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158.忍び寄る不穏


 投稿が遅くなり大変申し訳ありません。このお話は金曜日分の投稿とさせていただきます。本日分は後程あげます!

 


 専属護衛が決まり、挨拶を済ませた翌日。今日はベアトリスも家を空けるため、公爵家の主要人物は私のみとなっていた。そのため万が一の事態に備え、警備状態は頑丈なものになっていた。


 私にはモルトン卿という専属護衛に加えて、更に補助としてもう一人付くことになった。その他は主に玄関などの、公爵家敷地内を守る陣形になった。


 大袈裟に感じていたが、そこまでしないと自分は出かけられないと言うベアトリスに折れ、騎士達が姉の指示に従うことに文句は言わなかった。


 というようなひと悶着が、ベアトリスが出発するにあたって行われた。無事収束すると、安心させながらベアトリスを送り出した。


 自室に戻るとラナが緑茶を淹れてくれた。


「……やっとお姉様が出発したわ」

「ベアトリスお嬢様もお嬢様のことが心配なんですよ」

「気持ちはわからなくないけど、私はもう十八歳よ。物騒だとか危険だとか、そういう話を抜いて人で留守番くらいできるのに」

「ベアトリスお嬢様にとっては、お嬢様はいつまで経っても妹ですから。それに不審者もでたばかりですしね」

「……妹という肩書きは頑張っても変えられない。お姉様の心労にはなりたくなかったけど、無理かもしれないね」


 姉にとっての妹は、永遠に幼く見えるのかもしれない。特に私達の関係性は濃く密接になってからは、そこまで時間が経っていない。だから十八歳になっても妹としてのフィルターがかかって、幼く感じてしまうのだろう。


 当主代理として忙しいベアトリスの余計な心労になりたくはなかったが、取り除く方法や心労になるのを回避する方法はなかなか難しそうに思う。


「……お嬢様」

「ん?」

「それにしてもモルトン卿、とってもカッコいいですね」

「あぁ……うん。顔立ちは整ってらっしゃる方よね。ラナはモルトン卿のようなお顔が好みなの?」

「整った顔は普通に好きですよ。目の保養になるじゃないですか。お嬢様は好みじゃないんですか?」

「人の顔に好き嫌いとかないけど……強いて言うなら、私のなかで一番好きでカッコいいと思うお顔はレイノルト様だから」 

「の、惚気ですか!」

「の、惚気じゃないよ!」


 純粋に思ったことを言っただけだが、婚約者としての発言と考えた時には確かにラナのように捉えてもおかしくはない。


「……結局手紙が届かないから送ろうと思ったのだけど、オーレイ侯爵の言葉が本当なら忙しい時期に邪魔になってしまうと思って」

「お嬢様。婚約者からの手紙を邪魔などと思う人はいません。今すぐ書きましょう」

「い、今すぐ?」

「今すぐですよ。明日の夕方には道路が完璧に復活しますから。それに伝書鳩にしても、今日は晴れです」

「そっか……そうね、今すぐ書くわ。うじうじしてても仕方ないものね」

「その調子です!」


 ラナに背中を押されて、手紙を書くことを決めた。


「そうと決まれば便箋とインクとペンをご用意しますので、お待ちください」

「ありがとう、ラナ」


 ラナが嬉しそうに部屋を出ていくと、入れ替わるようにノックをしてモルトン卿が私を尋ねた。 


「失礼致します」

「どうぞ」


 扉の外には、もう一人護衛が待機していることがわかった。軽く一礼をしてから私の方に近付くと話し始めた。


「何かありましたか?」

「特に大きな話ではないのですが、少し気になったことがありまして」

「はい」

「エルノーチェ公爵家内にいる使用人は新しい方々ですか? その、不馴れだったりまだ屋敷内を把握できてなかったり。入れ換えの話は聞いていたので」


 ベアトリスより、人員の整理をした話を聞いたと言うモルトン卿。確かにその話は事実だが、実はまだ解雇にした分の使用人を新しく雇えていなかった。


 理由としては、元々キャサリン付きの侍女やが異常に多かっただけで主には不要な分を解雇にしただけだったからだ。肩入れする使用人も何人かいたが、彼らを解雇しても問題なく家は回っていたため、ベアトリスは新しく雇うかを悩んで一度保留にしていたのだ。


「いえ。まだ採用していないので、今は残った使用人で何とか回しているはずです」

「それだと、道を尋ねれば必ず明確な答えは返ってきますよね?」

「はい」


 その瞬間、モルトン卿の表情が険しいものへと変化した。


「……お嬢様、もしかしたらエルノーチェ公爵家は誰かに狙われているのかもしれません」

「え?」

「昨日お嬢様と顔を合わせる前に、少しだけ屋敷内を歩いたんです。元いた部屋に戻ろうとして、少しわからなくなったので近くにいた使用人の方に尋ねたのですが自分は新任だと」

「それは……ありえません」

(顔合わせとはいえ、不審な人物が入って来たらわかるはず……それなのに侵入者がいた?)


 モルトン卿の話を聞いて考え込むと、一つの答えが浮かんだ。


「……オーレイ侯爵」

「オーレイ侯爵?」

「昨日公爵家を訪問されたんです。ですが、何と言うか……訪問したにしては、薄い内容を話されて帰っていったので」

「なるほど。本当の目的は別にあったと考えられますね。例えば、屋敷内の観察とか」

「……はい」


 不審な気持ちが高まってきたその瞬間、窓の外に花火が打ち上がった。



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