関わっているのだという。


 緑茶が故郷の味だからか、やはり惹かれるものがあった。見続けていると、レイノルト様が口を開いた。


「気になりますか?」

「凄く」

「では飲んでみましょうか?」

「良いのですか!」


 予想外の提案に喜びを隠せず、ばっとレイノルト様の方を見て聞き返した。


「ははっ、せっかくですから」


 その反応が新鮮だったのか、レイノルト様は嬉しそうに頷いてくれた。


 お茶の準備をしようと思ったが、せっかくなら本場の上手な入れ方を観察しようと思い、レイノルト様から動きを解説付きで教わった。


「特段難しいことはありません。分量や温度も好みになりますから。ただ、リトスは一番美味しいと称する基本的な入れ方を考案するのが好きで」

「でもそういった初心者にも優しい情報は大切ですよね」

「そうですね」


 そんな会話を交わしながら、入れた緑茶を飲むために会話スペースへ移動した。


「凄く鮮やかな緑色ですね。初めて飲んだものよりは明るく、以前いただいた甘いものよりは暗い。……中間地点の良いあんばいの色味ですね」

「……」

「飲みます!」


 いただきますと言わんばかりの勢いで、ちょうど良い温かさになった緑茶を口にした。


「……凄い濃いですね。でも飲みにくい濃さじゃなくて、味わい深いというんですか。緑茶の良いところをぎゅっと詰め込んだ、素敵なお味ですね」

「……」

「個人的にこの茶葉が一番好みかも知れないです」

  

 緑茶を眺めながら一人で夢中に喋っていると、レイノルト様が固まっていることに気が付かなかった。

 飲み終わった時、そこで初めて気が付いて目を合わせる。


「あ……すみません」


 なんだか申し訳なくなって謝れば、レイノルト様は真剣な眼差しで提案をした。


「レティシア……よろしかったら、緑茶の茶葉の開発に携わりません?」

「えっ!」

「レティシアの意見はとても貴重なものです。……聞いていてとても納得する感想でした。的確に長所を言い当てる辺り……その才能は是非とも活かしたいのですが、いかがでしょうか?」


 ただ楽しんで飲んで感想を言った。それだけのことを、ここまで過大評価されるとどうしていいかわからなくなった。しかし、それでも提案自体は凄く興味をそそられた。


「凄く……やってみたいのですが、上手くこなせるかはわかりません」

「あ、ご安心ください。携わる、といってもそんなに難しいことではなくて。私が個人的にレティシアの意見が聞ければと思っています。あくまでも良し悪しを私と一緒に吟味するようなイメージで」


 説明されたのは、レイノルト様のお仕事を助けるというもの。いつもは、レイノルト様がリトスさんが持ってくる開発中の茶葉を飲んで評価していたのだという。

 

 仕事をするというよりも、お手伝いのような感覚だと言われて、私の選択するハードルは随分と下がった。


「レイノルト様となら安心です。是非お手伝いさせてください」

「良かった! よろしくお願いしますね」

「お願いします……!」


 元々仕事をしていた身としては、何の負担にも感じなかった。それをレイノルト様は知っているからの提案だと思う。


 もう少しだけ緑茶を堪能すると、披露会の招待状作りを始めるのだった。 




 ここまで読んでくださりありがとうございます。

 下の星の評価やブックマークをいただけると、励みになります!よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ